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第一章 黒猫の半獣人
13初めての街歩き
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「借りて来た猫みたいですね~!」
ユノスティアスの執務室にやって来たランティスドールはオレを見るなりそう言ってきた。この部屋に人が向かって来ると、それが知ってる相手の匂いでもついユノスティアスの執務机の裏に入って警戒してしまう。
「ささ、子猫さん、今日は久しぶりにここで会えると思ったらワクワクしてしまいましてね。ついつい買い過ぎてしまいました」
「フンフン」
ランティスドールが両腕にたくさん食べ物の小袋を抱えてたので、すぐに執務机の後ろから這い出てそばに寄ると、袋の匂いを嗅いだ。「どれから食べたいですか~?」と楽しげに聞くので、ひとつの袋を指差したら開けてくれる。
「おや、今日は手袋を履いてるんですか。お洒落さんですね~」
爪が生えるまで着けろと言われて履かされてるぴったりした革の黒手袋はオシャレなのか知らん。ニコニコ笑顔のランティスドールは、オレの手袋履いた手のひらにざらざらとお菓子を出していく。
ひとつ食べて、美味しくてピンと尻尾を立ててしまう。よく見れば小さな魚の乾いたヤツだった。美味しくて手袋で摘み難いのを頑張ってひとつずつ取って食べていたらユノスティアスとランティスドールが手のひらにざらざらと出したそれをバクっと一気に食べた。
ギョッとして一瞬固まったが、オレはひとつずつ摘んで食べる。
ユノスティアスは無表情のまま、ランティスドールはにこにこしながらバリバリ食べている。このエルフ男達は時々凄く豪快に食べる時があるからびっくりする。
オレの好きな豆菓子も、手のひらにざらざら出してバクっと一気に食べていたので、自分の分を取られるのではと大昔は焦った。
「滑り台は肉を食う時は豪快なのに菓子はいつもちまちま食べるな」
なんだ、なにが言いたい。美味しいものを長く食べたいだけだ。
ユノスティアスを睨み付けながらポリポリひとつずつ小さな魚を食べてたら、ランティスドールが「オヤツ食べたら余計にお腹が空いて来ましたねぇ。やはり先に食事ですな、食べに行きましょう」と言って部屋を出て行く。
ユノスティアスもそれに続くので、オレはポリポリ食べながら見送る姿勢でいたら「お前も来い」と言われて首根っこを掴まれて引っ張り出された。しかも廊下では食べるなと言われて、無理矢理手のひらに残ってたおやつを一気に食べさせられたからすぐ無くなった。ひとつずつ食べてたらまだまだ味わえたのに。
しょんぼりしながらユノスティアスの後ろを歩いてたけど、直ぐにそれも吹っ飛んだ。ふたりは人がたくさんいる方に歩いて行くが、朝よりももっと視線が刺さって怖くて落ち着かないし、建物内にもビックリしたのに、外は見た事ないものばかりの景色で怖くて仕方ない。なんだ、あの長くてデカい建物は。怖い。倒れてこないのか?
「滑り台、歩きにくい」
匂いもごちゃごちゃして音も凄くて、ここではぐれたら終わりだと思って、ユノスティアスに怒られたけどピッタリくっ付いて歩き続けた。森がなくて建物いっぱいなここは街中というらしい。こんな所歩くのは初めてだ。
すれ違う人達を見ていたら半獣人を連れてる人は結構いて、首輪に紐を付けられて歩く半獣人も居る。普段は絶対嫌だけどここでならそれも良いかも知れない。こんなところで置いてけぼりにされたら、オレは死ぬ。それは嫌だ。
前を歩くユノスティアスの袖を引っ張って、首輪と紐を付けてる半獣人を指差した。
「なんだ?」
「ヴッ、ヴッ」
「……首輪とリードを付けて欲しいのか?」
「ヴッ」
「おやまあ、ご自分からハーネス希望とは。なかなかの奴隷根性ですねー」
ランティスドールが笑うが、ユノスティアスは無表情のまま「面倒だ」としか言わずにまた歩き出す。
「ヴッー!」
「お前がはぐれないように付いてくればいいだけだろう」
「ヴゥグ……」
その通りだけど、なんでだ。庭では鎖で繋いだ癖に。
「拗ねてますよ、子猫さん。可愛いですね~」
「手が塞がる事をわざわざしたく無い」
「意外ですね、子猫さんが自らハーネス希望なんて。そんなタイプには見えなかったのですがね」
「元来臆病者だからな滑り台は。名前をお漏らしにしようかとも思ってたくらいだ」
「…ヴゥ~…グルル……」
「ふふふ、凄い形相で睨んでますよ~、良いですね~やっぱり子猫さんはそうでなきゃ」
歯軋りしながらユノスティアスを睨み付けてたらランティスドールはご機嫌に笑う。オレは不機嫌だ。
食べ物の匂いがする建物に入ると、笑顔の人間が「いらっしゃいませ。いつものテラス席ですね」とふたりに声を掛けてすぐオレをみるなり「地下に荷物置き場が御座いますのでそちらに置かせてもらいますね」とユノスティアスに言ってオレを別の人間に引き渡そうとする。
「見せてもらおうか」
それだけ言うと、ユノスティアス達も一緒に人間が案内する地下に降りる。
人間が案内した地下には少し薄汚れた空間に数人の色んな格好した半獣人たちが等間隔に離れて首輪で壁に繋がれて水とパンを食べていた。
「喧嘩や交尾が起きないようにこの様に隔離整理してますので、ご安心ください。荷札をお渡ししておきます」
にこにこ笑いながら案内した人間はオレに首輪を付けようとしてきたので、思わず歯を剥き出して唸り声を上げた。青褪めた人間は引き攣った笑顔になりながらユノスティアスに「ご主人様からお付けいただけますか」と首輪を手渡そうとする。
だが無言でユノスティアスは降りてきた階段を上がり始めて、ランティスドールも「それじゃあ行きましょうね」とオレの背を押して一緒に階段を登って街の道に戻る。
よく分からないが、地上に戻ると、またふたりはどこかに向かって歩き始めた。
ユノスティアスの執務室にやって来たランティスドールはオレを見るなりそう言ってきた。この部屋に人が向かって来ると、それが知ってる相手の匂いでもついユノスティアスの執務机の裏に入って警戒してしまう。
「ささ、子猫さん、今日は久しぶりにここで会えると思ったらワクワクしてしまいましてね。ついつい買い過ぎてしまいました」
「フンフン」
ランティスドールが両腕にたくさん食べ物の小袋を抱えてたので、すぐに執務机の後ろから這い出てそばに寄ると、袋の匂いを嗅いだ。「どれから食べたいですか~?」と楽しげに聞くので、ひとつの袋を指差したら開けてくれる。
「おや、今日は手袋を履いてるんですか。お洒落さんですね~」
爪が生えるまで着けろと言われて履かされてるぴったりした革の黒手袋はオシャレなのか知らん。ニコニコ笑顔のランティスドールは、オレの手袋履いた手のひらにざらざらとお菓子を出していく。
ひとつ食べて、美味しくてピンと尻尾を立ててしまう。よく見れば小さな魚の乾いたヤツだった。美味しくて手袋で摘み難いのを頑張ってひとつずつ取って食べていたらユノスティアスとランティスドールが手のひらにざらざらと出したそれをバクっと一気に食べた。
ギョッとして一瞬固まったが、オレはひとつずつ摘んで食べる。
ユノスティアスは無表情のまま、ランティスドールはにこにこしながらバリバリ食べている。このエルフ男達は時々凄く豪快に食べる時があるからびっくりする。
オレの好きな豆菓子も、手のひらにざらざら出してバクっと一気に食べていたので、自分の分を取られるのではと大昔は焦った。
「滑り台は肉を食う時は豪快なのに菓子はいつもちまちま食べるな」
なんだ、なにが言いたい。美味しいものを長く食べたいだけだ。
ユノスティアスを睨み付けながらポリポリひとつずつ小さな魚を食べてたら、ランティスドールが「オヤツ食べたら余計にお腹が空いて来ましたねぇ。やはり先に食事ですな、食べに行きましょう」と言って部屋を出て行く。
ユノスティアスもそれに続くので、オレはポリポリ食べながら見送る姿勢でいたら「お前も来い」と言われて首根っこを掴まれて引っ張り出された。しかも廊下では食べるなと言われて、無理矢理手のひらに残ってたおやつを一気に食べさせられたからすぐ無くなった。ひとつずつ食べてたらまだまだ味わえたのに。
しょんぼりしながらユノスティアスの後ろを歩いてたけど、直ぐにそれも吹っ飛んだ。ふたりは人がたくさんいる方に歩いて行くが、朝よりももっと視線が刺さって怖くて落ち着かないし、建物内にもビックリしたのに、外は見た事ないものばかりの景色で怖くて仕方ない。なんだ、あの長くてデカい建物は。怖い。倒れてこないのか?
「滑り台、歩きにくい」
匂いもごちゃごちゃして音も凄くて、ここではぐれたら終わりだと思って、ユノスティアスに怒られたけどピッタリくっ付いて歩き続けた。森がなくて建物いっぱいなここは街中というらしい。こんな所歩くのは初めてだ。
すれ違う人達を見ていたら半獣人を連れてる人は結構いて、首輪に紐を付けられて歩く半獣人も居る。普段は絶対嫌だけどここでならそれも良いかも知れない。こんなところで置いてけぼりにされたら、オレは死ぬ。それは嫌だ。
前を歩くユノスティアスの袖を引っ張って、首輪と紐を付けてる半獣人を指差した。
「なんだ?」
「ヴッ、ヴッ」
「……首輪とリードを付けて欲しいのか?」
「ヴッ」
「おやまあ、ご自分からハーネス希望とは。なかなかの奴隷根性ですねー」
ランティスドールが笑うが、ユノスティアスは無表情のまま「面倒だ」としか言わずにまた歩き出す。
「ヴッー!」
「お前がはぐれないように付いてくればいいだけだろう」
「ヴゥグ……」
その通りだけど、なんでだ。庭では鎖で繋いだ癖に。
「拗ねてますよ、子猫さん。可愛いですね~」
「手が塞がる事をわざわざしたく無い」
「意外ですね、子猫さんが自らハーネス希望なんて。そんなタイプには見えなかったのですがね」
「元来臆病者だからな滑り台は。名前をお漏らしにしようかとも思ってたくらいだ」
「…ヴゥ~…グルル……」
「ふふふ、凄い形相で睨んでますよ~、良いですね~やっぱり子猫さんはそうでなきゃ」
歯軋りしながらユノスティアスを睨み付けてたらランティスドールはご機嫌に笑う。オレは不機嫌だ。
食べ物の匂いがする建物に入ると、笑顔の人間が「いらっしゃいませ。いつものテラス席ですね」とふたりに声を掛けてすぐオレをみるなり「地下に荷物置き場が御座いますのでそちらに置かせてもらいますね」とユノスティアスに言ってオレを別の人間に引き渡そうとする。
「見せてもらおうか」
それだけ言うと、ユノスティアス達も一緒に人間が案内する地下に降りる。
人間が案内した地下には少し薄汚れた空間に数人の色んな格好した半獣人たちが等間隔に離れて首輪で壁に繋がれて水とパンを食べていた。
「喧嘩や交尾が起きないようにこの様に隔離整理してますので、ご安心ください。荷札をお渡ししておきます」
にこにこ笑いながら案内した人間はオレに首輪を付けようとしてきたので、思わず歯を剥き出して唸り声を上げた。青褪めた人間は引き攣った笑顔になりながらユノスティアスに「ご主人様からお付けいただけますか」と首輪を手渡そうとする。
だが無言でユノスティアスは降りてきた階段を上がり始めて、ランティスドールも「それじゃあ行きましょうね」とオレの背を押して一緒に階段を登って街の道に戻る。
よく分からないが、地上に戻ると、またふたりはどこかに向かって歩き始めた。
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