172 / 206
三章 町をつくる様です
172 進めダンジョン 2
しおりを挟む「いや、アレな、非常にレアな薬品を作る材料になるんだ。
だから出来ればギルドが対策して採取したいって話なんだよ」
「んな事知るか!
激ムカつくんやけん、んなクソ植物燃やし尽くしちゃる!」
「ジョニーよ、落ち着け。
こんな洞窟の中で火魔法など使うと、我ら全滅するぞ」
………そうですね、こんな狭い空間で火魔法など使うと、酸欠になってしまいますね。
何だか変な言葉遣いとかボソボソ言っているチャックやシナトラを危険に晒すところでした。
ブルースの言葉に少し頭が冷えました。
それでも想い出を汚されたようで頭にきているのには変わりありません。
ギルドの利益など私には関係ありませんから、風魔法で切り裂いてくれましょうか。
私が魔法を発動しょうとしているのに気付いたラルーセンさんが、再度止めてきます。
「いや、ホントに待って!」
彼が言うには、アレはシフルって万能薬や、リベルって蘇生薬を作る原料の一つで、大変貴重なモノらしいです。
この大陸には自生していなく、別の大陸から輸入しているそうなのですが、量も少ない上高額なので、薬自体も位持ちの方でさえ、おいそれと手が出せない程の値段になってしまうとか。
更に言うなら、コレは餌を吸収する時、獲物の魔素も吸収するので、この大きさまで育っていると言う事は、魔素の含有量も相当量あり、質の高い薬ができるとか。
「これだけ量が有れば薬も大量に作れるだろう。
そうすれば値段も安くなるし、一般人でも手が出せる様になるかもしれないだろ。
そうすれば助かる命も増えるんだ」
この世界には高度医療は有りません。
回復魔法が有っても、あればあくまで【回復】であり、本人の再生力を活性化させるものですから、全てが治るものではないです。
しかし万能薬なら、生きてさえいればどんな怪我であろうと、不治の病であろうとも治るそうなのです。
蘇生薬に関しては、死後直後なら生き返る事ができ、生き返らせて万能薬を飲ませれば、後遺症もなく元に戻ると。
なんと都合の良い話でしょう。
そんな都合の良い物が、前の世界にも有ったなら…。
そんな考えが浮かびましたけど、その二つが有れば、今度こそ何があっても妻と一緒に天寿をまっとうできそうですね。
「………わかりました、細切れにするのは辞めておきましょう」
私が拳を下ろすと、ラルーセンさんは、ほっと安堵の息をこぼしました。
「しかし危なく無いのか?」
風魔法で匂いを散らしつつ、ブルースが尋ねます。
「調査の時は風魔法の使い手が居なかったから、強力な風魔法の使い手を手配中なんだ。
風魔法である程度の大きさに切り刻んで、時間を止められるマジックバッグを集めて、持ち帰る事になってる。
時間を止められるマジックバッグがなかなか集まらなくてな」
一般的に出回っているマジックバッグは、容量はピンキリですけど、時間を止める機能が付いている物は稀なのだそうです。
それなら………
「それなら我らを頼るが良い。
風魔法なら我とジョニーが得意だし、状態保全のマジックバッグは我ら皆持っておる」
更に言うならアイテムボックスも有りますしね。
「え?それは好都合。
だが俺が勝手に判断して良いかわからんなぁ」
まあ、職員になったばかりですから、勝手に物事を判断できないでしょう。
「餌も獲り尽くしてるようだし、グズグスしておると枯れるぞ。
それに我らのやる事に異議を唱える者もおらぬだろう。
良からぬ事をする訳でなし、お前は黙って見ておれば良い」
まあ確かにマリリンさん達なら、越権行為だなど文句を言う事は無いと思えます。
「それにコイツもストレス発散になるだろう」
ああ、そうですね、確かにこの苛立ちをぶつけて、切り裂いてやりたいですね。
でも…………。
「……………………そうだな、枯れさすよりはマシか。
ならあまり粉々にしない程度でよろしく」
考えて了承したラルーセンさん。
ブルースは私の背中をバンと叩き、耳元で囁きました。
「ああ言っておるが、お前の気の済む様にすれば良い。
なに、やってしまえばこちらのもんよ」
にゃりと悪い顔で笑うブルースは、私の為に言ってくれているのですね。
それでも私は………。
「確かに細切れに切り刻んでやりたいですけど、大層重要な薬作りの材料の一つなのでしょう?
それなら細切れにして取りこぼすのは勿体無い事ですよね」
ですから…と私は魔法を発動します。
「瞬間冷凍」
イメージは冷蔵庫のCMなどで、冷凍庫で魚が瞬時に凍るイメージ映像。
生魚が早送りで凍りつく演出。
一気に凍らせるなら、液体窒素でも良いかと思いましたけど、液体窒素で凍らせた物を思い浮かべた時、バナナで釘が打てるし、薔薇の花は砕けて粉々になる映像です。
うっかり落として粉々になるのも困りますから、冷凍庫のイメージにしておきました。
「アイテムボックスに仕舞って、必要な分量を解凍して渡せば良いですよね」
言いながら完全に凍って動かなくなった人喰い花を仕舞います。
とっとと視界から消したかったので……。
「アイテムボックス持ってたんだ」
とラルーセンさんに言われて、知られたのは不味かったかと思いましたけど、ブルースが、
「大丈夫、お前の非常識は皆知っておる」
などと言われてしまいました。
不本意です。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる