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四章 再会
195 グルグルうだうだしてしまいました
しおりを挟む「と言うわけで、妻を喚べる事になりました」
朝食の席で、皆に報告します。
「おお、思ったより早かったな」
ブルースが肩をバンバン叩きながら言います。
「そうですね、私ももう少しかかると思っていました」
「まあ、早いに越した事はないな」
「父ちゃんの奥さん?
なら母ちゃん?」
シナトラが首を傾げながら聞いてきます。
「そうですね、そう呼んであげると喜ぶと思いますよ」
横からチャックの突っ込みが入ります。
「いや、『母ちゃん』はどうなの?
せめて『母さん』じゃないの?」
「ではチャックは『母さん』と呼んで下さいね」
「ちょっ…そんないきなり……、そんなの会ってみないと………」
赤くなり焦った声で、小声でブツブツ言っています。
「良かったですね、再開できる事になって」
アインの言葉に頷きます。
「そうですよね、普通なら二度と会う事なんて出来ないですもんね。
『次に生まれ変わったら…』とかドラマとかで耳にしますけど、生まれ変わったら、その生まれ変わりの人の人生で、『後藤 丈二』の人生では無いですから。
私は私として、妻と再び会う事が出来るのが、凄く嬉しいです」
アインはニッコリ微笑み、頷いてくれました。
「ジョニー頑張ったもんね、町も住みやすい場所になってると思うし、住民の皆も穏やかに暮らしているから、奥さんが見たら喜んでくれるんじゃ無いの」
「ありがとうコニー。
きっと喜んでくれると思います」
皆、笑顔で祝福してくれます。
勿論私も笑顔が絶えません。
ああ、本当に嬉しいですね。
「で、その奥さんはどんな女性なのだ?」
「あ、僕も気になる」
「そうだね、俺は詳しい具体的な事、聞いた事無いから教えて欲しいな」
ブルースとシナトラとコニーが尋ねてきました。
「妻ですか?
名前は百合江と言います。
お金持ちのお嬢様でしたけど、家族と反りが合わなくて、私と駆け落ちしました。
苦労を沢山かけました。
貧乏で、お腹いっぱい食べる事ができない時期もありました。
定職に就いてからも、慣れない仕事で八つ当たりした事もありましたのに、それでも私についてきてくれました。
実家にいる頃は、料理も掃除もした事がなく、働いた事もないのに、本を読んだり、近所の人に聞いたりしながら、美味しい食事を用意してくれました。
家を買ってからは、庭に花を植えるだけでなく、ちょっとした家庭菜園を作ったり、古着をリメイクしたり。
贅沢と言えば、年に一度の旅行くらいでしたね………。
苦労ばかりかけていました……」
妻を思い出しながら話していて、ふと思ったのですけど…、
私は妻に会いたいですけど、果たして妻は私と再会したいでしょうか?
もしかして、亡くなる事によって、私から解放された、などと思っていたらどうしましょう。
浮かれた気分が萎んでしまいました。
その不安を皆に言うと、
「気にしすぎなんじゃない?
ずーっと仲良く暮らしてたんでしょ?」
と、チャックが聞いてきます。
仲は良かったです。
喧嘩をした事もありません。
…私が八つ当たりしても、話を聞いてくれている間に落ち着いて、そこから喧嘩になるなんて事もなかったです。
「万が一再会したくなかったと言われたら、再び会えて良かったと思われる様にすれば良いのではないですか?」
「そう…ですね、アインの言う通りすね」
「悩んでも仕方なくない?
その為に頑張ってきたんでしょ。
ここで辞めたら、アイデンティティ崩壊でしょ」
「コニー……そうですよね、ここまで頑張ってきたのは、再び会う為です。
ここで辞めたら、今までの行いを否定する事になりますよね」
『ちょっと大袈裟過ぎない?』と言うシナトラの言葉は聞かなかった事にします。
チャックに蹴りを入れられていますけど、それも気付かなかったと言う事で。
「お前らしくないな、グダグダ悩まずに、やると言った事はやれば良い。
結果は後でしか分からぬのだから、まずはやれ」
ブルースが私の背中をバン!と叩きます。
「はは…グダグダ言ってすみません。
誰かに背中を押して欲しかっただけでしょうね。
なんだかんだ言っても、会いたいのですから、再会したら後悔させない様に、幸せにしてみせます」
拳を握って宣言すると、アインに首を振られました。
「幸せにするのではなく、皆で幸せにならないといけませんよ」
「だね、俺達もまとめて皆で幸せにならないと」
「僕は今でも幸せだよ!」
「シナトラは単純だからね。
……まあ、オレも幸せだけど」
「背中ならいくらでも押してやる。
皆で幸せに過ごそう」
皆の笑顔が嬉しいです。
視界が潤んでしまうのは仕方ないと思います。
妻を喚んで、皆で幸せに暮らす…最初からそのつもりだったのですから、初心を忘れずに、皆で幸せになりましょう。
私は妻を喚ぶ覚悟を決めました。
そこでふと気付いた事が………
今の家族構成、男性6人、両性1人、女性0……。
しかも半数は見た目成人男性って、倫理的にどうなんでしょう……。
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