【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮

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第二章 旅は道連れ

40 専用武器を手に入れました

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私とチャックは、そのままシナトラを部屋まで引きずって行きました。
ブルースは、
「我はまだ飲む……飲まねば治らぬ…」
と、肩を落として酒場に残りました。

部屋へ戻るとアインがクスクスと笑っていました。
「お酒を飲もうかと一階へ降りようとしてたんですけど、会話が聞こえてきて……ふふふ…、ブルースの前で笑うのは悪いですからね、部屋に戻ったんですよ」
笑いならアインがシナトラに、
「剣も多少は使えますから、明日私でよろしければ指導しますよ」
と言います。
「ホント?じゃあお願い…します!」
元気に言って頭を下げるシナトラ。

素直な子なんですけどね、もう少し空気を読むことを覚えてほしいです。

ブルースは皆が寝静まるまで戻ってきませんでした。



翌朝目覚めると、ブルースはすでに出かけている様です。
シナトラはアインに剣の使い方を教えてもらうと、二人で町の外へ出かけました。
チャックは私と一緒に、武器の引き取りに付いてきてくれました。

工房の入り口で、先日お話しした、ラルーセンさんと鉢合わせました。
「拠点を変えるから、武器の手入れを頼んでたんだよ」

ラルーセンさんは、この町を拠点に冒険者活動をしていたそうなんですけど、拠点なので顔見知りが多く、パーティー解散の理由も知れ渡っているので、「悪気の無い周りの同情が辛い」との事で、別の町に拠点を移すことにしたそうです。

その為に、『旅立つ前には、まず武器のメンテナンス』なんだそうです。
そうですよね、旅の途中で武器に不具合があると、命の危険が有るでしょう。
『旅立つ前には、まず武器のメンテナンス』
これは覚えておくべきですね。

連れ立って工房に入ります。
ラルーセンさんは、店員さん(従業員さんと呼ぶ方がしっくりきますかね)に話しかけ、私も別の従業員さんに、注文した武器の引き取りに来たと告げます。

因みに、工房の中にいる方々は、店員さんでも従業員さんでもなく、工房に勤める見習い鍛治師で、お弟子さんなんですね。
従業員さんと呼び掛けなくて良かったです。

「おう、待たせたな、注文の品はコイツで良かったか?」
奥から出てきた工房主…親方さんから、頼んでおいた武器を手渡されました。
「はい、思った通りの品です」
「こいつぁ初めて見る武器(もん)だけど、撲殺用かい?」
「それもできるでしょうけど、私としては殺さない為に使っていました」

手渡されたのは、長さ90センチ弱の鉄パイプです。
勿論先端はL字に曲がっていますよ。
持つ部分には滑らないように革が巻かれています。
以前使っていたものは、包帯を巻いていましたけどね。
握った感じも重さもしっくりきます。
……フハッ、昔を思い出しますねぇ……。


ヤンチャをしていた頃、タイマンなら勿論ステゴロですけど、抗争や殴り込みの獲物は鉄パイプでした。
最初は金属バットを使っていたんですけど、アレは凹むし曲がるし。
何より軽いですから、一撃で沈められません。

一撃で沈めないと、何度も向かって来ます。
何度も殴っていると、当たりどころが悪くて死んでしまうかもしれないじゃないですか。
私は喧嘩はするけど、人殺しにはなりたくありませんでしたからね。

そこで見つけたのがこの鉄パイプ。
頑丈だし、重さも有るので、これで上を殴るとヤバいですよ?
それこそ頭なんて殴った日には……。

頭を狙わないなら、腕?
いえ、腕を潰しても頭突きや体当たりや蹴りで反撃されます。
だこら狙うのは足です。
足さえ止めてしまえば、相手は向かって来ようがありません。

振りかぶって殴れない時は、L字に引っ掛けて転がしたり、バイクなどのアシを壊したり………あ、真似をしてはいけませんよ!

とにかく私が一番使い慣れた武器なんです。


久しぶりの重さは、色々思い出してしまいますねえ。
軽く振ってみた時のこの風切音も懐かしいです。
いやぁ、年甲斐もなくテンション上がりますねぇ。

親方さんに許可をもらって、工房の裏手の広場で試し振りをさせてもらいました。
剣の試し斬り用の丸太を立て、その前に立ちます。
丸太の太さは18センチ程でしょうか。

私は一つ息を吐き、バッドのように構え、丸太の下部を振り抜きました。

ドゴォォォッ!!

大きな打撃音を立てて鉄パイプが丸太にめり込みます。

「ふむ、訛ってますねえ」
予想では半分近くまでイケルと思ったんですけど、丸太は3センチほど凹んだだけです。
これですと、骨が丈夫な人ならヒビが入るくらいしかダメージを与えられません。
ましてや大型の動物相手なら、跳ね返されるでしょうね。

いや、でも、相手が人じゃなくて、魔物なら、足を狙わなくても、頭からイッていいのでは?
フハッ、これは素振りでもして腕力付けないといけませんねぇ……。

「……い、…おい!」
「え?…あ、チャック、どうしました?」
自分の世界に入り込んでいたようですね、チャックが隣に来ていたのにも気付きませんでした。

「どうしましたじゃないよ、あんた怖いよ!
虚ろな目してるし、笑ったりしてるし」
「それはすみません、ちょっと懐かしさに浸ってました」
「そんな見たことない武器振り回してたのが懐かしいって、あんたどんな戦いの場に居たんだよ」
「いや、そんな戦いの場になんて居ませんでしたよ。
若い頃にちょっとした縄張り争い?みたいな事をしてただけですよ」
あの頃の武器を手にしたから、引きずられてしまったようですね。
危ない危ない。

「………………………いつものあんたに戻ったね」
よし、と頷くチャックに、すみませんと一言謝って頭をなでました。
「親方さんも注文通りに作っていただき、本当にありがとうございました」
「…お…おぉう……」
頭を下げた私に、なぜか一歩引いています。
私は、そのまま担いで歩くのもなんなんで、マジックバックに鉄パイプをしまい、支払いを済ませ工房を出ました。

満足できる武器を手に、私はシナトラ達が特訓しているだろう町外れに向かいます。
名前をつけることによって魂が寄り添っているからでしょうか、彼らの居る方向が分かります。
ちなみにブルースは、ずいぶん遠くに居るようですね。
何をしているのでしょうか。





ーーーーー〈切り取り線〉ーーーーー

昭和のヤンキーと言えば鉄パイプ
だと思うのは私だけかな?
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