誤召喚された異世界でチート魔法使いと旅をします

桐戸李泉

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1章

16話 魔導書

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 デルイの言葉を合図に、辺り一帯が青い霧に包まれる。

「な、なんだよこれ……、ん?」

 体が動かない。
 辛うじて動く首を動かし、リザの方を見る。リザも同じ状態らしい。

「『ルーマニの魔導書』ね。なるほど……」
「なんなんだそれは?」
「簡単に言えば動きを止める魔法よ。元々戦争で敵勢力の動きを食い止めたり、奇襲をかけるための準備に使用されていたものよ。まさかこの魔導書を所有してるとはね……伊達に魔導書収集家を名乗ってたわけではないのね」

 悔しさからか、リザは歯ぎしりをする。

「ふん。結局この程度で終わりか。なんだ、思ったより大したことはないじゃないか」

 デルイが頬を緩ませる。
 
「とりあえず僕に謝れよ。親の金で何が悪いんだい? それすら持ち合わせてない君の言葉はただの僻みに過ぎない。それに僕はきちんと学院を出てるんだ、そうだよ。ちゃんと出たんだ!」

 デルイは発言の中で怒りを爆発させていた。
 随分と情緒が不安定らしい。
 一方、リザは俯いているせいでその表情が読めない。彼女に限って、この状況で諦めるような性質はしてないだろう。むしろ、ここで諦めることは彼女が最も嫌うに違いない。
 リザの体が小刻みに震えていた。
 怒りのせいだろうか? そんなことを考えていた俺の耳にーーー。

「あはははははっ」

 リザの笑い声が聞こえた。
 あの震えは笑いを堪えていたのだろうか。
 
「ははは、馬鹿にするんじゃないわよ。この程度で終わりなわけないでしょ?」

 鋭い視線でデルイを睨む。 
 
「そもそも『ルーマニの魔導書』は対象の敵勢力に反比例して威力を増す魔法よ。私達二人しかいないのだから思考能力までもが停止する石化までしているはずなのだけど。あなたができているのは動きを止める固定化まで……、その魔導書、ちゃんと理解していないでしょ?」
「そ、そんなはずがあるわけないだろっ」
「いいえ、全然理解できていないわ。そもそも『ルーマニの魔導書』のような設置型の魔法は術者から独立しているし術者の実力に依存するものだから、こんな風に」

 リザの足元に魔法陣が浮かぶ。
 そして、リザを中心に霧が赤色に変化していく。その霧が体に触れると、体に自由が戻った。
 
「術者以上の実力を持つ魔法使いがその魔法が何たるかを知ってしまえば、それを解くことは簡単。それどころか、利用される危険があるので、絶対にその魔法が何かを悟らせてはいけないの」

 デルイたちの方へ目線を向ける。そこでは、先ほどの俺たちと同じ状態に陥ってしまっているのか微動だにしない二人の姿があった。

「これは設置型の魔法を使う際の常識、学院を出ていなくても魔法使いなら知っておかなければならない基本なのだけど」

 それに、とリザは言葉を付け加える。

「あんた、『メーティス術式』を知らないでしょ? あんたの記憶消去の術式を見て思ったのだけど、あれにはいくつか簡略化、省略できる箇所がある。にもかかわらず、その際用いる『メーティス術式』を一切使用してなかった。考えてみれば、『ルーマニの魔導書』にも『メーティス術式』を使用してる箇所があったわね。あー、それで石化まで至れなかったのね」

 リザが嘲笑を浮かべ、一歩ずつデルイの許へ歩みを進める。 

「くっ……」

 デルイが顔を歪ませる。

「正直に魔法は教えてくれるし、『メーティス術式』は理解していないし。なに? 私に手加減でもしてくれているの、……?」

 デルイを見ていたリザの言葉が途中で途切れる。
  
「こ、これでも、です」
「えっ?」

 いつの間にかリザに急接近していたロリの姿。
 そのロリが発した光がリザを包む。

「えっ……」

 直後に聞こえたのはロリの絶句。
 リザを包んでいた光が砂のように崩れ落ちる。そして中から何事もなかったように無傷のリザが現れる。しかし、その顔は驚きに満ちていた。

「あなた、一人で解いたのかしら?」
「え、あっ……はい……」

 突然の質問に戸惑うロリ。
 
「そう……。才能は認めてあげるわ。ただ……」

 リザがロリが先ほどした魔法と同じような魔法を使う。
 光の中から現れたロリは糸の切れた人形のように地面に臥す。

「その才能は今邪魔ね」

 ただただ容赦がなかった。 
 そして、リザがデルイの前へ立つ。

「まぁ、そういうことよ。私が相手で残念だったわね」

 リザが手を叩く。それと同時にデルイが倒れる。それを確認すると、リザは俺の方を振り返り、満面の笑みを浮かべていた。

「さて、早速報酬を貰いにいきましょうか」
「お、おう……」 
   
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