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来訪者・1
しおりを挟む「はー、折角お米見つけたから、シルジットが帰るまでにふっくらご飯食べさせてあげたかった」
食後、食堂で食休み(早口言葉じゃないよ)しながらついボヤいでしまう。
「ご飯とはパンと違うものなのですか?」
「うん、そう。
俺の居た国の主食で、ほんのり甘くてモッチモチで」
もちという言葉に背中のおもちがピクリと反応する。
「お粥もそうだけど、雑炊にしたりチャーハンにしたり、ドリアとか色々変化つけて食べれるけど、一番好きでしょっちゅう食べるのはおにぎりかな」
呼んだか?と隣のテーブルに居るオニギリが振り返る。
「後鳥釜飯とか……」
「あーらアタシを食べるの?」
「いや~ん、コーってばダ、イ、タ、ン」
……あー、もう!
名前が食べ物なのは覚えやすいよ。
俺カタカナ表記の名前覚えるの大の苦手だから助かるよ、でもややこしい!
「……今食べ物の話してるから………」
きゃっきゃしてるカマメシ達にため息混じりに告げると
「いやだ~~、アナタ狙われてるの?」
「アタシって罪作り」
余計騒がしくなった……勘弁して…。
「えっと、とりあえず夕食にもう一度リベンジしてみるから、美味しく出来たら食べてみてね」
話を切り上げて食堂を出たけど、まだあの二人はきゃっきゃしてる……。
*****
スキヤキが作ったノコギリと金槌と釘を持ってトンソクの所へ。
街に行ってしまう前にいくつか物を作ってもらおうと思う。
先ずはテーブルと椅子。
今はオニギリの土魔法で作った土のテーブルと椅子なので、一先ず僕用のを試しに木で作って貰おう。
後出来たらベッドも欲しい。
土の台に動物の皮を敷き、カニスキに貰った布を上にシーツ代わりに被せて昨日は寝たんだけど、じんわりと湿り気が……。
野宿で慣れたとはいえ、やはり快適な睡眠は欲しいからね。
地面に図面を書いて説明する。
テーブルなんて簡単だよね、テーブル面の天板?に足を付けたら出来上がりだし。
切り出している太い幹を適当な厚みでスライスする。
足用の棒を切り出して長さを揃えて……あれ?テーブルの上から釘打つの?
テーブルに釘の頭が残って凸凹するよね?
……まあいいか、試作品だし。
上にテーブルクロス代わりの物敷くとか、薄く切った板を一枚乗せるとか、ほら、コタツみたいにテーブル板別とか…
何でうちの高校技術も家庭科も無かったんだろう。
大事だよ、特に家庭科……。
頭の中でうだうだしてる間にテーブルが出来上がっ…………てない。
足の長さ揃えたはずなのにグラグラして安定しないよ、何で?
「コー、これってこんなにグラグラしてて良いわけ?
上に物乗せたら落ちないか?」
いや、良くないです。
「これはダメだよね、ごめんなさい、もう一回作ってもらえる?
足の長さがキチンと揃ってなかったんだと思うから、足の長さを揃えるのが大事だと思う。
今も揃ってると思ったんだけど、もっとキッチリ揃うようにチェックするから、もう一度お願いします」
……そう、ここでも役立たずの口だけ大将になってしまってる。
運動はそこそこ出来るのに手先の不器用さが情けないなぁ。
切り出した足を並べて置き、上と下に真っ直ぐな棒を当てて長さが揃ってるのを確認して、板に打ち付けてもらう。
「なんでー、同じ長さだったはずなのにグラつくんだ?」
「俺の腕が未熟ってわけなんじゃないか?」
もっとチョチョイと簡単に出来るもんだと思ってた。
何だかトンソクに申し訳なくなってくる。
どんよりしている俺たちに、
「それさ、足三本にしてみなよ。
四本足ってバランス難しいからさ、簡易で作るなら三本がおススメだよ」
見知らぬ人が話しかけてくる。
「誰だお前?」
トンソクも知らないみたいだ。
「俺?サカユ。城から来たんだ」
城って事は人族?
「……お前オーガか?
もしかして純血種ってわけ?」
「当ったりー。
あんたまだ若いねー、まだ生まれたて?」
「バカ言うな、二十年は経ってるぞ」
サカユって人の言葉にムッとして返すトンソク。
見た目同じ年くらいにしか見えないけど、この人も純血種なら見た目で判断出来ないのか。
「あっそ。まだまだ若いねー」
飄々とした人だなぁ。
でも聞き流しちゃあいけないセリフが有ったよね。
「城から来られたんですか?
なのに人族じゃなくて純血種なんですか?」
「んー、その辺はツレに聞いて。
面倒なのは嫌いだから」
あ、この面倒臭がり屋は純血種だね…って……え?
「ツレ…って事は他にも居るんですか?純血種の方が」
「うん、そう。
今着いたばかりなんだ。
皆広場に居るよ」
え?何?わからないんだけど、とりあえず広場……食堂の横の空き地に行こう。
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