槍使いのドラゴンテイマー

こげ丸

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Ⅱ ~勇者が暴走したので邪竜で蹴散らしておこうと思う~

【第27話:良く見てみるといい】

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 ~陰謀のバラム視点~

「貴様!! こんな事してただで済むと思ってるのか!!」

 元魔王軍6魔将の一人、陰謀のバラムともあろう俺が油断したぜ。

 の持ってきた、穢れた勇者どもを大幅に強化するとか言う呪具を使った瞬間、俺の魔力を全て奪われ、未だに魔力が回復する様子がねぇ……。
 そのせいか身体も一切動かす事ができねぇとは情けねぇぜ。

 俺の身体から全ての魔力が吸い取られたと思った瞬間、逃げ出したはずの二人の穢れた勇者が現れ、水晶のような呪具を使って俺になにかをしやがった。

「まぁそう言うな。あの者どもを召喚してくれたお前には感謝しておるのだ。それに時間稼ぎに向かわせた勇者も貴様のお陰で大幅なパワーアップが出来たのだからな」

 しかし、本当にこいつの考えている事が全然わからねぇ。
 支配の魔言が効かないどころか、今ではオレを生贄にして何かをしようと企んでやがる。
 何とか逃げ出そうと思っているが、さっきから身体がピクリとも動かねぇから、正直もうどうしようもねぇ。

 それにしても、ずいぶん長く生きてきた俺だが、こいつの強さがさっぱりわからない。
 今までその強さがわからなかったのは魔王てとらぽっど様ぐらいなのだが、こいつは強いのか弱いのかすらわからねぇ。

 はかりごとや調査、分析、それに暗殺といったことには自信があったのだが、こうまで何もわからず、こいつの手のひらで踊らされていると、ほんとに笑えてくるぜ。

 笑えてくるが……やっぱムカつくぜ!

「何が感謝だ! この男女おとこおんなが! 気持ちわりぃんだよ!!」

 最初からコイツの事は得体の知れない奴だと思っていた。
 だが、長く接するうちに、ところどころに女みてぇな仕草や言葉遣いが混ざり、どうにも得体の知れなさとは別の違和感のようなものを感じるようになった。

 まぁ魔族の俺からすると人族の男と女はすげぇわかりにくいんだが、たぶんそれを抜きにしてもこいつは何かちぐはぐな感じがしたんだ。

「ぬわんですとぉぉぉ!!?? あんたなんかに何がわかるんだ! これでも頑張って……っぽく振舞ってるんだから!!」

 何となくムカつくので軽く言っただけの言葉だったんだが、こいつ気にしてたのか。

「ハッ! こいつは気分が良いぜ。気にしてんのかよ。だっせぇぐがぁぼぁ!?」

 思いっきり虚仮にしてやろうと思ったら、いつの間にか奴の手から放たれた衝撃波に、意識を刈り取られそうになった。

「くっ……私としたことが取り乱したようだ。つい壊して殺してしまう所だったよ。すまないな」

 微塵もすまなそうとは思ってねぇつらで、普通の魔族なら即死しそうな衝撃波を……。

「けっ! 何がすまないな……だ!! どうせ殺すきだろが!!」

 痛みを我慢しながら言い返したその時、俺は何かがおかしい事に気付いた。

「なにを馬鹿な事を言っているのだ? そんな勿体ない事はしないぞ? ん? なんだ? ようやく異変に気付いたのかな?」

 ん? おかしい……あれだけの衝撃波を喰らったのに、痛みが……ない!?

「あれだけの衝撃だったのに……な、何をした!? 俺の身体に何をしやがった!?」

 あの衝撃の強さからすると、いくら俺でも内臓の一つや二つ破裂させられてもおかしくない威力だったはずだ。
 それが、驚きでうめき声は出ちまったが、痛み一つないとはどういう事だ……。

「なんだ? まだ気付かないのか? 殺すも何も……君はもう、死んでいるじゃないか」

 一瞬こいつの言っている意味がわからなかった。

「な!? ど、どういう事……だ?」

 俺の中で無意識化で必死に否定していたものが、無理やり認識させられていく。

「君は魔力を吸い取られたと思っているようだが、吸い取ったのは魔力じゃない」

「ま、魔力じゃないんなら……何を吸い取ったって言うんだ……」

 そして、奴の顔が歪に笑みを浮かべ、その口から聞きたくない言葉が告げられた。

「吸い取ったのは……君の命だよ。いや、魂と言った方が良いかな」

 その瞬間、俺の頭の中が白に染まった。
 それでも何とか強がって、

「ば、馬鹿な……じゃぁ、今の俺は何だって言うんだよ……?」

 そう言って、その事に縋った。

「そうだ……死んでるはずがねぇ! 死んでるなら今の俺は何だって言うんだ!?」

 そして、俺がどうにか身体を動かそうと藻掻いていると、

「固い頭ですねぇ。ほら。それなら鏡で良く見てみるといい」

 奴がそう言って、無詠唱で俺の目の前に、大きな氷の鏡を出現させやがった。

「鏡が何だって言うん……だ」

 しかし、そこに映っていたのは……、

「どうだい? ゴーレムの核になった気分は?」

 禍々しい漆黒の宝石を胸に埋め込んだ、巨大なゴーレムの姿だった。
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