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勘弁してください女神様

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『神様はちゃんと見てるんだからね、真っ当に生きてかなきゃ駄目だよ』

ばあちゃんが良く言ってたな。

神様が見ていたお陰で死んじゃって、異世界に召喚されて、望んでもいない魔王にならされるために旅立たなければいけないと。

まぁ、魔王に関しては自分でなるのを認めたからとやかく言うまい。

でもさ、でもさ、あの女神様…いや残念女神…駄女神には一言物申したい!


*****


二頭立ての幌付きの荷馬車の荷台に、僕とスケエリアとシルジットさんが乗って、カクムンドさんとアスリムが御者として旅が始まった。

乗り心地は敢えて言うまでもない。
何故普通の馬車じゃなくて、荷馬車なのかも問うまい。

変わらぬ景色に眠気が湧いて来たので、暇つぶしも兼ねて色々疑問に思った事など聞いて見たりする。

「魔族の人って、人の姿してるんですよね?」
「一概には言えませんね。進化によりますよ」
シルジットさんが答えてくれる。

この世界では、まずゴブリンが何処からともなく発生するらしい。

そのゴブリンが戦い、一定量力が溜まると進化するらしい。

そのまま人型で進化していくのが一番多いけど、住んでる場所で変化するそうだ。

沼地だとリザードマン、水辺ならマーマン、場所によって環境に合わせて変わっていくので、把握しきれていないのが実情だそうだ。

その発生?発展?した種族である程度纏めて生きていくことはあるけど、集落や村を作って集団で生活することはなく、殆どが気ままに生きているそうだ。

お腹が空いたら獲物を狩り、仲間内で力試しをして、勝てば負けた方が従うけどそこまでで、そこから人族みたいに国を作ったりする事はなく、一番強くなったら別の種族と戦いに行くと。

俺より強い奴に会いに行く、ってヤツか。

バトル野郎の集団に戦って勝って、それを纏めるの?
何だか無理ゲー以外の何物でもない気が…

「でもそうやって強い奴と戦うのが使命って言うか好きなのに、何で強くない人族を襲うの?」
だって人族って弱いんでしょ?

「そうですね、酷い言い方ですけど、彼らにしては遊びですね」
「遊びって…」
「そうねぇ、食べる訳でもない、殺す訳でもない、何かを奪うとか攫って行くでもない。
逃げるから面白がって気が済んだら去って行く。
遊んでいるとしか言いようがないの。
でもこちらとしては致命傷にならなくても、怪我が治るまでは働けないし、国が治るまで援助してくれると言っても、その数が多くなると問題だからね」
スケエリアが補足のように説明してくれる。

憂いを帯びたって言うのかな?
何だか色っぽい表情でドキドキする。

いやいや、話を真面目に聞こう。
情報収集は大事だからね。

話を聞いて思い浮かんだのが、虫やスズメを捕まえた田舎の猫?
最近の家猫は虫とか捕まえないそうなんだけど、母さんの田舎に行った時、じいちゃんばあちゃんの家で飼ってた猫がセミを捕まえてきて、猫パンチで暫く突きまくって、蝉の鳴き声が煩かった覚えが。

あんな感じな?

「話を聞くと纏まっていないんですよね?
それなら魔族を纏めるとか無理なんじゃないですか?」

普通ならその種族の居る集落などに行って、そこのボスを倒して配下につけるとかでしょ?
なのにバラバラとか、どうするの?

「普段は好き気ままにフラフラしてますが、シーズンが近くなると種族で集まります」
「シーズン?」
「魔族の方々はほぼ男性しか居ません」
ああ、女神様の趣味でね。

「通常は戦い進化して、種族の数がふえるのですが、シーズンになると種族の方々が集まり戦いあいます」
頂上決戦?ボスでも決めるの?

「そこで一番強い方が女性化します」
「ぶっ!」
思わず吹き出しちゃったよ。

え?何?ゴブリンとかオーガとかのオネエ?

「そしてその種族の純血種が誕生するのです」
「純血種、何だか凄そうな響きですね」
頂上決戦で勝った者の血筋、強そう。

「一度に一人ずつしか増えませんし、数は少ないですけど、種族毎の一番強い方々ですから、凄いのでしょうね」
「その純血種が集まって人族を襲ったりとかしたら、滅びませんか?」
と言うかそんなのに勝てるわけないですよ、マジに。

「いえ、純血種の方々はそんな事しません」
「ん?」
「純血種の方々は住む場所を決め、ひっそりと生活しています」

……何だか疲れてくる…
え?何?強くて悟りでも開いてるの?
最強だから、他の些事は気にせず、悠々自適の引きこもりライフ?
好きに生きるから他のも者は良きに計らえ?

もう何と言うか、色々規格外と言うか、あの女神様は何がしたいの?
何なのこの世界、どうしたいのこの世界、何処に向かわせたいのこの世界?

「…あの、シルジットさん、ちょっとキャパオーバーなので一旦休憩させてください」

大丈夫ですか?とシルジットさんが飲み物を手渡してくれる。
スケエリアも心配顔でこちらを見ている。
ああ、その心配顔も良い。
とりあえずこのモヤモヤした頭の中を落ち着かせるため軽く目を閉じる。



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