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番外 クリスティーナ 3
しおりを挟む学園へ出てきた彼女はとても元気になっていました。
もしかして何か吹っ切れたのでしょうか?
笑顔が増え、視線を合わせて会話をするようになりました。
少しばかり違和感はありましたけれど、元気になられたのですから問題はないと思われます。
王子に注意されても、クラスメイトに囲まれても、俯くことはなく、平然と見ているのは引っかかります。
それでも、以前の俯きがちな彼女より、今の方が断然いいですので、気づかないふりをしてしまいました。
冬休みの間に好意を寄せていた方と儀式をされたそうなのですが、少しも変化はありません。
学園祭では、気の小さな彼女が、大勢の前で詩の朗読をされましたし、お兄様への誕生日プレゼントのために奔走されていました。
違和感は増すばかりです。
そして決定的におかしいと思ったのが、彼女の誕生日にお呼ばれした時に、アスデモス様との婚約が決まったと聞いた時です。
あの、キャスティーヌに興味のなさそうなアスデモス様が、婚約を了承したのにも驚きましたけど、何よりも、キャスティーヌの態度がおかしいのです。
儀式の後は照れていて隠しているのかとも思いましたけれど、どうやら違うようなのです。
キャスティーヌの表情は、はとても好意を寄せていた方と婚約をした顔ではありません。
普通なら「嬉しい」「恥ずかしい」「誇らしい」などと言うプラスの感情が現れるのではないのでしょうか?
なのに彼女の表情は「戸惑い」「諦め」など、負の感情とまでは言いませんけれど、あまり良い感情には見えないのです。
嫌っているとか、嫌がっているとかではなく、ただ何と言いますか……庶民の方が仰る「まあいいか」と言う感じですかね。
好きなら喜ぶでしょうし、嫌いになったのなら嫌がるでしょうに、どことなく他人事のような感じなのです。
………キャスティーヌはこんな方でしたでしょうか?
いえ、去年の秋からの彼女はやはりどこか変です。
まるでキャスティーヌの中に知らない方がいるような感じです。
そこで私の頭に浮かんだのが、書物で読んだ【悪魔付き】ですが、何かおかしな行動をとるわけでもないですし、性格が悪くなったと言うわけでもありません。
どちらかと言うと、社交的になったのですから、この考えは早々に否定しました。
次に浮かんだのが、【妖精の悪戯】です。
でもあれは生まれたばかりの赤子を取り替えるのですから、成人も済んでいるキャスティーヌには当てはまりません。
では、何か別のものが取り憑いているのでしょうか?
………なぜでしょう、其れが【アタリ】のような気がします。
本人が変わりたいと思ったのでしたら、徐々に変化することはあるでしょうけれど、ある日いきなり性格が変わることは無いと思います。
よくよく思い出すと、たまに言葉遣いもおかしくなります。
やはりキャスティーヌは何かに取り憑かれているのでしょうか…。
そう思うといてもたってもいられず、私は彼女と話をしようと、家へ招待しました。
泊まっていただき、じっくりと真相を暴こうと思います。
そしてもし悪いものに取り憑かれているのなら、お祓いをしなければなりません。
私は一学年上にいらっしゃる神官の跡継ぎの先輩に、彼女のことは伏せて、取り憑かれている方がいた場合、どのように対処すればいいのがを教えて頂き、もし、本当に取り憑かれていた時には、お祓いをしていただけるように手配しました。
準備は万端です。
何があっても可愛いキャスティーヌは私が守ってあげますわ。
そして、約束の時間丁度に、サリフォル家の馬車が到着しました。
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