原罪の在処

ねむねむねむね

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「悲哀」

よん

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サンタマリアが喋るようになってからは、暗くて冷たい物置が辛くなくなった。取られたら嫌だから、ここで待ってもらっているけど、どうしてかサンタマリアはぼくが何をしていたか知っていた。なんでだろう?
不思議に思って聞いてみたけど、サンタマリアは「秘密だ。」って教えてくれない。ちょっと言いたくなさそうだったから、ぼくもそれ以上は聞かなかった。

「ねえ、サンタマリア。」
「どうした。」
「もし、きみにぼくと同じ体があったら、ギュッてしてくれた?」
「ああ、ああ!勿論だとも。お前の望むことなら……いや、俺がお前をそうしてやりたい。
それだけじゃない。お前を傷つける全てから守ってやる。」
「本当?」
「本当さ。グララアガア、お前を愛しているから。」

えへ、えへへ。
サンタマリアの言葉に頬がゆるゆるする。
今のぼくにはサンタマリアしか愛してくれる人がいないから、それが何よりも嬉しかった。
ぼくがもっともっといいこにしていたら、村の人達も父さんがいた頃の様に優しくなってくれるかもしれない、愛してくれるかもしれない。そう信じて、いっぱい頑張っているけど、痛いことばかり。
でもね、大丈夫。ぼくにはサンタマリアがいるから。サンタマリアがいるから頑張れる。
村の人達が前に戻ったら、そうしたら、サンタマリアを今より良い暮らしにしてあげれる。それで、ぼくはーーー

ばん!

いきなり響いた大きな音に肩がはねる。一日が終わって、静かな夜に訪れたことなんて一度もなかったのに、そこには男の人が立っていた。それだけじゃない。他の村の人達もたくさんいる。

「かなり小汚いな。」「綺麗にしてからにするか?」「いやしかし時間が無い。」「それもそうだ。」「最後に……すなら見目などどうでもいいだろう。」「はやくしろ。」「はやく、」「はやく」「はやく!」

がやがや、ざわざわ。色んな声があちこち飛んで、そのままぼくの腕を強くつかむ。じんじんして「痛い。」って言っても、やっぱりぼくの声はかき消されちゃった。サンタマリアは急いで胸に入れたから、誰も気づいていない、と思う。
どこか焦っている村の人達に手首を背中に回されて、縄でぐるぐるされた。それで、そのまま引き摺らて痛くなりながら、母さんが言っていた「入っちゃいけない森」を進んでいく。
ほー、ほー。暗いなか、鳥が鳴く。お月様の光がぴかぴかと、松明の炎がぼうぼうと。
どれだけ歩いたのかは分からないけど、気づいたら大きな水の前にいた。こんなところで何をするんだろう。そう不思議にしていたら男の人がぼくの右足に何かし始めた。

「グララアガア、今すぐ逃げろ!!そいつらはお前をーーー」

サンタマリアが叫んだと同じくらいに、背中をドンッてされて、それで、……あ。
どぼん、ばしゃん。
ごぼごぼ。口から泡がいっぱい出てる。苦しい、苦しい!お鼻もすごく痛くて、おめめも開けられない。水から出ようにも、縄のせいでなんにも出来なくて。重い右足のせいで、どんどん沈んでいく。

「グララアガア!グララアガア!!しっかりしろ!!
だめだ、どうして……やめてくれ。俺はお前をこんなところで死なせたくなんかない!」

サンタマリア、泣いてるの?
「泣かないで。」その一言も伝えられなくて、口から音は出ない。

……ぼくは頭が良くないけど、でも、こんなことになった理由は分かったよ。村の人達がぼくをいらないと思ってここに突き落としたんだって。
ねえ、もう一度優しくされたいって、愛されたいって願うことすらダメだったの?幸せに戻りたいって、それさえもダメなの?
どうして?「魔女の子」だから?「悪魔の子」だから?だからなの?ねえ。

ぽろり。サンタマリアが胸から零れた。まるでぼくから離れるように。
ああ、あああああ!嫌だ、いや、いやいやいや!!!置いていかないで!ひとりにしないで!!サンタマリア、きみだけは!きみにだけは!!


パキン。

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