哀歌-aika-【R-18】

鷹山みわ

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終わりにあるもの

naoto

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隣で朋香のすすり泣く声が聞こえる。
他の従業員も戸惑いと悲しみで声を出していなかった。
店長も淡々と状況を話していたが、パソコンの前で俯いて嗚咽を堪える姿を後で尚人は見る。

マスコミが来て、彼女の私生活を聞いてきた時は全員が「普通の子です」と答えて情報を一切与えなかった。与える情報が無かったと言っても良かった。

ただ、尚人には分かっていた。

動物園で連れて行かれた時、二人のキスは絵に描いたように美しかった。
互いを求めていたと言わんばかりに、ほんの一瞬だったけれど一枚の写真だった。
信じられなくて、それでも絶対にやめさせようと胡桃が出勤するのを待っていた。しかし、彼女は無断欠勤を数日続けてついに職場には来なかった。もしかしたら二度と現れないかもしれないという予感も持っていた。彼と遠くへ逃げてしまうのかと。

でも、こんなのは、あんまりだ。

――楽しいね、尚人くん
――尚人くんがこうやって色んな楽しい場所に連れてってくれるから、私、本当に楽しいの。
胸の棘が溶けていくようで、尚人くんといると私は

「僕は、胡桃ちゃんが好きだよ。これからも、僕と一緒にいて欲しい」

……たった一言がどうして言えなかった?
あのまま一緒にいれば、手を繋いでいたら、一緒に笑っていたら、彼女は二度と手の届かない場所へ行くことなんてなかった。
こんなに醜く、世間の晒し者にならなかったのに。

「でも、胡桃ちゃんは、いけないと分かっていても、TAKESHIの事を忘れられなかったのかな。こんな事になっても愛するのをやめられなかったのかな。
……私にはそこまでできないよ。

尚人さん、私、胡桃ちゃんの達観したような……綺麗な笑顔がずっと頭から離れられないんです」

朋香が涙を拭いながら、大切な友人を偲んでいた。
尚人や朋香が見てきた彼女はどれだけ素顔を見せていたのだろう。
剛史には二人以上の本当の姿を晒していたのだろうか。愛に溺れていく、ただの女性として。

想像しかできない。
でも尚人が覚えている顔は沢山あった。忘れないように彼女の姿を脳内の記憶に貯蓄しようとする。
……それでも、色濃くフラッシュバックしてくるのは、剛史と胡桃の姿が重なった場面だった。

視界が潤んで、すぐに目を閉じて手のひらで擦る。
泣くわけにはいかない。
泣いてしまえば、二人の全てを認めて、それでも惨めに否定するようで嫌だった。

日常は変わらない。ただ、好奇の目を向けてくる非常識な奴はいたけど、尚人はこれまでと同じ日常を過ごしていく。
周りが落ち着いたら、朋香と一緒に彼女が眠る場所に、彼女に会いに行こうと決めていた。

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