転生王女の破滅回避プラン90! ~無自覚人たらし王女、アリスが来るまでに美形側近を溺愛モードにしていました~

とびぃ

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第7章:『お菓子法』と三者三様の溺愛(残り40日)

7-3:根回しと議会での可決

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リリアの『お菓子法』は、三人の美形側近による、完璧な『溺愛の根回し』によって、驚異的な速度で王室会議へと提出された。その過程は、リリアが想像するような静かな事務処理ではなく、三つの資源(武力、法、情報)を惜しみなく投入した、水面下の冷酷な『溺愛戦争』だった。
ラビは、リリアから法案の骨子を与えられた瞬間、行政官としての魂が燃え上がった。彼は、王女宮の執務室に戻ることも忘れ、城の最古の図書館にある『行政法典』の原書が眠る、埃まみれの書庫に籠もった。
窓の外は深い夜闇に包まれていた。薄暗いオイルランプの光が、彼が広げた羊皮紙の山を照らし出す。彼の目の下には、以前のような過労の隈ではなく、極度の集中によってできた血管の浮きが刻まれていた。彼にとって、これは単なる法案ではない。リリアという『秩序の女神』がこの国に降ろした、『美しき経営哲学』の具現化だった。
「女王への義務化を、どう女王のプライドに繋げるか」
ラビは、羽ペンを高速で走らせながら、静かに思考を巡らせる。女王の最大の特徴は、そのヒステリーではなく、『自身がこの世で最も優雅で美しい存在であること』への絶対的な確信だ。
「そうだ。この法案は『精神の安定』ではなく、『美の維持』を目的とする。法案の正式名称を『王室専属パティシエ制度及び王室威厳維持のための指定甘味定期摂取義務法』とすべきだ。パティシエは当然、リリア様。彼女の考案する甘味は、『美貌を保つための最高機密の薬』であると」
彼の神経質な知性は、女王の心の闇の、最も深い部分にある『承認欲求』を、行政の法という名の冷たい檻に閉じ込めた。法案のどの条項も、女王の美意識を最大限に持ち上げる美辞麗句で満たされていたが、その裏では、『指定パティシエ(リリア)以外が作ったお菓子は摂取を禁止する』という、リリアの『パティシエとしての独占権』を磐石にする条項が紛れ込んでいた。
彼は、徹夜で法案を完成させた後、その雛形を抱きしめるように机に突っ伏した。彼のウサ耳は、疲労ではなく、リリアへの最高の献身を成し遂げたという、知的な悦びにぴんと立っていた。
ジャックは、ラビが法案を仕上げるのを待たず、王室会議の前日、行動を開始した。彼の武力的な忠誠は、リリアの『優しさ』が、何の妨害も受けずに永続することを最優先のタスクとする。
場所は、騎士団詰所の裏手にある、湿気を帯びた石造りの一角。夜風が冷たく、遠くで騎士たちが訓練する声だけが響いている。ジャックは、王室会議で最も影響力を持つ軍部の代表者と、貴族院の穏健派を代表する男爵を、そこに呼び出した。
彼の真紅の騎士服は、夜の闇の中でさえ威厳を放ち、背後の壁には、屈強な精鋭騎士たちが、感情のない石像のように並んでいる。その光景だけで、すでに「会議」ではなく「威圧」の場であることを示していた。
「リリア様が提案される『お菓子法』は、騎士団の士気向上と、王宮の防衛力の維持に直結する。この法案に反対する者は、『王室の安全保障を脅かす者』と見なす」
ジャックは、声を荒げることもなく、硬質な剣の音のように、その言葉を告げた。彼の冷たい青い瞳は、軍部の代表者の顔面を、逃さず射抜いている。
「女王陛下のヒステリーは、既に騎士団の業務に深刻な悪影響を与えている。この法案は、女王陛下を静めるための、唯一の『合理的解決策』だ。軍部の代表として、貴方がこの法案を拒否することは、騎士団の兵士たちの『命の糧』を奪い、『リリア様が築かれた平和の秩序』を崩壊させることを意味する」
軍部代表は、顔面を蒼白にした。ジャックは、リリアの優しさを武力で擁護するという、究極の独占的な献身を示したのだ。彼にとって、リリアの法案に反対する行為は、彼の主君の『聖域』を侵す、許されざる冒涜だった。
「異論は、ありません、団長」軍部代表は、震える声でそう答えるしかなかった。「騎士団の士気向上は、我々軍部の最優先事項でございます。この法案は、全面的に支持いたします」
ジャックは、その答えを聞くと、一言も発さずに、ただ冷酷な視線を貴族院代表に向けた。その視線は、「貴様も分かっているだろうな」という無言の脅迫だった。
彼の武力的な独占欲は、リリアへの忠誠という形で、すべての抵抗勢力を威圧し、法案への『絶対的な黙認』を勝ち取った。
チェシャ猫の戦場は、王宮の会議室でも、騎士団詰所の裏手でもない。王都の貴族たちが集う社交界と、民衆が読むゴシップ誌の裏側だ。
彼は、ラビの法案の雛形と、ジャックが貴族を威圧する現場の音声記録を、王都中の情報網へ一斉に流した。だが、流した情報は、法案の『冷徹なロジック』ではない。
彼は、王宮の最も高い塔の屋根裏で、猫のように優雅に座り、王都のゴシップ誌の編集長と、密かに『魔法通信』を行っていた。夜の王都の街並みが、窓の外に宝石のように広がっている。
「いいかい、編集長。この『お菓子法』を報じる際のトーンは、『娘の切なる願い』だ。女王陛下が夜な夜な眠れずにヒステリーを起こしているのは、王女リリア様の美しい心には耐えられない。だから、彼女は、母の健康のために、自分の得意な『お菓子』を、『愛の薬』として献上するのだ」
チェシャ猫の金色の瞳は、歓喜に満ちて細められている。彼の声は、楽しげな悪意に満ちていた。
「この法案は、単なる行政ではない。それは、『優雅な王女が、母である女王を優しく諫め、国に平和をもたらすための、愛の法案』として、民衆に広まるべきだ。女王の圧政に苦しむ民衆は、リリアという『優しさの象徴』を求めている。この物語は、最高のエンターテイメントであり、かつ君のゴシップ誌の売上を三倍にする『社会的なトレンド』だ」
彼の情報操作は、法案の可決を、王都中の民衆が心から支持する『最高の美談』へと変貌させた。彼は、法案に抵抗する貴族たちを、『娘の純粋な愛を理解できない、古き時代の悪意』として、世論という名の冷酷な裁判で断罪した。
抵抗勢力は、民衆の歓喜の波に飲み込まれ、口を開くことすらできなくなった。チェシャ猫の独占欲は、「リリアの物語を、誰にも真似できない最高のシナリオとして完成させること」に昇華されていた。
王室会議当日。
会議室は、異様なほどの静けさと、熱狂的な支持で満たされていた。リリアの改革に抵抗する貴族は、すでに第6章で粛清されたか、あるいは、三人の側近による武力・法・情報という名の『溺愛の圧力』に屈していた。議場の壁には、女王の美意識を称賛する花飾りが飾られ、その優雅な装飾が、法案の『美意識維持』という建付けを、視覚的に補強していた。
リリアが、女王対策という名の『お菓子法』の提案を行った瞬間、会議室は満場一致の賛成で包まれた。
「異議なし! リリア様のご提案は、王家の威厳を保つための、最も合理的かつ画期的な施策である!」
ラビが作成した完璧な法案の雛形は、わずかな修正すら加えられることなく、その場で可決された。リリアのRTAは、行政という名の『頭脳』を完全に掌握し、その権威を、自身が最も得意とする『お菓子』という名の武器で、永続的なものとしたのだ。
リリアは、静かに、そして事務的に、議事録の承認欄にサインをした。彼女の顔には、この完璧な結果への、純粋な『業務効率の達成』という喜びが浮かんでいた。彼女の知らないところで、三人の男たちの熱い溺愛と、過剰な献身が、この異様なほどの『平和な可決』を現実のものとしたのだ。三人の側近は、互いに視線を交わし合い、心の中で「俺の功績が一番だ」とマウントを取り合いながらも、リリアの『業務効率の達成』という無自覚な満足の笑顔を最高の報酬として、静かに受け止めた。
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