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第二章 旅は道連れ
7 探索をしてみましょう
しおりを挟む寒さとくすぐったさを感じ、目を覚ますと、焚き火が消えていました。
くすぐったさの原因は、枕代わりの丸めたリュックの上、私に擦り寄るようにくっつく紫色の羽毛です。
私が目覚めたのを感じたのか、パッと離れて、
「ギー!ギーーー!」
と威嚇した後、また飛んで行ってしまいました。
寒かったのでしょうね。
焚き火が消えてしまい、寒さを凌ぐ為にくっついていたのでしょう。
私は再び焚き火に火を付け、横になり寝たふりをしていました。
暫くすると紫色のオカメインコは三たびやって来ました。
焚き火に近づき、私の方を気にしながらも、丸まって目蓋を閉じます。
やはり寒かったようですね。
私は驚かせないように、なるべく優しい声を心がけて話しかけました。
「ねえ君、寒いのなら毛布の中に来るかい?
一緒に寝るときっと一人より暖かいよ。
私は君に危害を加えはしないよ。
信じられないかもしれないけど、信じてくれたら嬉しいな。
私は動かないから、君が暖かく寝たいなら、こっちにおいで。
私は先に寝るから、少しでも信じてくれたなら、毛布の中に入って来るといいよ」
紫色のオカメインコはじっと私の話を聞いています。
動物に話しかけるなんて…と仰る方はいますけれど、私は動物にだって言葉は通じると思います。
気持ちも通じると思っています。
「それじゃあ私は先に寝るから、気が向いたらおいでよね」
伝える事を伝えて、私は再び眠りにつきました。
明け方目を覚まし、そっと毛布をめくると、胸の上で寝ている小さな命。
体より心が暖まりますよね。
冷たい空気で目が覚めたのか、オカメインコはビクッとした後、隙間から飛び去って行きました。
残念です。
荷物はその場に置き、川で顔を洗い水筒に水を入れたら、食べ物を探しに出発です。
持ち物は水筒と木の棒、ウエストポーチの中はナイフとドリンク剤の瓶一本、それに昨日引き裂いた手拭いの残りを同じ様に引き裂き、半分の長さに切ってリボン状にした物が8本入っています。
森の奥へ進み暫くしたところで、木の枝にリボンを結びます。
そこから進み、枝にリボンを……こうすれば帰り道に迷わないでしょうから。
リボンがなくなるまで進み、何もなければ、リボンを回収しながら戻り、別の方向へ進めばそのうち何か食べられる物も見つかるでしょう。
三つ目のリボンを結んだ頃に気づきましたが、オカメインコが付かず離れず付いてきているようです。
私に興味を持ったのでしょうか?
ふふふ、そうなら嬉しいですねえ。
一度目、二度目と空振りに終わり、三度目の挑戦だとも思いましたけれど、お腹空いて気力も落ちました。
昨日から焦げた生焼けキノコと出がらしキノコ、それにキノコの煮汁と川の水しか口にしていません。
先ほどから獣道を歩く足音より、お腹の音の方が大きいです。
仕方がないので川原であちらこちらに生えているキノコを焼いて食べることに。
今回は火から離して焦げないようにしましたけど、生焼け具合が酷くなっただけでした。
網でも有れば、スライスして焼けますが、無い物は仕方ないです。
空腹は紛れましたけど、ストレスは溜まります。
早くキノコ以外の食べ物を見つけないと。
三度目の探索の途中、緊急事態が発生しました。
無いと分かっていても、ついキョロキョロ探してしまいます。
ト……トイレ…………、あるわけないですよね。
小ならまだしも、生焼けばかり食べた弊害が、空腹とは違う音がお腹から響いてきています。
諦めて草むらへ入り、せめてもと土魔法を使います。
「小さな落とし穴」
出す物出したら何とか落ち着きました。
しかし困った事は続きます。
トイレが無いのに、トイレットペーパーなどあるわけがありません。
でもこれは大丈夫でした。
「ウォシュレット」
後は穴を埋めてしまえばいいですよね。
これで大丈夫、大丈夫じゃないのは、ずっと見られていた事です…、オカメインコに。
精神的にダメージがありますけど、見られていた事は忘れましょう。
四度目、五度目、何も見つかりません。
出したからか、お腹が空きました。
けれどキノコは暫く口にしたくありません。
六度目、二つ目のリボンを結ぼうとして上を向いていたら、足元の木の根に引っかかり、転んでしまいました。
なんだか立ち上がる気力がありません。
このままここで朽ち果てるのでしょうか。
幸せになるどころか、第二の人生開始早々に餓死ですか。
投げやりな気分になってきます。
そのままうつ伏せに倒れていると、何かが後頭部に当たりました。
顔を上げて辺りを見ると、中指ほどの黄色い物体が……。
それを手に取り、皮を剥いてみると、見たことのあるそれはやはり
「モンキーバナナじゃないですか!」
バナナは素晴らしいですよ、甘いし栄養価も高いし、腹持ちもいいし、皮も剥きやすく種もないので、簡単手軽に食べられますからね。
私は一口でそれを食べました。
ああ、甘さが染み入ります。
しかしこれはどこから来たのでしょう?
キョロキョロと見回してみると、オカメインコがモンキーバナナを一本足に掴み、飛んでくるではありませんか。
「君が持ってきてくれたのか?
ありがとう」
体を起こし座ると、オカメインコに向かい頭を下げ礼を告げます。
オカメインコは持って来たモンキーバナナを私の前に落とすと、
「ギーー、ギギ、ギーーー!」
と威嚇しました。
これはアレですかねえ、『つんでれ』とか言うやつなのですか?
一宿の恩返しですかねえ、ありがたく頂戴いたします。
私がまた一口で食べると、オカメインコは川の方へ向かって飛び、低い木の枝に止まると、「ギー」と鳴きながらこちらを見ています。
こちらへ来いと呼んでる気がします。
私が近づくと、また先の木に止まりこちらを見ているので、私の考えは間違っていないでしょう。
オカメインコに先導されて川へ戻った所で、彼(多分きっと雄ですね)は川向こうへ飛び、河原に降りてまた鳴きます。
川を渡れと言う事でしょうか。
サンダルの様な靴で川を渡るのは怖いので、裸足になって渡ります。
幸い深い部分でも太腿の辺りまででしたので、何とか渡りきることができました。
オカメインコに導かれるまま進むと、少し開けた場所にモンキーバナナが群生していました。
「おお…これはありがたい!」
そこにはモンキーバナナだけでなく、よくよく見るとビワも成っています。
ビワが成っていると言うことは今は5月あたりですかね。
とりあえず首にかけていた手拭いで包めるだけ採り、川へ戻ります。
どうやら川の向こうは実のなる木は無いのかも知れません。
拠点をこちらに移し、明日からはこちらを探索しましょうか。
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