81 / 107
第一章 後半
第81話:破壊と不死の王
しおりを挟む
結局ヴィーヴルに押し切られ、彼女はオレについてくることになってしまった。
集落に戻って貰って説得してくれるって話はどこいった……。
そもそも自分たちの姫様を出会ったばかりのオレに預けるとか絶対駄目だろうって思うのだが、ゼクトたちは竜人の女が惚れたのなら仕方ないとか、掟が……とか結局ぜんぜん説得に協力すらしてくれなかった。
ジルにも一方的に主従契約を破棄できないかと念話で相談したのだが……。
≪一方的に契約を破棄する方法を我が知っていたとして、それを主に教えると思うか?≫
と言われて諦めた。
そのつもりがないので忘れていたが、ジルはオレとの契約が切れるとまた自我を失うんだった。
うん、やっぱり知らない方がいい。世界の平和のために。
しかし、帰ったらリリーたちに文句を言われそうで怖いな……。
まぁ正直に話すしかないんだが。
「それとコウガさん。申し訳ないのですけど、一度私たちの集落まで着いて来てもらえるかしら?」
旅立つのにいろいろと準備がしたいらしい。
「わかった。それで、その集落はここから遠いのか?」
集落に寄るのはいいのだが、ここから何週間もかかるとか言われるとさすがに困る。
まだ依頼達成報告をしないといけないし、あまりにも遠いようならちょっと方法を考えないといけない。
と心配したのだが、思ったよりもずっと近かった。
「大丈夫だ。俺たちの集落はここから三時間ほどだ」
竜化して飛んで移動した場合の時間のようだから、実際にはかなりの距離があるようだが、それでも三時間程度なら問題ないだろう。
「わかった。じゃぁオレは走って追いかけるから、できれば空が見える見通しのいいところを通るようにしてくれ」
ジルがいないので飛んで追いかけることはできない。
なので、頑張って走るしかない。
でも、オレのその言葉にヴィーヴルがなぜか手をあげて待ったをかけた。
「ま、待って! そそ、それなら私が運びます! コウガさんもそれでいいですよね!」
「え……いやいや! オレは走っていくから!?」
ヴィーヴルが竜化しても、ちいさいのでジルのように背に乗せてもらうことはできない。
そうなると背には翼があるので、お姫様抱っこされることになる。
さすがにそれは遠慮したい……。
運ぶ! 走る! 抱っこする! 走る! と不毛な言い争いをしていると、急に悪寒が走った。
「ん……? ちょっと待て……話は後だ!」
この気配は覚えがある!
「コウガさん! 上よ!!」
ヴィーヴルの声とほぼ同時にオレも空を見上げていた。
またもや転移の気配が空中に現れたのだ。
「まったく! 転移魔法って伝説級の魔法じゃなかったのかよ!」
「さっきまでとは気配がすこし違います! 気を付けてください!」
距離を取ってヴァジュランダをかまえると、二つのちいさな影が空中に現れた。
いや、ドラゴンゾンビと比べればちいさいが、人として見れば一人はかなり大きいな。
そう。現れたのは人の形をしていた。
それが二人。
一人は魔術師風、もう一人はマッチョな大男の姿をしていた。
ただ……人族ではなさそうだ。
「いやぁ、参りました。まさか送り込んだドラゴンゾンビを二体とも倒されるとは。これは竜人の力を上方修正しなければなりませんね」
すごいすごいと言って嬉しそうに拍手をする黒いローブを纏ったやせ細った小男。
頬骨が異様なほど出ていてまるで骸骨のような顔をしており、その姿はグールを連想させる。だが、纏っている魔力が尋常じゃない。グールとは格が違う。
ただの魔族ではないだろう。
「笑っでる場合じゃないっ。ぜっがぐ良いドラゴンの死体を提供してやっだのに無駄にじやがっで」
そしてもう一人は、身長2メートルを超える筋骨隆々の男。
その話し方からは想像がつかない精悍な顔つきに、立ち姿一つとっても隙がなく、纏う邪気のようなものと相まって、こちらも只者じゃないのが見て取れた。
二人とも間違いなく高位の魔族だ。
戦う前からわかる……とんでもなく強い。
以前戦った六魔将のアモン以上かもしれない……。
「良いではないですか。『アスタロト』も直接戦いたいとぐちぐち文句を言っていたではないですか?」
「ぞれはぞれだ。素材がもっだいない」
こっちを完全に無視して会話を続ける二人に頭にきたのか、竜人の一人がその会話に割り込んだ。物理的に。
「お前ら魔王軍所属の魔族だな! ドラゴンゾンビどもは、俺たちで葬らせてもらったぜ!」
「はぁ~……竜人もアスタロトと同じように脳筋なのですね。勘違いをしているようだから教えてあげますが、それは心配には及びません。ドラゴンは存在そのものが非常に強固ですから、竜王のような強い個体ならまだあと何度かは呼び出せますよ」
と不気味な笑みを浮かべた。
「なにぃ!? そんなことさせるか! それなら呼び出す前に倒すまでだ!」
それを聞いた飛び出していった竜人は一気に攻勢をかける。
「ザイル待て! 不用意すぎる!!」
その行動をゼクトが止めるが、制止を振り切り小柄な男に飛びかかった。
「自分が死んじまったらドラゴンゾンビも呼び出せないだろ!」
放った爪の一撃は、油断をしていたローブの男に決まるかに見えた。
だが勢いの乗ったその攻撃に、隣の大男が反応する。
「なっ!? 片手で!?」
竜人の放った一撃は、速度もタイミングもばっちりの体重の乗った強力なものだった。しかしアスタロトと呼ばれた大男は、予備動作もなく片手で軽々と受け止めてしまった。
「おらが相手じでやるがら、みんなでががってぎなよ?」
あいつ、力だけでない!
すさまじい反応速度だったぞ!?
「そんな驚くことではないですよ? その男の名は『破壊王アスタロト』。魔王軍六魔将の一人ですから。あ、ちなみに私の名は『ビフロンス』。皆からは『不死王ビフロンス』と呼ばれております。一応私も六魔将の一人なので覚えておいて下さい。と言っても……死ぬまでの短い間ですけどね」
ようやく終わったかと思われた戦いは、どうやらここからが本番だったみたいだ。
集落に戻って貰って説得してくれるって話はどこいった……。
そもそも自分たちの姫様を出会ったばかりのオレに預けるとか絶対駄目だろうって思うのだが、ゼクトたちは竜人の女が惚れたのなら仕方ないとか、掟が……とか結局ぜんぜん説得に協力すらしてくれなかった。
ジルにも一方的に主従契約を破棄できないかと念話で相談したのだが……。
≪一方的に契約を破棄する方法を我が知っていたとして、それを主に教えると思うか?≫
と言われて諦めた。
そのつもりがないので忘れていたが、ジルはオレとの契約が切れるとまた自我を失うんだった。
うん、やっぱり知らない方がいい。世界の平和のために。
しかし、帰ったらリリーたちに文句を言われそうで怖いな……。
まぁ正直に話すしかないんだが。
「それとコウガさん。申し訳ないのですけど、一度私たちの集落まで着いて来てもらえるかしら?」
旅立つのにいろいろと準備がしたいらしい。
「わかった。それで、その集落はここから遠いのか?」
集落に寄るのはいいのだが、ここから何週間もかかるとか言われるとさすがに困る。
まだ依頼達成報告をしないといけないし、あまりにも遠いようならちょっと方法を考えないといけない。
と心配したのだが、思ったよりもずっと近かった。
「大丈夫だ。俺たちの集落はここから三時間ほどだ」
竜化して飛んで移動した場合の時間のようだから、実際にはかなりの距離があるようだが、それでも三時間程度なら問題ないだろう。
「わかった。じゃぁオレは走って追いかけるから、できれば空が見える見通しのいいところを通るようにしてくれ」
ジルがいないので飛んで追いかけることはできない。
なので、頑張って走るしかない。
でも、オレのその言葉にヴィーヴルがなぜか手をあげて待ったをかけた。
「ま、待って! そそ、それなら私が運びます! コウガさんもそれでいいですよね!」
「え……いやいや! オレは走っていくから!?」
ヴィーヴルが竜化しても、ちいさいのでジルのように背に乗せてもらうことはできない。
そうなると背には翼があるので、お姫様抱っこされることになる。
さすがにそれは遠慮したい……。
運ぶ! 走る! 抱っこする! 走る! と不毛な言い争いをしていると、急に悪寒が走った。
「ん……? ちょっと待て……話は後だ!」
この気配は覚えがある!
「コウガさん! 上よ!!」
ヴィーヴルの声とほぼ同時にオレも空を見上げていた。
またもや転移の気配が空中に現れたのだ。
「まったく! 転移魔法って伝説級の魔法じゃなかったのかよ!」
「さっきまでとは気配がすこし違います! 気を付けてください!」
距離を取ってヴァジュランダをかまえると、二つのちいさな影が空中に現れた。
いや、ドラゴンゾンビと比べればちいさいが、人として見れば一人はかなり大きいな。
そう。現れたのは人の形をしていた。
それが二人。
一人は魔術師風、もう一人はマッチョな大男の姿をしていた。
ただ……人族ではなさそうだ。
「いやぁ、参りました。まさか送り込んだドラゴンゾンビを二体とも倒されるとは。これは竜人の力を上方修正しなければなりませんね」
すごいすごいと言って嬉しそうに拍手をする黒いローブを纏ったやせ細った小男。
頬骨が異様なほど出ていてまるで骸骨のような顔をしており、その姿はグールを連想させる。だが、纏っている魔力が尋常じゃない。グールとは格が違う。
ただの魔族ではないだろう。
「笑っでる場合じゃないっ。ぜっがぐ良いドラゴンの死体を提供してやっだのに無駄にじやがっで」
そしてもう一人は、身長2メートルを超える筋骨隆々の男。
その話し方からは想像がつかない精悍な顔つきに、立ち姿一つとっても隙がなく、纏う邪気のようなものと相まって、こちらも只者じゃないのが見て取れた。
二人とも間違いなく高位の魔族だ。
戦う前からわかる……とんでもなく強い。
以前戦った六魔将のアモン以上かもしれない……。
「良いではないですか。『アスタロト』も直接戦いたいとぐちぐち文句を言っていたではないですか?」
「ぞれはぞれだ。素材がもっだいない」
こっちを完全に無視して会話を続ける二人に頭にきたのか、竜人の一人がその会話に割り込んだ。物理的に。
「お前ら魔王軍所属の魔族だな! ドラゴンゾンビどもは、俺たちで葬らせてもらったぜ!」
「はぁ~……竜人もアスタロトと同じように脳筋なのですね。勘違いをしているようだから教えてあげますが、それは心配には及びません。ドラゴンは存在そのものが非常に強固ですから、竜王のような強い個体ならまだあと何度かは呼び出せますよ」
と不気味な笑みを浮かべた。
「なにぃ!? そんなことさせるか! それなら呼び出す前に倒すまでだ!」
それを聞いた飛び出していった竜人は一気に攻勢をかける。
「ザイル待て! 不用意すぎる!!」
その行動をゼクトが止めるが、制止を振り切り小柄な男に飛びかかった。
「自分が死んじまったらドラゴンゾンビも呼び出せないだろ!」
放った爪の一撃は、油断をしていたローブの男に決まるかに見えた。
だが勢いの乗ったその攻撃に、隣の大男が反応する。
「なっ!? 片手で!?」
竜人の放った一撃は、速度もタイミングもばっちりの体重の乗った強力なものだった。しかしアスタロトと呼ばれた大男は、予備動作もなく片手で軽々と受け止めてしまった。
「おらが相手じでやるがら、みんなでががってぎなよ?」
あいつ、力だけでない!
すさまじい反応速度だったぞ!?
「そんな驚くことではないですよ? その男の名は『破壊王アスタロト』。魔王軍六魔将の一人ですから。あ、ちなみに私の名は『ビフロンス』。皆からは『不死王ビフロンス』と呼ばれております。一応私も六魔将の一人なので覚えておいて下さい。と言っても……死ぬまでの短い間ですけどね」
ようやく終わったかと思われた戦いは、どうやらここからが本番だったみたいだ。
55
あなたにおすすめの小説
落ちこぼれ職人、万能スキルでギルド最強になります!
たまごころ
ファンタジー
ギルド最弱の鍛冶師レオンは、仲間に「役立たず」と笑われて追放された。
途方に暮れる彼の前に現れたのは、伝説の鍛冶書と、しゃべる鉄塊(?)。
鍛冶・錬金・料理・魔道具――あらゆるクラフトスキルを吸収する《創精鍛造》を極め、万能職人へと覚醒!
素材採取から戦闘まで、すべて自作で挑む“ものづくり異世界成り上がり譚”が今、始まる。
裏切った元仲間? 今さら後悔しても遅いぞ!
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~
雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。
左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。
この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。
しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。
彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。
その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。
遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。
様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。
異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる