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岐路の先
しおりを挟むラゴ王国
ラゴ王国では、異変が起きていた。
トーリが国を出たあとから魔物は増え、瘴気は広がり続けている。まるで、かつてのシーミュ帝国のように。
南国マリウエ公国への進軍は頓挫し、魔物対策に追われている。当然、シーミュ帝国へ戦を仕掛ける余裕などあるはずもない。
「国王陛下、王都にも魔物が出現しました!どうか、ロイス殿下にも指揮官として…」
混線する指揮系統に、城内を行き来する騎士。
混乱する城内は落ち着く様子もない。
「なぜだ、どうしてこんな事に…っ!」
思考を放棄したロイスの痛嘆が、ただただ、こだましていた。
シーミュ帝国
戴冠式の日。見上げる空は、どこまでも広く、澄み切っていた。
トーリが旅立ち、しばらくして浄化の影響が現れた。
水は新たに湧きはじめ、土は栄養に富んだ土壌へと変わっていく。木々は瑞々しい葉を纏い、どこまでも見渡せそうなほど空気は澄んだ。
今や、精霊や妖精の気配が、城の回廊にも当たり前のように漂っている。
それは、ユーステルにとって奇跡ではない。努力と選択の結果だった。
「宰相の更迭は、妥当かと」
進言する重臣に、ユーステルは頷いた。
「証拠は揃っていたし、ラナ正妃、トーリ兄上の件……どちらも宰相が黒幕だった」
声は静かで、その目に迷いはない。
母であるヴァネッサは、早々に政から退いた。
宰相の思惑を知りながら止めなかった。その自責の念に耐えられなくなったのだろう。
彼女は、弱い人間ではない。
ただ、盲目的な愛と恐怖に惑わされただけだ。
(……兄上)
ユーステルは、ふとアエルスの森の方角を見る。
トーリは決して皇位を望まなかった。
それを、心から感謝している。
同時に──彼が帝国を救った事実を、決して忘れない。
「精霊と共にあるこの国を、未来永劫、守ると誓おう」
それが、ユーステルの治世の柱となった。
兄へ大恩を返す、最善の方法だ。
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