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フランチャイズ
しおりを挟む家に帰ってお茶会のことを家族に話した。
ヤスハルの料理を食べたことのある…と言うか、家まで食べに行ってるくらい気に入ってる兄は、コウエンジの話に興味があるみたいだ。
「国では見たことのない菓子は、確かに興味を惹かれるだろうね。
小物なども見せてもらったことあるけれど、独特の美しさが有ったよ」
お土産で持たせてくれた干菓子を皆で食べながら、兄は言う。
「本当、ケーキの甘さと違って不思議な味ね」
「見た目も女性受けするのではないのかい?」
母と父にも好印象だ。
「クリームの苦手な方でも、このお菓子は勧められるかもしれませんね」
ほうじ茶飲みながら俺が言うと、父に言われた。
「そう言えばキャシーはよくこのお茶の淹れかたを知ってたね」
「専用のポットを使って時間さえ間違えなければ、簡単に淹れることができますの。
因みに冷やしても美味しいそうですよ」
「ほう」
「それに、油っこい食事に合うお茶もあるそうです」
食事の時に飲むのは、大人はワイン、俺たちは水なんだけど、結構バターやクリーム、オイルなどを使った料理が多いから、前から欲しかったんだよね、麦茶。
烏龍茶は慣れない人にはクセが強いかもだけど、麦茶はカフェインレスで、赤ちゃんでも飲める優しいお茶だから、和茶初心者にも受け入れやすいよね。
あー、おみやでもらえて良かった。
「そういった商品を取り扱う店か……、是非にでも僕がやってみたいけど、無理ですよね?」
兄が父に視線を向けると、大きく頷かれていた。
「アルには伯爵家を継いでもらわなければならないからな。
リズヴァーンが婿に来てくれるなら考えてもいいけど」
父がまた何か言い出した。
「リズはリズで辺境伯を継がなければならないでしょう」
兄の言う通りだろ。
「婿入りしてくれたら、キャシーがずっと手元に居るのに」
「あなた」
「………」
母の一言で逸れた話が終わりました。
「どなたか店をやりたいって人がいたら、出資してみるのも面白いかもしれませんわね」
「それは面白そうですね。
王都だけでなく、他の場所にも出店して、経営は任せてしまえば、店ごとに特色も出るでしょうし」
「ほう、自分で店をやるのではなく、取扱品も売り方も任せるのか。
それは個性が出て面白くなりそうだな」
んー、オーナーになって、それぞれの店は店長の好きにして良いよ、ただ仕入れて売る品物は、こちらで準備するから、その中から選んでね。
って感じか?
フランチャイズっぽい感じ?
この世界にはないよね。
母の言葉から発想を得たとしても、賢いよね、俺の家族。
三人が色々話し合っているのを聞きながら、一人まったりお茶を楽しんでたよ。
あ~、アラレが欲しい。
「と言う話になりましたの」
休憩時間に、クリスティーナとスカーレットに、家での話をした。
「面白そうですけれど、ご自分でお店を出された方が早くないですか?」
スカーレットが言うけど、やっぱり後継が気軽に他の職業に就けないよ。
父みたいに国の行政機関とかならまだしも、商人になるには伯爵家の後継って立場は無理でしょ。
以前言っていた2年間の期間限定で騎士団に入るのとは訳が違う。
お店を出すまでに時間もかかるし、それをすぐ閉めるわけにもいかない。
それならオーナーになって、資金と口だけ出すか、諦めるしかないでしょ。
領地経営は、祖父の後を父が継ぐと言う予定だったのだけど、内務省の仕事から父が手を引けず、そのまま兄が継ぐことになったんだって。
なんで父は後を継ぐために仕事を辞められないのかは教えてもらえなかったけど。
なんだかんだ有って、他のことをやる時間はない、でも上手くいけば稼げるし、他国との顔つなぎにもなる、ゆくゆくは領地でも出店すれば、王都までは遠くても、うちの領地に近い領地の人達が、買い物目当てで領地を訪れることも増える、そうすればまた色々メリットもある。
……とかなんとか言ってたけど、内政チートに関心の無い俺にはわからんですわ。
「ねぇキャシー、その話詳しく伺いたいですわ。
アルバート様に一度お会いする事はできますか?」
「え?ええ、兄に尋ねる事はできますけれど、まだふわっとした案であって、やると決めたわけでは無いのですけど」
「決めてしまってからでは遅いでしょ。
話をお聞きするだけですから」
「わかりました、兄に聞いておきます」
勢いに押されて了承したけど、クリスティーナ、あんたまだ学生だよ?
成人したからって17歳だよ?
何より子爵令嬢だよ?
店長やるつもりなの?
どうすれば良いかとスカーレットを見たけど、微笑みフェイスは何を考えてりるのかわかりません。
え?マジなの?
応援ありがとうございます!
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