1 / 8
暗室
しおりを挟む高校では写真部でした。
昭和時代の話です、カメラは勿論アナログで、私などは○ルンですでクラブ活動していました。
写真を現像するには、フィルムを現像液などに漬けたり、印画紙に焼きつけたりするのですが、その作業を行う場所を【暗室】と言います。
暗室、光の入り込まない密室で、赤い専用ランプを付けて作業をします。
部室は六畳ほどの暗室があり、廊下側の入り口から入って向かい側がベランダ、右手側が部室、左手側が作業机、真ん中にはテーブルが一つありました。
高校一年のある日、部員の一人が
「私、霊感があるんだ。
心霊写真撮りたいなら撮らせてあげる」
と言い出しました。
興味津々の部員やクラスメイト、七、八人が集まり、暗室に折り畳み椅子を持ち込み、そこで怪談を始めます。
【そう言った話をしていると霊が集まる】
と言われて、皆でいろんな話をしていたのですが、突然その子が
「手を上げてみて」
と言い出したので、皆椅子に座ったまま手を上に……
勿論私も手を上げたのですけど、何も無い頭上の空間に、何かが有るのか、手を前後に動かすと、ボヨンと跳ね返るのです。
何か柔らかい…豆腐を手で押したような感覚でした。
騒つく暗室内、その子がまた言います。
「今なら心霊写真撮れるよ」
カメラを持っていた部員三人と、簡易カメラの私もシャッターを押します。
……押します
……………押すのですが、シャッターが下りません…………
「!!!後ろ!!!!!」
部室へ続く扉を背に座っていた子が叫び、皆の視線が作業机へ向くと、作業机のしたの棚に置いてあるパッドが緑色に光っていました。
赤いランプの暗室なのに、綺麗な緑色の光………
「「「「きやーーーーー!!!」」」」
皆大慌てでカーテンを開け、ベランダへ出る者、廊下へ出る者、隣の部室に逃げる者、パニックです。
暗室から出ると、カメラのシャッターは普通に動きました。
決してカメラの故障ではありません。
赤いランプの中で光っていたパッドは白い塗装の金属製です。
一人なら勘違いや見間違いで済ませられますけど、皆がシャッターの下りない現場、緑の光を見たのです。
あれは一体なんなのでしょう。
そして、私たちは何を触ったのでしょう………
その後、誰もその話をすることなく、卒業までお互いに距離を置くようになりました。
顔も名前も覚えていないあの霊感があると言っていた子は、今はどうしているのでしょう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる