哀歌-aika-【R-18】

鷹山みわ

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車窓から外の景色を見る。あのクリスマスの時を思い出した。
雪は降っていないけれど、窓の外はさっきまで自分がいた穏やかな景色のようだった。
「ねえ、どうしてあそこにいたの……?」
呟くように問いかける。
まだ現実が信じられないと体のどこかが言っている。
慣れた手つきでハンドルを握りながら、少し間があって剛史は話し始める。
「……ずっと、見てたから。あの店にも結構行ってる。
ばれないように買い物しながら胡桃を見てた。困らせたくなくて、カウンターにいた時はセルフレジを使ったり品だししている場所は避けてたんだ」
知らなかった。気づかなかった。
大学を卒業してからもアルバイトを続けていて、尚人と一緒にカウンターをやることが増えていた。正社員にならないかという話も出ていた。仕事が楽しくて、辛かった心を紛らわせる事ができたと思っていた。
でも、彼は、すぐ近くに存在していたのだ。
「自分でもやばいと思ってたけど、止まらなかった。今日はアイツと外に出たのを見て……我慢できなくて」
「家の近くまで来てたの?」
「……どうかしてるよな、俺。でもこれが本来の俺なのかなって最近思った。俺は人でなしで外道な男だから」
冷静に考えれば、開き直ったつきまといの男になるだろう。彼女が嫌がった瞬間に警察沙汰になって自分は地に落ちてしまうのは目に見えていた。分かっていたはずだった。それでも止められなかった。自分の強欲さに呆れて剛史は笑う。

胡桃は黙ったまま視線を外に向ける。
そうしないと、湧き上がる喜びが顔に出てしまう。自分は喜んでいる。
まだ認めてはいけない。信じてはいけない、と最後の理性が燻っている。
今まで二人が行った場所とは全く違う方向、街の外へ向かっていくようだった。
人通りが少なくなっていく。
喧噪の町並みが遠ざかっていく。


ふと路地裏に車が停まって、剛史は車を出て後部座席に入ってきた。
「……」
狭い車内に窮屈な場所。
ドアをロックして、身構えた彼女の腕を引っ張って、唇を重ねた。
「んっ……」
離れようとする体を無理矢理引き寄せて、口腔の奥深くまで舌を入れ込んだ。
音が鳴って唾液が出てくる。キスをしながら体重を掛けて押し倒して、動かないようにする。
息がしづらいが、まだ彼女の抵抗があるので口は離れない。
手で服の上からまさぐっていく。腹部、腕、鎖骨周り、飾られた乳首、上半身を自分の手が滑る。見る見るうちに顔が赤くなり、目が潤んでいく胡桃。
久しぶりだった。ようやく帰って来た、と勝手に勘違いを起こす。
ゆっくり唇を外すと、互いの唾液が伸びて橋ができた。
「た……けしさ」
「ごめん、着くまで待てない……」
薄緑色のレーススカートを捲って、彼の手が下着に伸びる。
逃げようとしても無駄だった。
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