異世界おさんぽ放浪記 ~フェンリルと崇められているけど、その子『チワワ』ですよ?~

こげ丸

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【第25話:オレ以外……】

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「じゃぁさ! 私たちもユウトのパーティーに入れば問題解決だね!!」

 突然そんな事を言い出したヒナミに、

「あぁ~そうね。とりあえずはそれで良いかもしれないわね」

 ミヒメまでもが乗っかってしまった。

「ちょっと待ってくれ。オレのパーティーに入るって、その……二人は神様に召喚された勇者なんだろ?」

 使命とかあるんじゃないのか? そう思い尋ねたのだが……。

「うん! でもね、私たちの力が必要になるかどうかはまだわからないんだって」

「え? わからないって、神様に召喚されたんだろ?」

 神様ならそれぐらいわかるのかと思ったが、この世界の神様は全知全能などでは無いようだ。

「そうなのよ! 人を召喚しておいて、必要になるとしたら数年は後だとかいうのよ!? それで、その間は魔物退治をして強くなっておいてさえくれれば、自由にして良いとか言うもんだから、パズもそれを聞いてそれならって逃げ出したみたいなのよね……」

 パズから神様が行う勇者召喚の話を聞いて、もっと深刻な事態を想像していたのだが、なんか意外と余裕があるんだな……。

「ばぅぅ!」

「いや、でもパズ。だからって逃げ出したらダメだろ?」

 パズが「だから問題ない!」とか伝えてきたけど、前の世界での飼い主放り出して、そういうわけにもいかない。

 しかし、パズはどうしてオレの元にやってきたんだろう?
 聞いても教えてくれないんだよな。

 などと、少し考え事をしていると、ほっぺたをつんつんとつつかれた……。

「……ふぇ? な、何してるんだ?」

「ねねね。ユウトさんって、もしかしなくても……パズと完全に会話しちゃってるよね?」

「あ、やっぱりそうよね!? 私たちも何となくの意思疎通は出来るんだけど、もう完全に会話してるわよね!?」

 あれ? もしかして二人は会話までは出来ないのか?

「そ、そうだが……二人も出来るものだとばかり思っていたが……」

「うわぁ♪ ホントにパズと会話できるんだ~♪ 私たちは簡単な単語とか、あと気持ち的な所はなんとな~くわかるんだけど、細かい所まではわからないかな?」

「そうなのか。これもオレの職業クラス『獣使い』の能力なのか?」

「ばぅ!」

「やっぱりそうなのか……えっと、完全に会話できるのは、やっぱりオレの能力も関係しているみたいだ」

 パズに確認すると、パズの念話とオレの『獣使い』としての能力が合わさって、オレとだけは完全に会話ができるらしい。

「す、凄いわね……でも、それってパズが普通に会話できるレベルにいるって事よね?」

 ん? どういう意味だ?

「え? そりゃぁそうだろ?」

「「え?」」

「だって、職業クラス『勇者(犬)』なんだし、色々チートだし?」

「「……え?」」

「え? もしかして……」

 パズが神様から色々なチートを授かっているのを知らないのだろうか。

「「えぇぇぇぇぇぇぇ!? カッコ、イヌって何!?」」

 どうやら、知らなかったようだ……というか、食いつくのは(犬)そっちか!?
 いや、まぁ気持ちはわかるけど……うん。

「やっぱり教えてなかったんだな? もしかして、授かった能力のこと、まったく教えてないのか?」

「びゅーびゅー」

「いや、前も言ったけど、それ口笛吹けてないからな?」

 目を泳がせて口笛を吹く真似をしているので、とりあえずツッコミを入れておく。
 だけど、やっぱり何も二人に教えていなかったようだ。

「ユウトのパズに助けられたって話聞いて、何となく神様から力を貰ったんだろうなって思ってたけど、勇者(犬)って、ちょっとびっくりね」

「だね~。でも、それなら尚更パズを放っておけないな~……という事で、パズと一緒にいるつもりなら、ユウトさんも一緒って事で」

「やっぱりそれが一番良さそうね。ユウトも良いわよね? 良・い・わ・よ・ね?」

「え……そ、そうだな」

 ミヒメがぐいと身を乗り出して尋ねてきたので、思わず頷いてしまった。
 か、顔が近い……。

 前世と今世で三〇年も生きている事になるが、ともに記憶ゼロスタートの一五年なので、そこに女性に対する免疫はない。無防備に近づきすぎないで欲しい……。

 ただ、勇者としての使命などがないのであれば、オレの方もやぶさかではなかった。

「本当に勇者としての使命とか無いんだよな?」

「そうね。そう聞いているわ」

「しいて言えば、魔物と戦って強くなっておくことが使命かな?」

 魔物と戦うなら、この世界では冒険者が一番良い。
 それに、オレはこの二人には、間接的にだが恩があると思っている。

 パズをこの世界に連れて来てくれた、そしてペジーから受け継がれた命を、パズをしっかりとここまで育ててくれたという恩が。

「そうか……それなら宜しく頼む。オレには、この世界で過ごした一五年がある。ミヒメとヒナミも知識は神様から受け継いでいるかもしれないが、両方の世界の知識や常識を知るオレがいれば、多少は力になれるだろう」

「ばぅ~」

 小さい声で「え~」言うな! 「え~」って!
 通訳頼まれたらオレが困るだろ……。

「じゃぁ、決まりね!」

「やった~♪ 美姫と二人じゃちょっと不安だったから、助かるな♪」

「ちょ、ちょっと桧七美~……」

「だって~、私たち強いみたいだけど、戦いの経験もこの世界の常識もないでしょ?」

「わ、わかってるわよ!」

 見た目は本当にそっくりだし、双子そのものだが、性格は結構違うんだな。

「な、なによ……?」

「いや。なんでもない。それより、これからよろしく頼むな」

 オレがそう言って右手を差し出すと、

「よ、よろしく頼むわ!」

 ちょっと頬を朱に染め、照れながらも握手を交わしてくれた。

「あぁ~! ずる~ぃっ! 私も~!」

 こうしてオレとパズのパーティー『あかつきとき』に、双子の勇者、ミヒメとヒナミが加わったのだった。

 あれ? このパーティーオレ以外全員『勇者』じゃないか……?
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