【R−18】之山朔太の冒険〜出向社員の鬼畜クエスト〜

カケラシティー

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1 冒険の始まり

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 之山朔太は、堂々とオフィスの真ん中を歩いていく。

「やあ、来てくれてありがとう」

 ディスクの前で柿沢部長が、握手で之山を出迎えた。

「みんな、ちょっと集まってくれ」

 部長が声をかけると、オフィスのメンバー数十がディスクの前に集まった。

「四つ葉銀行さんから出向で来てくれた之山朔太君だ。之山君はT大出身で入行1年目ながら四つ葉さんでも幹部候補だそうだ。
 今日から我が社で3ヶ月間“研修”という形でお預かりする事になった。よろしく頼む」

「之山です。若輩者ですが、よろしくお願いします」

 之山は深く頭を下げると、ゆっくりと身体を起こしながら周りを見回した。
 歓迎や羨望、興味の視線を感じながら、いくつか別の視線が向けられているを嗅ぎ取る。

「之山君は、高山君のグループに入ってもらう。高山君あとは頼む」
「はい。之山さん、よろしくお願いします。では、こっちへ」
「よろしくお願いします」

 直属の上司になる高山美登里の後へ着いていく。
 高山は見た目30前半といったところ、黒髪のショートカットで切れ長の目に眼鏡をしている。
 いかにも気が強そうな顔立ちをしているが、身体にフィットしたパンツスーツに包まれた、その腰回りは色っぽく男好きのする身体つきを想像させた。

「ここが、之山さんの席ね。隣が三崎さん。之山さんのOJT担当になります。三崎さんよろしく」
「三崎奈帆です。よろしくお願いします」
「之山朔太です。こちらこそよろしくお願いします」

“ビンゴ!”

 朔太は心の中で、そう呟いた。真っ直ぐな黒髪のセミロングに透明感のある白い肌、くりっとした目。程よく高い鼻に薄い唇。ビジュアルは100点。スタイルも相当良さそう。知的で清楚で可愛らしい。早くもボスキャラ級の出現に朔太は笑いが止まらない。

「之山さんには、私が今進めているプロジェクトを手伝って貰います」
「わかりました。あ、それと自分『朔太』でいいです」

 朔太は持ち前の人懐っこい笑顔で奈帆にそう持ちかけた。
 大抵ここでクスリと笑うくらいはするものだが、奈帆は戸惑った表情を浮かべている。

「ごめんなさい。私そういう『男の子ノリ』苦手なの。之山さんの事は之山さんと呼ばせてもらいます」
「あっ、そうですか!ごめんなさい!調子乗っちゃいましたね!でも…『さん』はやっぱ慣れないんで、せめて『くん』でお願いできないですか?」
「…わかりました。じゃあ『之山くん』で」
「ありがとうございます。あと敬語もいっすよ?自分歳下なんで」
「…私はこれが普通なので。之山くんこそ気にしないでください」
「あ、はい。わかりました」

“これは、なかなか…”

 朔太は、奈帆とのやり取りに心躍らせていた。普通、これだけの美人であれば、チヤホヤされるのは慣れっこの筈なのに、奈帆は微塵もなびかない。

“いいねえ、奈帆。俺は君みたいなのを堕としたいんだよ”

 まるで値踏みをする様に、朔太は奈帆を観察する。そして、左手の薬指に光るものを見つけた。

“結婚指輪?”

 ピアスもネックレスもしていない奈帆が唯一つけている装飾には、それくらいしか説明がつけられない。

「なほー。ヤッホー」

 奈帆の後ろに、また違う女性が現れた。
 ゆるふわの髪形の、いかにも陽キャなモテキャラ。
 後輩である奈帆に用と見せかけて恐らく自分の偵察だろうと朔太は踏んで、愛想よく笑いかけると、相手もニコリと笑い返した。

「奈帆ズルくない?こんなエリートイケメンつくなんて」
「やめて下さいよ、芹那先輩。グループ長の指示なんですから」
「さすが姉御ね。奈帆なら堅いし、しかも悪い虫も奈帆が隣にいたら近づけない。計算高いわ」

 視界に朔太を納めながら、その芹那という、女性は奈帆と会話を続ける。

「堅いって何ですか?」

 朔太が会話に割って入ると、芹那は喜んで朔太の方を向き直った。

「あ、私、田沼芹那です。はじめまして。えっと、堅いっていうのは…この娘結婚してるの。だから、之山さん狙っても無駄ですよー」
「あ、自分。朔太でいいっす」
「朔太君!可愛い名前ですね!私も芹那でいいよ」

“早くも簡単そうなのが出てきたな”
 
 朔太はシナを作りながら喋る芹那の身体を値踏みする。

“悪くはないか”

 情報網も広そうだし、最初の『クリーチャー』はこいつだと朔太は目論んだ。

「三崎くん!ちょっと!」

 柿沢部長がデスクで大声で奈帆を呼んでいる。

 奈帆が慌てて立ち上がると後を追おうとする朔太に「之山くんは大丈夫。席整理しててください」と奈帆が制した。

「素敵でしょ?奈帆?」

 奈帆がいなくなって用が無くなったはずの芹那だったが、そのまま残って朔太に話かけた。

「三崎さん結婚されてるんですね。お若いのに」
「奈帆は24歳だよ。朔太くんは」
「自分は23です」
「そうだよね。入行1年目だもんね」
「芹那さんだってそんなに変わらないですよね?」
「かー!聞く?それ?」
「ハハハ。すみません」
「私は27。奈帆には見た目も歳も敵いません」

 仕切りに奈帆を引き合いに出して会話をする芹那。恐らく、これは合コンなどで芹那が使ってきた手なのであろう。

“ったく、イージーだな”

 思わず舌打ちをしそうなのを抑えて朔太は
満面の笑顔で呟く。

「自分は、芹那さんみたいに『明るくて、一緒にいて楽しそうな女性』が好きですけどね」

 カッコ付きのテンプレを芹那に投げる。芹那が誘導したい場所に、たった一歩で踏み込む。

「やだ!朔太くん上手ぅ!イケメン抜け目ないー」
「あ、ごめんなさい!自分失礼でしたよね?」
「そんな事ないよー!お姉さん嬉しいよー」

“はい、詰み”

 あっけなく勝ちを確信した朔太のもとへ奈帆が戻ってくる。

「あ、奈帆ごめんね!おじゃましました!朔太くんもまたねー」

 手を振り立ち去る芹那に会釈で答えて、朔太は席に向き直った。

「賑やかな人ですね」
「そうですね」

 朔太の投げかけに、奈帆は素っ気なく答えると淡々と仕事の説明を始めた。
 
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