微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸

文字の大きさ
21 / 54

【第21話:殲滅】

しおりを挟む
 オレたち二人が門から集落の中心部へと向かって走っていくと、何やら騒いでいるゴブリンを見つけた。

「三匹いるわ! まだ気付いていないし、このまま行きましょ!」

「わかった! 離れている一匹はオレが受け持つ!」

 二人同時に駆け出し、半分ほどの距離まで詰めた所で、ゴブリンたちはようやくオレたちの存在に気付いた。だが、もう遅い!

 オレが受け持つゴブリンが慌てて腰の剣を引き抜いたが、出来たのはそこまでだ。

「はぁ!!」

 気合いと共に振り下ろしたオレの剣が、ゴブリンを一刀のもとに斬り伏せた。
 力任せに振り下ろたした一撃だが、身体能力の上がったオレから繰り出された一撃はゴブリンが剣を構える隙すらも与えない必殺の一撃と化した。

 そしてそれは、フィアも当然の如く同じで……。
 オレが一匹倒すのと同じ短い時間で、二匹のゴブリンを倒していた。

「次々行くぞ!」

 そこからオレたちは、ゴブリンが状況を把握して反撃に出る前に、出会ったゴブリンを片っ端から倒していった。

 道中でも思ったが、バフを受けたフィアの強さは桁違いだ。
 彼女が前に言ったように、バフを受けた者の実力が高ければ高いほど、何倍もの強さに化けるのかもしれない。

 冒険者ギルドの情報通り、ゴブリンの数が三〇匹ほどなら、もう半数を割っているはずだ。
 道中でも倒してきているので、残りはもう一〇匹もいないかもしれない。

 そう思っていたのだが……。

「もう一八匹倒したわ。この調子で……」

 この調子でいきましょ! おそらくそう続けようとしたフィアの言葉は、別の物へと置き換えられた。

「……な、何よこれ……なんでゴブリンがこんなに死んでいるの!?」

 そこにあったのは、ゴブリンだったものたちの残骸だった。

 ◆

 その後、集落を見て回ったが、もうゴブリンの姿は無かった。
 ゴブリンの死体の数、道中で倒した数を入れれば、その数はもう三〇匹を超えているため、この「ゴブリンの集落殲滅依頼」そのものは、完了した事になるだろう。

 だけど、それを素直に喜べるような状況では無かった。
 なにせ半数近いゴブリンが、オレたちの手ではなく、別のナニカの手によって倒されていたのだから。

「ロロア~! 無事で良かったわ……」

 後方で待機していたロロアも今は合流し、一旦集落の中に連れてきたのだが、フィアもこのような状況で心配だったのだろう。
 オレがロロアを迎えに行って連れて帰ってくると、駆け寄って抱きしめていた。

「もう! お姉ちゃん、痛いよぉ」

「ご、ごめん! でも、心配だったのよ!」

「オレもこんな状況だったからな。心配したよ」

 先にロロアを迎えにいこうと言ったのだが、問題が起こったわけでもないから、作戦通り殲滅を確認してからにしようと言ったのはフィアだ。

 だが、内心は心配で心配で仕方なかったはずだ。
 次からは、たとえ作戦が狂おうとも、仲間の安全を優先するように話し合っておかないとだな。

「お姉ちゃん、わかったから。フォーレストさんもありがとうございます。でも……この状況は早く街に戻ってギルドに報告した方が良いかもしれませんね」

「そうだな。最後に、何か手がかりがないか集落を一回りしてから、すぐに王都へと戻ろう」

 王都から近い場所だとは言え、そろそろ帰らないと王都に着く頃には日が暮れてしまう。
 門が閉まるまでには十分間に合うだろうが、少し急いだほうが良いかもしれない。

「はぁ……あんまりじっくりと見たいモノじゃないけど、やっぱり調べないとダメよね……」

 無残なゴブリンの死体は、何かとても大きな力によって破壊されていた。
 中には原型がほとんど残っていないものも含まれており、あまりじっくりと観察して気分の良いものではない。

「仕方ない。オレが死体は調べておくから、周りを見張っていてくれ」

「え? でも……」

 フィアは頑張って手伝おうとしていたが、ロロアに至ってはもう顔が青ざめてきている。ここで二人に無理をさせる意味もないし、ここはオレがちょっと我慢すれば済む話だ。

「いいから。フィアはロロアについててやってくれ」

「ありがと……その、正直ちょっとこういうの苦手だから助かるわ」

「気にするな。あっ、ロロア。そろそろバフが切れる頃だから回復魔法を頼む」

「はい! 範囲化、軽治癒ライトヒール!」

 全能力向上フルブーストは、使える補助魔法使いも少ないと聞くし、このバフでの1.5倍の使用は、元々のオレの奥の手だった。
 だが、回復魔法の使い手がいなければ、制限時間が付く諸刃の剣だったので、中々使いどころが難しかった。

 本当は『猛き大斧』にいた時でも日常的に使えたはずなのだが、全能力向上フルブースト1.5倍はリスクを伴う強化なので、扱いに注意が必要だ。

 だけどバクスはオレの話を全く聞いてくれなかったので、結局今までは、身体能力向上フィジカルブーストの1.2倍しか使ってこなかった。

 お前はそれだけ使ってろと言われたのが大きいが……。

 おっと、今はもう、あいつらの事はどうでもいいな。

「ありがとう。ロロアのお陰で心置きなく1.5倍が使えるのは助かるよ」

 ロロアにお礼を言って、気の滅入る作業をさっさと終わらせようとゴブリンの死体に近づいたその時だった。

「な、なに!? なんの咆哮!?」

 魔物のものと思われる咆哮が、響き渡ったのだった。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

パーティーの役立たずとして追放された魔力タンク、世界でただ一人の自動人形『ドール』使いになる

日之影ソラ
ファンタジー
「ラスト、今日でお前はクビだ」 冒険者パーティで魔力タンク兼雑用係をしていたラストは、ある日突然リーダーから追放を宣告されてしまった。追放の理由は戦闘で役に立たないから。戦闘中に『コネクト』スキルで仲間と繋がり、仲間たちに自信の魔力を分け与えていたのだが……。それしかやっていないことを責められ、戦える人間のほうがマシだと仲間たちから言い放たれてしまう。 一人になり途方にくれるラストだったが、そこへ行方不明だった冒険者の祖父から送り物が届いた。贈り物と一緒に入れられた手紙には一言。 「ラストよ。彼女たちはお前の力になってくれる。ドール使いとなり、使い熟してみせよ」 そう記され、大きな木箱の中に入っていたのは綺麗な少女だった。 これは無能と言われた一人の冒険者が、自動人形(ドール)と共に成り上がる物語。 7/25男性向けHOTランキング1位

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

お前を愛することはないと言われたので、姑をハニトラに引っ掛けて婚家を内側から崩壊させます

碧井 汐桜香
ファンタジー
「お前を愛することはない」 そんな夫と 「そうよ! あなたなんか息子にふさわしくない!」 そんな義母のいる伯爵家に嫁いだケリナ。 嫁を大切にしない?ならば、内部から崩壊させて見せましょう

金喰い虫ですって!? 婚約破棄&追放された用済み聖女は、実は妖精の愛し子でした ~田舎に帰って妖精さんたちと幸せに暮らします~

アトハ
ファンタジー
「貴様はもう用済みだ。『聖女』などという迷信に踊らされて大損だった。どこへでも行くが良い」  突然の宣告で、国外追放。国のため、必死で毎日祈りを捧げたのに、その仕打ちはあんまりでではありませんか!  魔法技術が進んだ今、妖精への祈りという不確かな力を行使する聖女は国にとっての『金喰い虫』とのことですが。 「これから大災厄が来るのにね~」 「ばかな国だね~。自ら聖女様を手放そうなんて~」  妖精の声が聞こえる私は、知っています。  この国には、間もなく前代未聞の災厄が訪れるということを。  もう国のことなんて知りません。  追放したのはそっちです!  故郷に戻ってゆっくりさせてもらいますからね! ※ 他の小説サイト様にも投稿しています

偽聖女の汚名を着せられ婚約破棄された元聖女ですが、『結界魔法』がことのほか便利なので魔獣の森でもふもふスローライフ始めます!

南田 此仁
恋愛
「システィーナ、今この場をもっておまえとの婚約を破棄する!」  パーティー会場で高らかに上がった声は、数瞬前まで婚約者だった王太子のもの。  王太子は続けて言う。  システィーナの妹こそが本物の聖女であり、システィーナは聖女を騙った罪人であると。  突然婚約者と聖女の肩書きを失ったシスティーナは、国外追放を言い渡されて故郷をも失うこととなった。  馬車も従者もなく、ただ一人自分を信じてついてきてくれた護衛騎士のダーナンとともに馬に乗って城を出る。  目指すは西の隣国。  八日間の旅を経て、国境の門を出た。しかし国外に出てもなお、見届け人たちは後をついてくる。  魔獣の森を迂回しようと進路を変えた瞬間。ついに彼らは剣を手に、こちらへと向かってきた。 「まずいな、このままじゃ追いつかれる……!」  多勢に無勢。  窮地のシスティーナは叫ぶ。 「魔獣の森に入って! 私の考えが正しければ、たぶん大丈夫だから!」 ■この三連休で完結します。14000文字程度の短編です。

【完結】転生の次は召喚ですか? 私は聖女なんかじゃありません。いい加減にして下さい!

金峯蓮華
恋愛
「聖女だ! 聖女様だ!」 「成功だ! 召喚は成功したぞ!」 聖女? 召喚? 何のことだ。私はスーパーで閉店時間の寸前に値引きした食料品を買おうとしていたのよ。 あっ、そうか、あの魔法陣……。 まさか私、召喚されたの? 突然、召喚され、見知らぬ世界に連れて行かれたようだ。 まったく。転生の次は召喚? 私には前世の記憶があった。どこかの国の公爵令嬢だった記憶だ。 また、同じような世界に来たとは。 聖女として召喚されたからには、何か仕事があるのだろう。さっさと済ませ早く元の世界に戻りたい。 こんな理不尽許してなるものか。 私は元の世界に帰るぞ!! さて、愛梨は元の世界に戻れるのでしょうか? 作者独自のファンタジーの世界が舞台です。 緩いご都合主義なお話です。 誤字脱字多いです。 大きな気持ちで教えてもらえると助かります。 R15は保険です。

普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜

神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。 聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。 イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。 いわゆる地味子だ。 彼女の能力も地味だった。 使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。 唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。 そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。 ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。 しかし、彼女は目立たない実力者だった。 素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。 司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。 難しい相談でも難なくこなす知識と教養。 全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。 彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。 彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。 地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。 全部で5万字。 カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。 HOTランキング女性向け1位。 日間ファンタジーランキング1位。 日間完結ランキング1位。 応援してくれた、みなさんのおかげです。 ありがとうございます。とても嬉しいです!

処理中です...