【完結】アラサーの俺がヒロインの友達に転生?ナイワー

七地潮

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領地へ戻った

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パーティーも終わったことだし、雪がひどくなる前に領地へと向かうこととなった。
片道十二日の長旅だ。

交流のある土地では、町長や領主の館に世話になったりもするけれど、殆どが街の宿での宿泊となる。

貴族用の宿のない街もあるけれど、うちの両親は気にしないみたいだ。
夫婦が同じ部屋なら、どんな所でも問題がないそうだけど、プライドの高い貴族なら、領主の館ないし、町長や村長の家に泊まるのだろう。

でも我が家の考えでは、『宿に泊まりその地に金を落とすのも、立場あるものの仕事だ』と言う、好ましい考え方だ。

しかし問題もあって、移動するのは家族だけではない。
家族それぞれのお付きとメイド長、執事と護衛などもいるから結構な人数の移動となっている。

なので小さな町だと、貸し切っても一軒の宿では部屋が足りず、数件に分かれたり、お金を払って一般家庭に留まらせてもらう事もある。
まぁ一般家庭に泊まるのは、流石に雇われ人に限るけどね。

領地へと戻るルートはいくつかあって、北廻りのルートは途中雪で足止めされることもある。
このルートだと、片道十日で着く。

一番距離の短い直進ルートは、途中の山を越える際に、魔物に出くわす恐れもあるし、山越えをするから、日数的には北のルートと同じく十日の日程となる。

少し遠回りになるけど南周りのルートが一番安全なので、冬の帰省は南ルートを使うことが多い。
このルートだと、十二日で到着だ。

国の南側の隣国は海に面しているので、南では魚介類が美味しいんだよ、これが。
王都までは、魔法で凍らせて流通しているけれど、近場なら凍らさずに冷やして…チルド便的なもので、朝とれた魚がその日のうちに食卓へ。

やっぱり凍らせるより、チルドの方が美味しいよね。
王都ではメイン料理は肉が多いから、魚料理は楽しみなんだ~。


雨がぱらつく事もあったけど、美味しい海鮮を食べながら、予定通りに領地へ到着した。
毎年通るルートなので、顔見知りも居て歓迎されたり、美味しい魚介類の新作料理を食べたりで、なかなか充実した往路だったよ。


*****


屋敷に着くと、執事が出迎えてくれて、サンルームへ案内された。
今日は爺様と婆様はサンルームに居るようだ。

「キャスティーヌ!良く来たな。
暫く見ないうちに可愛さが増したのではないのか?」
爺様が掛けていたソファーから立ち上がり、ハグをする。

「お爺様、ただいま戻りました。
お元気そうで何よりです」
「アルバートもますます美しくなって、お前は本当にフレデリカにそっくりだな」
フレデリカとは母の名だ。
因みに父の名はジェームス。

「お爺様……僕に美しいと言う言葉は褒め言葉になっていないと思うのですが」
少し不満顔で兄が言うと、兄をハグしながら笑って言う。

「何を言う、美しさに性別などあるものか」
「そうだな、可愛いキャシーに美しいアル、そして最愛のフレデリカ。
素晴らしい家族に囲まれた私は、本当に幸せ者だ」
「ジェームスばかりズルイではないか。
私が王都での仕事をするから、お前は領地の管理をしなさい」
「父さん…私が領地へ戻るなら、当然家族一緒にですよ。
城での面倒な仕事を父さんが代わってくれるのなら、私は喜んで一家で田舎に引っ込みますよ」

そうすれば子供たちに悪い虫も付かないし、と父の呟きが聞こえて来た。
うちの両親と言うか一族は、本当に身内大好き人間ばかりだよな。

「貴方達、そんな所に立ち止まっていないで、腰を落ち着けたらどうなの。
メイド達がお茶を出せないでいるわよ」
婆様の言葉にすまんと誤った父と爺様に続いて、俺たちもソファーに座る。


メイド達がそれぞれにお茶をサーブして控えると、母と婆様も挨拶を交わし、リズヴァーンも挨拶をする。

「今日はお世話になります」
「リズヴァーンも元気そうで何よりだな。
明日は昼を食べてから出立するのだろ」
「そうですね、馬ですと日が暮れる前には着けますので」

今夜はうちに泊まり体を休め、明日馬で自分の従者と護衛二人の四人で、家に戻る事となる。
それが毎度のパターンだ。

「来週にはトーマソンも挨拶に来る事だし、そのままここにいても良いのだぞ」

トーマソンとはリズヴァーンの父親の名前だ。

「ありがとうございます。
しかしご迷惑にもなりますし…」
「お爺様、リズだって久しぶりに家の者達と会いたいでしょう。
無理を言うのはいかがなものでしょうか」
断り辛そうな所に兄のフォローが入る。

「その方がアルバートも楽しいと思ったのだが」
なんと、親切心かと思いきや、兄のためかよ!

「……お爺様…………」

残念な老人を見る目を向けられて、爺様はわざとらしく咳払いをする。
「それはそうと、第二王子が婚約したそうだな。
確かキャスティーヌと同じ年だったかな?」
話を逸らしたな、まぁ乗ってあげよう。

「そうですわ、王子もそのお相手のオルグストー侯爵令嬢ともクラスメイトです」
「ほう、そのご令嬢はどう言った方なのかい?」
「スカーレット様とおっしゃって、成績優秀で、感情的ではなく、実直な方だと思います」

俺が言うと、爺様は意地悪く
「それはそう見せているだけなのではないのかな」
と言ってくる。

「そうですね…物事をはっきりと仰る方なので、少しキツく感じられていましたけれど、先日ゆっくりお話しする機会がございまして、先入観による私の思い違いだと気付きましたわ。
実は彼女と殿下とのお付き合いのきっかけが、私がクラスの方に困った状態に落とされ掛けた所、彼女が助けてくださった事なのです。
複数の女性に毅然と立ち向かい、私を助けてくださった姿は、殿下でなくてもときめきますわ」

実際ときめいたし、パーティーでの態度も好感度二重丸だ。

「「「クラスメイトに困った事をされた……」」」
おっと、兄と父と爺様の声が被った。

今の話で重要なのはそこじゃないだろ?
本っっっ当に身内大好き人間だよね、ここの一族は。








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