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第一章 後半
第82話:五人の精鋭
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「なんだと!? しかも六魔将一の戦闘力を誇るって言われているあの破壊王!?」
ゼクトがその大男を知っているようで驚きの声をあげた。
「ゼクト、あいつのことを知っているの?」
「はい。魔王軍六魔将の中でも純粋な戦闘力では頭一つ抜きんでている存在だと聞いています」
ヴィーヴルの問いにゼクトは厳しい顔でそうこたえた。
「ですが……俺たちは一人ではありません! 一対一なら厳しいでしょうが我らが力を合わせれば!」
ヴィーヴルにそう答えると、残っていた三人に指示を出して戦闘の狼煙を上げる。
「行くぞ! 散開! 扇の陣でいく!!」
「「おうよ!!」」
ゼクトたちは先に戦闘を始めた一人と合流すると、一糸乱れぬ動きで幾重にも重なる波状攻撃をしかけていった。
その動きからは彼らの練度の高さがうかがえる。
ドラゴンゾンビ相手の時は的が大きすぎて、思うような連携が取れていないように見えたが、アスタロトを圧倒し始めたその連携は一朝一夕でできるようなものではなかった。
どうするかな……オレの方は警戒しすぎて出遅れてしまった。
かと言ってこのままただ見ているだけっていうのもな。
そう思い、一歩踏み出そうとしたのだが、そこでヴィーヴルから待ったの声を掛けられた。
「コウガさん。なにかすごく嫌な予感がするわ。ゼクトたちにすこし任せて貰えないかしら。大丈夫。彼らも竜人の精鋭ですから」
一瞬どうするべきかと迷ったが、ゼクトたちの連携の上手さを考えると下手に手を出すと逆に危険かもしれない。
ヴィーヴルの言うように、ひとまずは任せてみることにした。
「わかった。でも、危なくなったらオレも出るからな」
「ええ。もちろん。その時は私も出るから力を貸して」
こうしてオレとヴィーヴルは竜人の戦士五人と破壊王アスタロトの戦いを見守ることにしたのだった。
六魔将一の戦闘力を誇るという『破壊王アスタロト』の実力は確かにすごかった。
最後に送り込まれた二頭のドラゴンゾンビは別にしても、不死王ビフロンスが送り込んだ軍勢を次々と屠ってきた竜人の精鋭五人。それを相手にしてまだすこし余裕をもって対処している。
ゼクト達五人は息ぴったりの連携で次々と攻防一体の攻撃をしかけており、反撃の隙を与えない猛攻を加えているのだが、それを涼しい顔で受け流していることからもアスタロトの実力の高さがうかがえた。
でも……これだけなのか?
内心オレはすこし拍子抜けした思いだった。
正直このレベルの強さならば、全力でかかればオレ一人でもギリギリ何とかなりそうだ。
なにかがおかしい。
それにしてはアスタロトの表情に余裕がありすぎる。
「くそっ! やっぱり強いな!」
「ザイル! 竜言語魔法だ! 奴の涼しい顔を歪めてやれ!」
このままではアスタロトの防御を破れないと踏んだゼクトが、ザイルに竜言語魔法での攻撃を指示する。
そして流れるように攻撃パターンを変化させると、ザイルの詠唱を邪魔されないように攻撃の手を強めた。
竜言語魔法は強力だ。
さっきすこし話した感じだと、ヴィーヴル以外はブレスや身体強化系の魔法しか使えないようだが、ブレスのような広範囲攻撃なら、いくらアスタロトの守りが鉄壁でも回避するのは難しいだろう。
ザイルの準備が整ったのを確認すると、四人は一斉に攻撃をしかけてそのまま空高くに離脱する。
そして魔法が紡がれた。
≪燃え尽きろ! 【烈火の息吹】!≫
ヴィーヴルが使っているブレスより下位の竜言語魔法のようだが、それでもその威力は凄まじかった。
放射状に放たれた業火の渦は確実にアスタロトを捉えていた。
そればかりか後ろで不気味に戦いを見守っていたビフロンスまでをも巻き込むように放たれている。
これはきっと狙っていたのだろう。
「上手い! これなら……」
オレが手を握り締めて勝利を夢想した次の瞬間……その炎はまるで最初から存在していなかったように掻き消えた。
「な!?」
起こったのはそれだけではなかった。
空に退避していた四人が、なぜか次々と落ちてきたのだ。
「「ぐはっ!?」」
二〇メートルほどの高さから地面に叩きつけられた四人は、その衝撃で地に伏せ、ここからも呻き声が聞こえる。
おかしい。あの高さだ。ダメージを受けるのはわかる。
だけど、竜人たちはタフだ。
それこそドラゴンゾンビの尾の一撃を喰らっても怪我だけですむぐらいには……。
「ゼクト! はっ!? がはっ」
慌てて駆け寄ろうとしたザイルだったが、突然攻撃に転じたアスタロトの攻撃をもろに喰らい、一撃で地に伏せてしまった。
え? 一撃?
「ザイル! なぜ竜化を解いたのですか!?」
「あ、竜化が……」
ヴィーヴルの悲鳴のような叫びで冷静に戻ったオレは、そこでようやく気付いた。竜人たち五人がみんな人族の姿に戻っていることに。
「ヴィーヴル! みんなを退避させてくれ!! 何かおかしい! 【月歩】!」
オレは、ザイルに止めを刺そうとしていたアスタロトの前まで一気に移動すると【雲海】を使ってその攻撃を逸らした。
あぶねぇ!
竜人たちなら一発殴られた程度じゃ死なないだろうと油断していた。
でも、今の姿で殴られたら一発でおしまいだっただろう……。
「お"、竜人以外のものがまざっでいだのが」
そういうアスタロトの体は薄っすらと光を発していた。
ゼクトがその大男を知っているようで驚きの声をあげた。
「ゼクト、あいつのことを知っているの?」
「はい。魔王軍六魔将の中でも純粋な戦闘力では頭一つ抜きんでている存在だと聞いています」
ヴィーヴルの問いにゼクトは厳しい顔でそうこたえた。
「ですが……俺たちは一人ではありません! 一対一なら厳しいでしょうが我らが力を合わせれば!」
ヴィーヴルにそう答えると、残っていた三人に指示を出して戦闘の狼煙を上げる。
「行くぞ! 散開! 扇の陣でいく!!」
「「おうよ!!」」
ゼクトたちは先に戦闘を始めた一人と合流すると、一糸乱れぬ動きで幾重にも重なる波状攻撃をしかけていった。
その動きからは彼らの練度の高さがうかがえる。
ドラゴンゾンビ相手の時は的が大きすぎて、思うような連携が取れていないように見えたが、アスタロトを圧倒し始めたその連携は一朝一夕でできるようなものではなかった。
どうするかな……オレの方は警戒しすぎて出遅れてしまった。
かと言ってこのままただ見ているだけっていうのもな。
そう思い、一歩踏み出そうとしたのだが、そこでヴィーヴルから待ったの声を掛けられた。
「コウガさん。なにかすごく嫌な予感がするわ。ゼクトたちにすこし任せて貰えないかしら。大丈夫。彼らも竜人の精鋭ですから」
一瞬どうするべきかと迷ったが、ゼクトたちの連携の上手さを考えると下手に手を出すと逆に危険かもしれない。
ヴィーヴルの言うように、ひとまずは任せてみることにした。
「わかった。でも、危なくなったらオレも出るからな」
「ええ。もちろん。その時は私も出るから力を貸して」
こうしてオレとヴィーヴルは竜人の戦士五人と破壊王アスタロトの戦いを見守ることにしたのだった。
六魔将一の戦闘力を誇るという『破壊王アスタロト』の実力は確かにすごかった。
最後に送り込まれた二頭のドラゴンゾンビは別にしても、不死王ビフロンスが送り込んだ軍勢を次々と屠ってきた竜人の精鋭五人。それを相手にしてまだすこし余裕をもって対処している。
ゼクト達五人は息ぴったりの連携で次々と攻防一体の攻撃をしかけており、反撃の隙を与えない猛攻を加えているのだが、それを涼しい顔で受け流していることからもアスタロトの実力の高さがうかがえた。
でも……これだけなのか?
内心オレはすこし拍子抜けした思いだった。
正直このレベルの強さならば、全力でかかればオレ一人でもギリギリ何とかなりそうだ。
なにかがおかしい。
それにしてはアスタロトの表情に余裕がありすぎる。
「くそっ! やっぱり強いな!」
「ザイル! 竜言語魔法だ! 奴の涼しい顔を歪めてやれ!」
このままではアスタロトの防御を破れないと踏んだゼクトが、ザイルに竜言語魔法での攻撃を指示する。
そして流れるように攻撃パターンを変化させると、ザイルの詠唱を邪魔されないように攻撃の手を強めた。
竜言語魔法は強力だ。
さっきすこし話した感じだと、ヴィーヴル以外はブレスや身体強化系の魔法しか使えないようだが、ブレスのような広範囲攻撃なら、いくらアスタロトの守りが鉄壁でも回避するのは難しいだろう。
ザイルの準備が整ったのを確認すると、四人は一斉に攻撃をしかけてそのまま空高くに離脱する。
そして魔法が紡がれた。
≪燃え尽きろ! 【烈火の息吹】!≫
ヴィーヴルが使っているブレスより下位の竜言語魔法のようだが、それでもその威力は凄まじかった。
放射状に放たれた業火の渦は確実にアスタロトを捉えていた。
そればかりか後ろで不気味に戦いを見守っていたビフロンスまでをも巻き込むように放たれている。
これはきっと狙っていたのだろう。
「上手い! これなら……」
オレが手を握り締めて勝利を夢想した次の瞬間……その炎はまるで最初から存在していなかったように掻き消えた。
「な!?」
起こったのはそれだけではなかった。
空に退避していた四人が、なぜか次々と落ちてきたのだ。
「「ぐはっ!?」」
二〇メートルほどの高さから地面に叩きつけられた四人は、その衝撃で地に伏せ、ここからも呻き声が聞こえる。
おかしい。あの高さだ。ダメージを受けるのはわかる。
だけど、竜人たちはタフだ。
それこそドラゴンゾンビの尾の一撃を喰らっても怪我だけですむぐらいには……。
「ゼクト! はっ!? がはっ」
慌てて駆け寄ろうとしたザイルだったが、突然攻撃に転じたアスタロトの攻撃をもろに喰らい、一撃で地に伏せてしまった。
え? 一撃?
「ザイル! なぜ竜化を解いたのですか!?」
「あ、竜化が……」
ヴィーヴルの悲鳴のような叫びで冷静に戻ったオレは、そこでようやく気付いた。竜人たち五人がみんな人族の姿に戻っていることに。
「ヴィーヴル! みんなを退避させてくれ!! 何かおかしい! 【月歩】!」
オレは、ザイルに止めを刺そうとしていたアスタロトの前まで一気に移動すると【雲海】を使ってその攻撃を逸らした。
あぶねぇ!
竜人たちなら一発殴られた程度じゃ死なないだろうと油断していた。
でも、今の姿で殴られたら一発でおしまいだっただろう……。
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そういうアスタロトの体は薄っすらと光を発していた。
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追記:2025/09/20
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