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第一章 黒猫の半獣人
09仮初の自由
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もう自由だと思って、きままに暮らしてたらある日突然ユノスティアスの匂いがして、咄嗟に逃げた。だけど捕まった。何処から飛んできたのか分からないくらいの距離から射られて混乱して、怖かった。
久々に怖いと言う気分を味わって、それがなんだか嫌で。
傷を全部治さないユノスティアスに腹が立って土をかけたら手をザックリ切られて、手に力が入らなくて更に怖くなって、余計に嫌になった。
「あーほら暴れない。ランティスドール、そっちの手を頼む」
「包帯巻くのは苦手なんですよねぇ。殺るのは得意ですが治すというのはなんといいますか」
結局家に連れ戻されて、使用人達にゴシゴシ身体を洗われて、傷が開いて痛くて暴れたらユノスティアスとランティスドールに洗われた。ゴシゴシと。で、結局傷が開いて痛いまま。で、今はユノスティアスのデカいベッドに転がされて、ゴシゴシ身体を拭かれながら手足の傷に包帯を巻かれてる。ランティスドールなんてオレより巻くのが下手くそすぎる、良いからさっさと治してくれ。
「ヴーッ!ギャヴ!ガゥッ!!」
「文句ならユノスティアス殿によろしくお願いしますね、子猫さん」
「さっき淡水魚獲って生で食べようとしてたな。虫下しも飲ませておかないと」
「ギャヴヴーッ」
使用人を呼んだユノスティアスは小さな瓶からあの白い玉をまた出してきた。しかも今度はたくさん。それを口に無理矢理入れられたので今度は思い切りブーッとユノスティアスの顔に向けて吐き出してやった。なのに無表情で顔面に白い玉をくっつけている。
「お水と一緒に飲むと苦くないですよ。まずは口に水を含んで」
そう言われて口に水を入れてきたランティスドールに今度は水をブーッと吹きかける。怪我治してくれなかったこのエルフ男も嫌いだ。
「ふっ、ランティスドールも嫌われたな」
「そんなあ、巻き添えですよお。ま、ユノスティアス殿の貴重な笑顔が見れたので良しとしましょう」
笑顔?どこが?ちょっとだけ口の端が上がったけど、これが笑顔?
「さあ飲んで貰うぞ。腹の中にたくさん虫がいるだろうからな」
「ギャヴヴーッ!ヴグゥ!むぐぐっ」
顎を掴み開けられて、丸い玉をたくさん口に入れられて無理矢理口を閉じられると、鼻まで摘まれた。
「はーい、ごっくんですよ。ごっくん、ごっくん」
ランティスドールがそう言う前に、オレは既に奥歯でいくつか噛み砕いてしまって慌てて全部飲み込んでいた。だからもう水を飲ませて欲しくて暴れてたのだが、ふたりは気付いてない。
「随分と粘るな」
「余程虫下しが嫌いなのでしょうねえ」
「ヴッ…、ヴ…」
「もう少し様子見よう」
「あ、そういえば喉の動き見てませんでした。ごっくんしましたかね?」
ずっとのんびり話すふたりに口も鼻も塞がれ続けて、とうとう気が遠くなって、オレはすごく久しぶりに気絶した。
「──……」
「──ですか?」
「──少し強くて良い」
「…はあはあ、なるほど」
遠くで話し声が聞こえてきて、ムズムズする身体の感覚に身動ぐと声が上から降ってきた。
「おはようございます、子猫さん。わたくしのグルーミングはいかがでしょう」
目の前に逆さまのランティスドールの顔があって、オレは膝枕をされながら胸の乳首を弄られてる事に気付いた。大きなベッドの上に寝かされてて、足元にはユノスティアスが腰掛けている。全裸で手脚に包帯が巻かれてるし痛いということは、治してくれてないというわけだ。最低だ。
「ヴッ」
やめろ、弄るな。お前なんか嫌いだ。
乳首を触る手を叩き落としたが、右手に穴が空いたまま、左手首をザックリ切られて手に力が入らないのでは碌な抵抗にはならず、今度は胸全体を揉まれる。
「ヴッー!ヴッ!」
両手が痛いから今度は肘で抵抗することにした。素早く身を捻ってランティスドールの脇腹に肘を撃ち込み、それを軸にして押し倒す。
「はあ~、子猫さん、随分俊敏になりましたねぇ。わたくし押し倒されるの何百年振りでしょうか」
「手加減してる癖に何を言ってる」
「いえ、本当ですよ。本当に」
のんびり会話するふたりのいるベッドから飛び降りて、外に出るガラス扉を開けようとしたけど開かない。体当たりしたらヒビが入ったけど、代わりにオレの両足の傷がまた開いて血が出て痛みに呻いてしまう。
「暴れん坊になりましたねえ。特殊硝子でしょう?これ」
「暫く交換してなかったからな、ちょうど良い。この際だ、邸全て最新の硝子に張り替えよう」
ベルを鳴らして使用人を呼んだユノスティアスは、明日硝子職人を呼ぶように言いつけると休むように言って下がらせていた。
「もう真夜中の三時ですからね。わたくしもそろそろ帰りますか」
「泊まっていけ。面倒くさいだろう」
「良いのですか?ではお言葉に甘えて」
休めと言ったばかりでまたベルを鳴らすユノスティアスに嫌な顔せずサッとまた使用人達がやってくる。
「ではまた明日。おやすみなさいませ、ユノスティアス殿、子猫さん」
微笑みながら挨拶して使用人達と一緒に出て行くランティスドールを追いかけて出ようとしたら「お前はここで寝なさい」とユノスティアスに足払いされて床に転がされた。本当に嫌なやつだ。
「腹の虫が無くなるまでそこで寝てなさい」
大きなユノスティアスのベッドの隣りの床にいつものクッションとタオルケットを敷かれたが、オレはそれを全部抱えて隣りの浴室に運んで隅っこに置いた。一番距離が取れる所だ。だけどそれをみたユノスティアスは呑気に
「まあ、トイレが近いから良いかもな」
なんて言ってドアの内側に刺さってた鍵を抜いて、浴室の窓辺に寄ると鍵を閉めて、何か印のようなものを指先で描いてから部屋を出て行った。
ホッとしたのも一瞬で、バタンと閉めたドアからガチャリと音がした。
エッと思って慌ててドアを開けようとしたら、開かない。閉じ籠められたことにびっくりして、ドアをドンドン叩いてガリガリ引っ掻いた。でも開かない。開けてくれない。
少しパニックになったものの、直ぐに窓がある事に気付いてそっちに飛びついた。鍵を開けようとしても、全く動かないから今度は窓硝子を割ろうと体当たりした。ドン!ドン!と助走付けてぶつかってもヒビすら入らない。
どうやっても傷ひとつ付かないから、結局諦めて寝る事にした。
せっかく十年帰って来ないから、本当に自由なんだと思って山の中をたくさん遊び回っていたのに。まさか帰って来るなんて。この間見つけたあの獣道の奥の洞窟の向こう側、出て行くのが怖くて一旦やめたけど、あの時とっとと行けば良かった。
久々に怖いと言う気分を味わって、それがなんだか嫌で。
傷を全部治さないユノスティアスに腹が立って土をかけたら手をザックリ切られて、手に力が入らなくて更に怖くなって、余計に嫌になった。
「あーほら暴れない。ランティスドール、そっちの手を頼む」
「包帯巻くのは苦手なんですよねぇ。殺るのは得意ですが治すというのはなんといいますか」
結局家に連れ戻されて、使用人達にゴシゴシ身体を洗われて、傷が開いて痛くて暴れたらユノスティアスとランティスドールに洗われた。ゴシゴシと。で、結局傷が開いて痛いまま。で、今はユノスティアスのデカいベッドに転がされて、ゴシゴシ身体を拭かれながら手足の傷に包帯を巻かれてる。ランティスドールなんてオレより巻くのが下手くそすぎる、良いからさっさと治してくれ。
「ヴーッ!ギャヴ!ガゥッ!!」
「文句ならユノスティアス殿によろしくお願いしますね、子猫さん」
「さっき淡水魚獲って生で食べようとしてたな。虫下しも飲ませておかないと」
「ギャヴヴーッ」
使用人を呼んだユノスティアスは小さな瓶からあの白い玉をまた出してきた。しかも今度はたくさん。それを口に無理矢理入れられたので今度は思い切りブーッとユノスティアスの顔に向けて吐き出してやった。なのに無表情で顔面に白い玉をくっつけている。
「お水と一緒に飲むと苦くないですよ。まずは口に水を含んで」
そう言われて口に水を入れてきたランティスドールに今度は水をブーッと吹きかける。怪我治してくれなかったこのエルフ男も嫌いだ。
「ふっ、ランティスドールも嫌われたな」
「そんなあ、巻き添えですよお。ま、ユノスティアス殿の貴重な笑顔が見れたので良しとしましょう」
笑顔?どこが?ちょっとだけ口の端が上がったけど、これが笑顔?
「さあ飲んで貰うぞ。腹の中にたくさん虫がいるだろうからな」
「ギャヴヴーッ!ヴグゥ!むぐぐっ」
顎を掴み開けられて、丸い玉をたくさん口に入れられて無理矢理口を閉じられると、鼻まで摘まれた。
「はーい、ごっくんですよ。ごっくん、ごっくん」
ランティスドールがそう言う前に、オレは既に奥歯でいくつか噛み砕いてしまって慌てて全部飲み込んでいた。だからもう水を飲ませて欲しくて暴れてたのだが、ふたりは気付いてない。
「随分と粘るな」
「余程虫下しが嫌いなのでしょうねえ」
「ヴッ…、ヴ…」
「もう少し様子見よう」
「あ、そういえば喉の動き見てませんでした。ごっくんしましたかね?」
ずっとのんびり話すふたりに口も鼻も塞がれ続けて、とうとう気が遠くなって、オレはすごく久しぶりに気絶した。
「──……」
「──ですか?」
「──少し強くて良い」
「…はあはあ、なるほど」
遠くで話し声が聞こえてきて、ムズムズする身体の感覚に身動ぐと声が上から降ってきた。
「おはようございます、子猫さん。わたくしのグルーミングはいかがでしょう」
目の前に逆さまのランティスドールの顔があって、オレは膝枕をされながら胸の乳首を弄られてる事に気付いた。大きなベッドの上に寝かされてて、足元にはユノスティアスが腰掛けている。全裸で手脚に包帯が巻かれてるし痛いということは、治してくれてないというわけだ。最低だ。
「ヴッ」
やめろ、弄るな。お前なんか嫌いだ。
乳首を触る手を叩き落としたが、右手に穴が空いたまま、左手首をザックリ切られて手に力が入らないのでは碌な抵抗にはならず、今度は胸全体を揉まれる。
「ヴッー!ヴッ!」
両手が痛いから今度は肘で抵抗することにした。素早く身を捻ってランティスドールの脇腹に肘を撃ち込み、それを軸にして押し倒す。
「はあ~、子猫さん、随分俊敏になりましたねぇ。わたくし押し倒されるの何百年振りでしょうか」
「手加減してる癖に何を言ってる」
「いえ、本当ですよ。本当に」
のんびり会話するふたりのいるベッドから飛び降りて、外に出るガラス扉を開けようとしたけど開かない。体当たりしたらヒビが入ったけど、代わりにオレの両足の傷がまた開いて血が出て痛みに呻いてしまう。
「暴れん坊になりましたねえ。特殊硝子でしょう?これ」
「暫く交換してなかったからな、ちょうど良い。この際だ、邸全て最新の硝子に張り替えよう」
ベルを鳴らして使用人を呼んだユノスティアスは、明日硝子職人を呼ぶように言いつけると休むように言って下がらせていた。
「もう真夜中の三時ですからね。わたくしもそろそろ帰りますか」
「泊まっていけ。面倒くさいだろう」
「良いのですか?ではお言葉に甘えて」
休めと言ったばかりでまたベルを鳴らすユノスティアスに嫌な顔せずサッとまた使用人達がやってくる。
「ではまた明日。おやすみなさいませ、ユノスティアス殿、子猫さん」
微笑みながら挨拶して使用人達と一緒に出て行くランティスドールを追いかけて出ようとしたら「お前はここで寝なさい」とユノスティアスに足払いされて床に転がされた。本当に嫌なやつだ。
「腹の虫が無くなるまでそこで寝てなさい」
大きなユノスティアスのベッドの隣りの床にいつものクッションとタオルケットを敷かれたが、オレはそれを全部抱えて隣りの浴室に運んで隅っこに置いた。一番距離が取れる所だ。だけどそれをみたユノスティアスは呑気に
「まあ、トイレが近いから良いかもな」
なんて言ってドアの内側に刺さってた鍵を抜いて、浴室の窓辺に寄ると鍵を閉めて、何か印のようなものを指先で描いてから部屋を出て行った。
ホッとしたのも一瞬で、バタンと閉めたドアからガチャリと音がした。
エッと思って慌ててドアを開けようとしたら、開かない。閉じ籠められたことにびっくりして、ドアをドンドン叩いてガリガリ引っ掻いた。でも開かない。開けてくれない。
少しパニックになったものの、直ぐに窓がある事に気付いてそっちに飛びついた。鍵を開けようとしても、全く動かないから今度は窓硝子を割ろうと体当たりした。ドン!ドン!と助走付けてぶつかってもヒビすら入らない。
どうやっても傷ひとつ付かないから、結局諦めて寝る事にした。
せっかく十年帰って来ないから、本当に自由なんだと思って山の中をたくさん遊び回っていたのに。まさか帰って来るなんて。この間見つけたあの獣道の奥の洞窟の向こう側、出て行くのが怖くて一旦やめたけど、あの時とっとと行けば良かった。
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