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香水
香水-1-
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初めて、彼が住んでいる家に来た。
簡素な平屋。あの個展が成功した時に購入したのだと教えてくれた。
必要最低限のものがある居間とキッチン以外は、デッサンするためのアトリエのような小さい部屋やギターとキーボードのような音楽機器が置かれてある部屋。さらにクローゼットその他諸々の雑用部屋、そして、寝室はモノクロで統一した空間になっていた。
「ここが剛史さんの部屋……」
「なんか恥ずかしいけど、まあ、そう」
頬を赤らめながら頭を掻いている。
写真は個展やイベントの記念写真がぽつんと飾られているだけで、あまり自分が映ったものは置きたくなさそうに見える。
胡桃は息を吸う。彼から香る柔軟剤や汗のにおいがこの空間に染みついていた。
全身が彼に包まれているようで、体が火照る。体温が上がった。
「こっちに来て」
手を引かれて寝室に行く。簡易な作業机とベッドがある。
ベッドサイドに座らされて、そそくさと彼は何かを取りに部屋から出て行った。周りが新鮮で目が泳いでしまう。
自分の部屋では恥ずかしくて声を出さないようにしていたが、剛史から隣家と間隔があるから思い切り声を荒げて良いと言われていた。羞恥以上に興奮が勝っていた。乱れている自分が容易に想像できてしまう。
ぎゅっと体を抱き締める。
今日の私は、どうなってしまうのだろう。
「胡桃」
「はいっ」
「改めて、誕生日おめでとう」
両手で何かを持って近づいてくる彼。
そのものを真っ直ぐ見つめた。驚きで言葉が出てこなかった。
一輪の真っ赤な薔薇がガラスケースの中に咲いている。
たった一本、真実の愛で咲かせたあの薔薇のように美しく。そして、まるで妖艶に主張している。
目を逸らさないで。彼だけを見るようにと誓わされているみたいに胡桃は思えた。
「何がいいか考えてさ、やっぱ最初の出会いを忘れて欲しくなかった。
プリザーブドフラワーで上手くいけば二年は保存できるらしいよ。
できれば、寝室に飾ってほしい、かな」
「すごく……綺麗……剛史さんみたい」
「え、俺?」
「あっ、えっと、薔薇って、どうしても剛史さんが浮かんできて。
実は青い薔薇を貰った時もね、青色なのに剛史さんを思い出して、なんか赤色に変わっていくように見えて……な、何言ってるんだろう私」
気持ちを吐露したら文章がおかしくなってしまった。上手く説明できなくて俯く。
ふふっと笑っている彼は喜んでいるみたいだった。
作業机に薔薇を丁寧に置いた彼は、隣に座って包むように胡桃を抱き締めた。
「それ……嬉しい」
体中に浸透していく彼の声。また息を吸う。耳から鼻から神経に渡っていく感覚。
瞳を閉じて胡桃は甘美に浸っていた。
彼の口が耳元に近づく気配がした。
「……もう一つ、プレゼントがあるんだ」
「なに?」
作業机に置かれた薔薇の隣に小さな箱があった。
胡桃は気づかなかったが、それは真っ白な箱で慎ましく佇んでいる。
それを彼が手に持って、箱をゆっくり開封していく。途端にほんのりと華やかな香りが部屋に漂って、胡桃の鼻腔をくすぐる。
「香水、ですか?」
「そう」
簡素な平屋。あの個展が成功した時に購入したのだと教えてくれた。
必要最低限のものがある居間とキッチン以外は、デッサンするためのアトリエのような小さい部屋やギターとキーボードのような音楽機器が置かれてある部屋。さらにクローゼットその他諸々の雑用部屋、そして、寝室はモノクロで統一した空間になっていた。
「ここが剛史さんの部屋……」
「なんか恥ずかしいけど、まあ、そう」
頬を赤らめながら頭を掻いている。
写真は個展やイベントの記念写真がぽつんと飾られているだけで、あまり自分が映ったものは置きたくなさそうに見える。
胡桃は息を吸う。彼から香る柔軟剤や汗のにおいがこの空間に染みついていた。
全身が彼に包まれているようで、体が火照る。体温が上がった。
「こっちに来て」
手を引かれて寝室に行く。簡易な作業机とベッドがある。
ベッドサイドに座らされて、そそくさと彼は何かを取りに部屋から出て行った。周りが新鮮で目が泳いでしまう。
自分の部屋では恥ずかしくて声を出さないようにしていたが、剛史から隣家と間隔があるから思い切り声を荒げて良いと言われていた。羞恥以上に興奮が勝っていた。乱れている自分が容易に想像できてしまう。
ぎゅっと体を抱き締める。
今日の私は、どうなってしまうのだろう。
「胡桃」
「はいっ」
「改めて、誕生日おめでとう」
両手で何かを持って近づいてくる彼。
そのものを真っ直ぐ見つめた。驚きで言葉が出てこなかった。
一輪の真っ赤な薔薇がガラスケースの中に咲いている。
たった一本、真実の愛で咲かせたあの薔薇のように美しく。そして、まるで妖艶に主張している。
目を逸らさないで。彼だけを見るようにと誓わされているみたいに胡桃は思えた。
「何がいいか考えてさ、やっぱ最初の出会いを忘れて欲しくなかった。
プリザーブドフラワーで上手くいけば二年は保存できるらしいよ。
できれば、寝室に飾ってほしい、かな」
「すごく……綺麗……剛史さんみたい」
「え、俺?」
「あっ、えっと、薔薇って、どうしても剛史さんが浮かんできて。
実は青い薔薇を貰った時もね、青色なのに剛史さんを思い出して、なんか赤色に変わっていくように見えて……な、何言ってるんだろう私」
気持ちを吐露したら文章がおかしくなってしまった。上手く説明できなくて俯く。
ふふっと笑っている彼は喜んでいるみたいだった。
作業机に薔薇を丁寧に置いた彼は、隣に座って包むように胡桃を抱き締めた。
「それ……嬉しい」
体中に浸透していく彼の声。また息を吸う。耳から鼻から神経に渡っていく感覚。
瞳を閉じて胡桃は甘美に浸っていた。
彼の口が耳元に近づく気配がした。
「……もう一つ、プレゼントがあるんだ」
「なに?」
作業机に置かれた薔薇の隣に小さな箱があった。
胡桃は気づかなかったが、それは真っ白な箱で慎ましく佇んでいる。
それを彼が手に持って、箱をゆっくり開封していく。途端にほんのりと華やかな香りが部屋に漂って、胡桃の鼻腔をくすぐる。
「香水、ですか?」
「そう」
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