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2章
18話 プロローグ
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「ふぅ……」
旅で溜まっていた疲れが、溶けるように消えていく。
まさか異世界に来て、温泉に入る機会があるとは思ってもいなかった。
あまり長風呂をするタイプではなかったが、久しぶりにお湯に浸かれるということもあってか、随分と長風呂になっているような気がする。
(もう一度水風呂に浸かって……)
そんな考えがふと頭を過ったが、明日も早い。
そこを踏まえると、大変に名残惜しいが、そろそろ就寝した方がよさそうだ。
ゆっくりとお湯から出ると、本日の宿へ向かう。
宿に着くと、借りた部屋へ向かう。部屋の前に着くと、中から二人の話し声が聞こえる。
ノノも随分と慣れたのか、随分と話し方が柔らかくなったように思う。
(……これじゃあ俺、変態みたいだな)
扉を叩き、中に入る。
「今帰ったぞ」
部屋の中では、小さな明かりの下の机の上にいくつもの紙を拡げ、向かい合っている二人の姿があった。
すっかり見慣れた光景だ。
「あら、結構遅かったのね。もう少ししたら寝ようって話をしていたしちょうどいいタイミングではあるのだけど」
「あ、おかえりなさいです」
「また勉強会か?」
「えぇ。いやぁこの子、私が認めただけあるわ。もう『メーティス術式』を理解してるの」
リザが笑顔でノノの頭を撫でる。
「そーなのか。それはすごいな」
「興味なさげな返事ね」
「と言われてもなぁ……、凄さがいまいち理解できないんだよ」
「あんたはもう少しノノを見習って勉強したらどうなの?」
「あ、あぁ……そうだな」
「消極的な返事ね。まぁ、あなたの場合は魔法云々以前に文字を読めることから勉強しないといけないのだけど」
「流石に文字くらいはな……」
文字が読めないのは本当に不便だ。
文字が読めなければ、一人で行動することすらままならない。
最も、あのミミズが這ったような文字を文字として認識できるのはいつになるのやら、という話だが。
「てか、魔法使えないんだし、勉強しても無駄だろ」
「そうなのだけどねぇ」
あれ以来、一度も魔法は使えない。
ただ、リザに言わせればあの時の方が異常らしい。
というのも、俺の体には一切の魔力がないらしい。ではなぜあの時に使えていたのか、という話だが、それもよく分からないらしい。
「話は変わるけど、目的地はあとどれくらいなんだ?」
「もうすぐ傍よ。後一山越えればすぐに見えるわ」
「だったらすぐだな」
「すごく楽しみにしてます」
ノノがキラキラとした表情を浮かべる。
「そう言えば目的地の名前を聞いた時にも同じような顔してたけど、そんな凄い場所なのか?」
「凄いなんかじゃないですよ。魔法使いなら一度は行きたい場所です」
興奮しているのか、いつになく強い口調だ。
「その割にはリザは全然って感じだな。何回か行ったことあるのか?」
「いいえ、私も初めてよ。ただなんていうか、複雑な気分なのよ」
「なんか人に会うとか言ってたけど、それが理由か?」
「えぇ、そうね」
「苦手な人なのか?」
「いえ、別にそういうわけではないけど。……苦手なのかもしれないわね」
こちらはこちらでいつになく弱々しい。
「珍しいな」
「いや、なんていうか昔の私を知っている人ってのがねぇ」
リザが遠い目をする。
でも何となく分かる気がする。
「別にいいけど。もう行くって伝えているし。それより早く寝ましょうか」
リザが指を鳴らすと、机の上の灯りが少し暗くなる。
その瞬間、どっと疲れが湧き出る。
ノノがいた方からはあくびが聞こえた。
リザがいる方からは紙を畳む音が聞こえる。
互いに「おやすみ」を言い合い、各々のベッドに向かった。
旅で溜まっていた疲れが、溶けるように消えていく。
まさか異世界に来て、温泉に入る機会があるとは思ってもいなかった。
あまり長風呂をするタイプではなかったが、久しぶりにお湯に浸かれるということもあってか、随分と長風呂になっているような気がする。
(もう一度水風呂に浸かって……)
そんな考えがふと頭を過ったが、明日も早い。
そこを踏まえると、大変に名残惜しいが、そろそろ就寝した方がよさそうだ。
ゆっくりとお湯から出ると、本日の宿へ向かう。
宿に着くと、借りた部屋へ向かう。部屋の前に着くと、中から二人の話し声が聞こえる。
ノノも随分と慣れたのか、随分と話し方が柔らかくなったように思う。
(……これじゃあ俺、変態みたいだな)
扉を叩き、中に入る。
「今帰ったぞ」
部屋の中では、小さな明かりの下の机の上にいくつもの紙を拡げ、向かい合っている二人の姿があった。
すっかり見慣れた光景だ。
「あら、結構遅かったのね。もう少ししたら寝ようって話をしていたしちょうどいいタイミングではあるのだけど」
「あ、おかえりなさいです」
「また勉強会か?」
「えぇ。いやぁこの子、私が認めただけあるわ。もう『メーティス術式』を理解してるの」
リザが笑顔でノノの頭を撫でる。
「そーなのか。それはすごいな」
「興味なさげな返事ね」
「と言われてもなぁ……、凄さがいまいち理解できないんだよ」
「あんたはもう少しノノを見習って勉強したらどうなの?」
「あ、あぁ……そうだな」
「消極的な返事ね。まぁ、あなたの場合は魔法云々以前に文字を読めることから勉強しないといけないのだけど」
「流石に文字くらいはな……」
文字が読めないのは本当に不便だ。
文字が読めなければ、一人で行動することすらままならない。
最も、あのミミズが這ったような文字を文字として認識できるのはいつになるのやら、という話だが。
「てか、魔法使えないんだし、勉強しても無駄だろ」
「そうなのだけどねぇ」
あれ以来、一度も魔法は使えない。
ただ、リザに言わせればあの時の方が異常らしい。
というのも、俺の体には一切の魔力がないらしい。ではなぜあの時に使えていたのか、という話だが、それもよく分からないらしい。
「話は変わるけど、目的地はあとどれくらいなんだ?」
「もうすぐ傍よ。後一山越えればすぐに見えるわ」
「だったらすぐだな」
「すごく楽しみにしてます」
ノノがキラキラとした表情を浮かべる。
「そう言えば目的地の名前を聞いた時にも同じような顔してたけど、そんな凄い場所なのか?」
「凄いなんかじゃないですよ。魔法使いなら一度は行きたい場所です」
興奮しているのか、いつになく強い口調だ。
「その割にはリザは全然って感じだな。何回か行ったことあるのか?」
「いいえ、私も初めてよ。ただなんていうか、複雑な気分なのよ」
「なんか人に会うとか言ってたけど、それが理由か?」
「えぇ、そうね」
「苦手な人なのか?」
「いえ、別にそういうわけではないけど。……苦手なのかもしれないわね」
こちらはこちらでいつになく弱々しい。
「珍しいな」
「いや、なんていうか昔の私を知っている人ってのがねぇ」
リザが遠い目をする。
でも何となく分かる気がする。
「別にいいけど。もう行くって伝えているし。それより早く寝ましょうか」
リザが指を鳴らすと、机の上の灯りが少し暗くなる。
その瞬間、どっと疲れが湧き出る。
ノノがいた方からはあくびが聞こえた。
リザがいる方からは紙を畳む音が聞こえる。
互いに「おやすみ」を言い合い、各々のベッドに向かった。
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