十字路の恋

エタロリ

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第1.75話 それぞれの新学期 東編

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 俺は一度告白してフラれた相手に今も、片想いをしている。

 片想いの相手はコイツ、茶髪でいかにも遊んでる風に見える一個上の幼馴染”上神 陽歌”だ。

 背は俺より低いがそれでも誤差の範囲で、お互いに真っ直ぐ見ていても顔が見えるぐらいに背が近い。

 それでいて陽姉は運動部所属の影響か出ている所は出ていて、引っ込んでる所は引っ込んでるスタイルの良さだ。

 最初はいつも俺や真央、瞳、詩央に引っ付いてくる鬱陶しいヤツだと思っていたのに、気付いた時にはもう陽姉から目が離せなくなっていた。

 いつも明るく元気で、俺達を常にからかうSっ気のあるお姉さん。
 だが、時折見せる母親のような眼差しに俺は心を奪われた。

 それは俺達がまだ小学生の頃の話だ。

 俺の家は早くに母親を亡くしており、父親が祖父母の手を借りながらも一人で育ててくれている。
 だからなのか、俺も瞳も陽姉の面倒見の良さに甘えていた。

 そんな時、幼馴染達と真央の家で遊んでいる時に見せた、子供達を見守る母親のような眼差しに俺は惹かれたんだと思う。

 それからずっと陽姉の事が頭から離れずにいたが、見ているうちに陽姉もまた直央にいに恋してる事に気付いてしまった。

 だから、陽姉が直央にいを追って同じ高校に進学したと知って、焦って告白したんだ。

 「ごめんね、悟君。悟君の気持ちは嬉しいけど、今の君とは付き合えないかな」

 この陽姉の返答が俺に火を付けてくれた事も、ハッキリと覚えてる。

 それから俺は部活と苦手な勉学に励みスポーツ推薦ではあるが、見事陽姉と直央にいが居る高校に進学した。

 そして今、陽姉と直央にいと一緒にその高校の入学式に向かっている最中だ。

 高校は電車に乗って二駅行ったところにあるが、そこから徒歩10分掛かるのが難点。
 まぁ運動部を中心とする部活動に力を入れている高校のため、あまり苦には思ってない。

 「ほら悟君、次で降りるよ」
 「あぁ、わかった」

 「それともう一つ」
 「なに?」

 「家とか電車の中ならまだ許すけど、学校ではちゃんと敬語使ってね」
 と、普段敬語を使って話さない俺に優しく指導する。

 その笑顔は思春期の俺には眩しくて、直視できないほど可愛く、周りに居た他の新入生と思われる生徒達をも魅了した。

 「おい陽姉、あんまり外でその笑顔見せんな!」
 「えー、なんで? この顔でお願いされた方が素直に聞くでしょ?」

 「そういう問題じゃないし、その笑顔じゃなくても陽姉の頼みなら聞くよ」
 「ホントかなー?」
 照れて俯いた俺に陽姉が顔を覗き込んでくる。

 不意に視界に入った陽姉の顔に、俺は顔を逸らす事しか出来なかった。

 あー、もう。
 そんなに顔近づけるな!

 陽姉の顔見たいのに見れないし、なんでこんなに好きなんだろう。

 「おい陽歌、他の新入生も見てるんだ、からかうのもそこら辺にしといてやれ。悟の威厳が無くなっちまう」
 「はーい」

 陽姉が視界から消えると同時ぐらいに降りる駅に着いた。


 電車を降りて陽姉と直央にいと一緒に歩く俺は、周りから見ると少し浮いてる感じがする。
 俺が好きで陽姉の隣を歩いているんだから、気負う必要も無い。

 それから学校に到着すると、2人は生徒会の仕事があるからと校門をくぐって、すぐに居なくなってしまった。

 一応陽姉からどこに行けばいいのか全て聞かされたから、広すぎる敷地内だが特に迷うことなく教室に辿り着く。

 教室に入ると見知った顔から声を掛けられた。
 「よお右川ー、迷わなかったか?」
 「よお遠山、陽姉に教えてもらったから余裕だった」

 「はあ……相変わらずお熱いねぇ」
 口元を手で隠しからかってくる。
 「うるせぇ、じゃなかったらこんな高校来ねぇよ」

 コイツは同じ中学で同じ部活に所属していた”遠山 海斗”、スポーツ推薦で入った俺とは違い、普通に受験で合格した頭脳派だ。

 「またバレー部入るだろ? 俺は右川が居ねぇとつまんねぇし」
 「そりゃあスポ推で入ってるからな」

 「よし、来週から体験入部始まるらしいから忘れんなよ」
 「忘れさせてくない人が2人も居るから大丈夫だ」

 「あぁ、上神先輩と十塚先輩か」
 「そうだよ」

 「お似合いだよね、あの2人」
 「……喧嘩なら買うぞ?」

 「冗談だって」
 「はっ、笑えねぇよ」

 遠山と話してるうちに先生がやってきて講堂に案内された。

 「ひえぇ……こんな所あるのかよ」
 「いや、入学説明会で入っただろ」

 「そういえばそうだった」

 くだらない話を続けながら席に座ると、壇上に陽姉と直央にいが立っている事に気が付いた。

 そういえば生徒会の仕事って言ってたけど、2人共何の役職なんだろう。

 と考えてるうちに司会進行役の生徒会役員がマイクで進めていく。

 1年生の担任、学年主任、教頭、校長と挨拶が終わり、そろそろ教室に戻ると思ったその時だった。

『最後に、生徒会長十塚直央さん、ご挨拶をお願いします』

 は? 直央にいが生徒会長!?

『新入生の諸君、入学おめでとう。生徒会長の十塚直央だ。
 この学校は部活動が盛んな学校で、全生徒は必ず何かしらの部活に所属しなければならない。部活動は全部で20個前後存在しており、他にも部員が所定の人数を越えられず、同好会になっているクラブも数多く存在していて、合わせて40弱の中から選ぶことになる。
 4月の間は体験入部として参加してもらい事になるが、各部の部長もしくは顧問に言えば4月からでも正式な部員として加入も可能だ。自分に合った高校生活を送ってくれ、以上だ』

『生徒会長、ありがとうございました。以上で入学式を終わります。新入生は各担任の指示に従って教室に戻ってください』

 その後、教室に戻った俺達1年生は各クラスで担任の先生から話を聞いて解散となった。

 ポケットに入れていたスマホがブーッ、ブーッと震えだす。

 スマホを取り出し確認すると通知が2つ来ていた。
 1つは幼馴染十字会のグループチャットで直央にいからのゲーム大会の連絡、もう1つは陽姉からの個人チャットだ。

『校門で待ってるから解散になったらおいで』

 俺は急いで帰りの支度をして下駄箱に向かった。

 もちろん校門で待ってるのは陽姉だけじゃない。

 校門で出ていく新入生の目を奪うのは、陽姉の他に直央にいも居る。
 高身長でイケメンの直央にいは女子生徒の目を惹き、陽姉はそのスタイルの良さ、可愛さ、で男女共に奪っていく。

 中学の時から何も変わっていないこの光景を見てしまうと、やっぱりあの2人は並ぶと絵になると思ってしまう。

 「陽姉、直央にいおまたせ……えっ!?」
 2人に駆け寄ると、陽姉が突然抱きしめてきた。
 「おかえりなさい、悟君」
 「ちょっ、陽姉ここまだ学校だから!」

 「あ、ごめんごめん。壇上から見えた時から抱きしめたくて」
 「なんでだよ」

 「え?可愛い弟だから?」
 と、可愛く首を傾げる。

 また、弟扱いだよ。

 陽姉は一人っ子だから姉弟が羨ましいのかな?と昔思った事があった。

 「……はぁ、直央にい帰ろう」
 「おう、帰ろうか」
 そう言い残し、俺と直央にいは早歩きで駅の方へ向かいだす。

 「ちょ、2人共置いてかないでー」
 陽姉も地面に置いていたカバンを肩に掛け、小走りで追い掛けてくる。

 駅に着くまで、ドタバタだったが俺は楽しい入学式を迎えた。

 「そういえば直央にい、両親に許可取ったの?」
 「もちろん、この通り」

 直央にいが見せてくれたスマホには
『なら、今日はパパとママはお出かけしてきます。帰ってくるのは明日の夕方です』
 と返事が来ていた。

 俺はこれを見て嫌な予感がすると思ったが、同時に何事も起きなければいいなと願った。



 今日のろじ裏
 
 私は今まで弟だと思ってた幼馴染が、その日初めて異性だと思った。

 このマンションに住んでいる幼馴染十字会のお姉さん的ポジションで、一番年上の直央君ことなーくんと一緒に年下の幼馴染達の面倒を見ながら過ごしてきた。

 だけど私も1人の女の子だったようで、小学5年生の頃からなーくんの事が好きなのだ。
 そんな中、なーくんに告白する女子はもちろん、全員ではないけど時折OKを出す、なーくん自身にも不満を抱えてた時期がある。

 後になってなーくんに話を聞くと、どうやら恋愛感情というものが分からないらしい。

 だから色んな人とお付き合いして、確かめようとしていたと本人から聞いた。

 私は思わず「だったら私と付き合ってよ! ずっとずっとなーくんの事好きだったんだから」と伝えたけど。
 彼は「陽歌は俺の大事な妹だからな、付き合うのはちょっと違う気がする」と言われてフラれてしまった。

 それでも私は先に卒業した彼のことが諦めきれず、なーくんと同じ高校に受験して見事合格。
 来年からなーくんとまた一緒だ、と喜んでいた矢先。
 思いがけない相手から、告白された。

 それは同じマンションに住む右川悟君だ。

 告白してきたのは中学の卒業式の帰り、正門前でいきなり呼び止められ、そのままの勢いで言われた。

『陽姉ぇ! 好きだぁ! 俺と付き合ってくれぇ!』

 その彼の告白は去年の私を彷彿とさせる。

 よくこんな人がいっぱい居る所で言えるね、と思っていたけど同時に男らしさも感じていた。

 だからなのか私は、
 「ごめんね、悟君。悟君の気持ちは嬉しいけど、今の君とは付き合えないかな」
 と、返した。

 今でも、あの時なんでそう返したのか分からない。
 でも、私自身も気付いてない何かがあったんだと思う。

 それからの私は悟君をからかうお姉さんになった。

 悟君の告白から1年、私がなーくんを追ったように悟君も私を追ってこの高校に入学するとは思わなかったのも事実。

 スポーツ推薦で入学決まった時一緒に喜んで1分ぐらい抱きしめてた覚えがある。
 あの時の悟君もさっき校門の前で見せた悟君も同じ表情をしていた。
 すごく可愛くて愛おしくて、やっぱり悟君は弟のような存在だ。

 妹想いでまーくんとあっきーの事も大切で、私のことが大好きな男の子。

 そういえば、悟君から合格発表聞いた後なーくんに相談したな。

 「来年、悟君が入学してくるから生徒会長と副会長に就任して、悟君の助けになりたい」って。

 なーくんも二つ返事でOK出してくれたし、今こうして入学式の日に3人で行って、3人帰ってこれたのは私としても嬉しいな。

 なーくんと2人だけだった高校生活が、君の入学でこの先どうなるかとても楽しみだよ悟君。

 「ちょ、2人共置いてかないでー」
 私は地面に置いていたカバンを拾い上げて肩にかけると、小走りで追い掛けていった。
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