6 / 13
悪役令嬢?視点
しおりを挟む
わたくし、エスフィー・ザレムルと申します。
ザレムル公爵家の第二子の長女です。
双子の兄の、ルクスルス・ザレムルとこの夏学園に入学致しました。
学園には、わたくしの婚約者であり、将来兄が側近として仕える事となるルークエム殿下や、兄と同じく側近候補である、ハシヴァル様と、幼い頃はよく一緒に遊んでいました。
秋も深まり、冬季休暇の前のテストの為、私と兄は図書室で勉強中です。
そこへ資料を探しに、殿下とハシヴァル様、将来護衛となるファシムス様がいらっしゃいました。
一つと言えど学年が違いますから、幼馴染の四人が揃う事は稀です。
少しばかり話が続いてしまいました。
そこへ、パタパタと駆け寄る足音が…。
話をしていたわたくしが言うのもなんなのですが、図書室内を走るのはよろしくないのでは、と、足音の方を振り向いた瞬間…
「キャーーッ!」
悲鳴と共に、女生徒がわたくしの横で転びました。
大丈夫ですかと声をかける前に彼女は顔を上げて、潤んだ瞳で私を見上げます。
「ひど~い!足を引っ掛けるなんてあんまりです!」
………え?
「ルーク様~、エスフィー様が酷いんです~、私を転ばせたの見てましたよね?」
…………え?
何故彼女はわたくしの名前を……それより、
「貴女、図書室で…いえ、そもそも室内で走ってはいけませんよ」
「だからって転ばせるのはどうかと思いま~す」
「わたくしそんな事…」
「皆さん見てましたよね?
だって私転けてるじゃないですか、エスフィー様が転ばしたからですよ。
ね、モー様?」
彼女はそのまま床に座りこみ、潤んだ瞳でファシムス様を見上げます。
「モー様?それは俺の事か?
悪いが俺は見ていない」
「え~、ルクス様、見てましたよね?」
「は?ルクス様?
僕の角度からは机が有るから見えないけど、妹がそんな事するとは思えないな」
「妹だからって庇うのは贔屓だと思いま~す。
ね、ハー様」
「………………………………………………」
「ルーク様~、なんとか言ってください~」
「……………………………………………………………………」
あ…目眩がしますわ。
「あの、貴女、異性の方を勝手に愛称で呼ぶのはよろしくないのでは?」
「え~、何でですか~、学園内では身分なんて関係ないですよね?
何でそんな酷いことを言うんですか~?」
「身分の隔たりなく学びましょうと言うことであって、礼儀を欠く事ではありませんよ」
「そんな固い事言うのはどうかと思いま~す、仲良くなるには呼び方と話し方を親しくするのが一番だと思いま~す」
……わたくしの理解力が悪いのでしょうか、彼女の言葉の道理がわかりません。
どうすればいいのかわからなくなってしまい、兄に視線を向けると、黙って首を横に振り、筆記用具の片付けを始めました。
この場から立ち去るのですね。
私も机の上を片付けます。
殿下とハシヴァル様も、出入り口へ向かい歩き始めました。
「え?ちょっと!
何で行こうとしてるんですか?
"私"がここで転けてるのに、何でみんな放置なの?」
床に座ったまま彼女は叫んでいますけど、わたくし達はそのまま図書室を出ました。
「なんなんだ、彼女は?
言葉は話してても意味が通じない。
王国語を話していたか?」
兄が頭を振りながら呟きました。
「あの女性、入学式の日も殿下の前で転んでましたね。
それ以降も殿下の周りをチョロチョロしています」
「大丈夫なのか?」
ハシヴァル様の言葉に兄が問いかけます。
「色々調べましたけど、裏も後ろもありません。
高位貴族の目に留まりたいだけの様ですね」
侮蔑を込めたハシヴァル様に、笑いながらファシムス様が言いました。
「身の程知らずなのか、頭の中身がないのか、その両方なのか。
まあ、礼儀云々の前に色々ダメだろう」
皆さん無言ですけど、心の中で相槌を打っていると思いますよ。
わたくしも関わり合いたくないですね。
ザレムル公爵家の第二子の長女です。
双子の兄の、ルクスルス・ザレムルとこの夏学園に入学致しました。
学園には、わたくしの婚約者であり、将来兄が側近として仕える事となるルークエム殿下や、兄と同じく側近候補である、ハシヴァル様と、幼い頃はよく一緒に遊んでいました。
秋も深まり、冬季休暇の前のテストの為、私と兄は図書室で勉強中です。
そこへ資料を探しに、殿下とハシヴァル様、将来護衛となるファシムス様がいらっしゃいました。
一つと言えど学年が違いますから、幼馴染の四人が揃う事は稀です。
少しばかり話が続いてしまいました。
そこへ、パタパタと駆け寄る足音が…。
話をしていたわたくしが言うのもなんなのですが、図書室内を走るのはよろしくないのでは、と、足音の方を振り向いた瞬間…
「キャーーッ!」
悲鳴と共に、女生徒がわたくしの横で転びました。
大丈夫ですかと声をかける前に彼女は顔を上げて、潤んだ瞳で私を見上げます。
「ひど~い!足を引っ掛けるなんてあんまりです!」
………え?
「ルーク様~、エスフィー様が酷いんです~、私を転ばせたの見てましたよね?」
…………え?
何故彼女はわたくしの名前を……それより、
「貴女、図書室で…いえ、そもそも室内で走ってはいけませんよ」
「だからって転ばせるのはどうかと思いま~す」
「わたくしそんな事…」
「皆さん見てましたよね?
だって私転けてるじゃないですか、エスフィー様が転ばしたからですよ。
ね、モー様?」
彼女はそのまま床に座りこみ、潤んだ瞳でファシムス様を見上げます。
「モー様?それは俺の事か?
悪いが俺は見ていない」
「え~、ルクス様、見てましたよね?」
「は?ルクス様?
僕の角度からは机が有るから見えないけど、妹がそんな事するとは思えないな」
「妹だからって庇うのは贔屓だと思いま~す。
ね、ハー様」
「………………………………………………」
「ルーク様~、なんとか言ってください~」
「……………………………………………………………………」
あ…目眩がしますわ。
「あの、貴女、異性の方を勝手に愛称で呼ぶのはよろしくないのでは?」
「え~、何でですか~、学園内では身分なんて関係ないですよね?
何でそんな酷いことを言うんですか~?」
「身分の隔たりなく学びましょうと言うことであって、礼儀を欠く事ではありませんよ」
「そんな固い事言うのはどうかと思いま~す、仲良くなるには呼び方と話し方を親しくするのが一番だと思いま~す」
……わたくしの理解力が悪いのでしょうか、彼女の言葉の道理がわかりません。
どうすればいいのかわからなくなってしまい、兄に視線を向けると、黙って首を横に振り、筆記用具の片付けを始めました。
この場から立ち去るのですね。
私も机の上を片付けます。
殿下とハシヴァル様も、出入り口へ向かい歩き始めました。
「え?ちょっと!
何で行こうとしてるんですか?
"私"がここで転けてるのに、何でみんな放置なの?」
床に座ったまま彼女は叫んでいますけど、わたくし達はそのまま図書室を出ました。
「なんなんだ、彼女は?
言葉は話してても意味が通じない。
王国語を話していたか?」
兄が頭を振りながら呟きました。
「あの女性、入学式の日も殿下の前で転んでましたね。
それ以降も殿下の周りをチョロチョロしています」
「大丈夫なのか?」
ハシヴァル様の言葉に兄が問いかけます。
「色々調べましたけど、裏も後ろもありません。
高位貴族の目に留まりたいだけの様ですね」
侮蔑を込めたハシヴァル様に、笑いながらファシムス様が言いました。
「身の程知らずなのか、頭の中身がないのか、その両方なのか。
まあ、礼儀云々の前に色々ダメだろう」
皆さん無言ですけど、心の中で相槌を打っていると思いますよ。
わたくしも関わり合いたくないですね。
23
あなたにおすすめの小説
前世は有名コーヒーチェーン店で働いてたので、異世界で再現してみようという話
くじら
恋愛
王立学園の薬学科には、いつも白衣を着て調合室でコーヒーを淹れている女学生がいる。
彼女の淹れるコーヒー(という回復薬)を求めて、今日も学生がやってくる。
モブの私がなぜかヒロインを押し退けて王太子殿下に選ばれました
みゅー
恋愛
その国では婚約者候補を集め、その中から王太子殿下が自分の婚約者を選ぶ。
ケイトは自分がそんな乙女ゲームの世界に、転生してしまったことを知った。
だが、ケイトはそのゲームには登場しておらず、気にせずそのままその世界で自分の身の丈にあった普通の生活をするつもりでいた。だが、ある日宮廷から使者が訪れ、婚約者候補となってしまい……
そんなお話です。
悪役令嬢ですが、どうやらずっと好きだったみたいです
朝顔
恋愛
リナリアは前世の記憶を思い出して、頭を悩ませた。
この世界が自分の遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気がついたのだ。
そして、自分はどうやら主人公をいじめて、嫉妬に狂って殺そうとまでする悪役令嬢に転生してしまった。
せっかく生まれ変わった人生で断罪されるなんて絶対嫌。
どうにかして攻略対象である王子から逃げたいけど、なぜだか懐つかれてしまって……。
悪役令嬢の王道?の話を書いてみたくてチャレンジしました。
ざまぁはなく、溺愛甘々なお話です。
なろうにも同時投稿
目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした
エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ
女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。
過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。
公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。
けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。
これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。
イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん)
※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。
※他サイトにも投稿しています。
乙女ゲームのヒロインとして転生しましたが、謹んで回避させて頂きます!
アズやっこ
恋愛
大好きなお母さんがこの世を去った。
月に一度やって来るお父さんは男爵って貴族だった。
私はお父さんに連れられて男爵令嬢になった。
男爵令嬢になった私は、貴族の令息、令嬢が通う貴族学園に入学した。 入学式が終わり、教室へ移動中、誰かとぶつかり倒れた私は気を失い、前世の記憶を思い出した。
友達に進められた乙女ゲーム、私には合わなくてすぐやめちゃったけど、その世界のヒロインに転生してた。
王子ルート? 時期宰相ルート? 時期騎士団長ルート? 隠れルート?
嫌嫌、全部スルーして、ヒロインを謹んで回避させて頂きます。
モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します
みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが……
余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。
皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。
作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨
あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。
やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。
この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。
悪役令嬢ではあるけれど
蔵崎とら
恋愛
悪役令嬢に転生したみたいだからシナリオ通りに進むように奔走しよう。そう決意したはずなのに、何故だか思った通りに行きません!
原作では関係ないはずの攻略対象キャラに求婚されるわ悪役とヒロインとで三角関係になるはずの男は一切相手にしてくれないわ……! そんな前途多難のドタバタ悪役令嬢ライフだけど、シナリオ通りに軌道修正……出来……るのか、これ?
三話ほどで完結する予定です。
ゆるく軽い気持ちで読んでいただければ幸い。
王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない
エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい
最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。
でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる