堅物王子の側妃は降嫁と言われたので王宮騎士になって返り咲く

あさ田ぱん

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三章

6.協力

 アナベルはまた石造の部屋に戻された。

 体力を温存するため、拘束されたまま、横になる。



 横になり今日のことを思い返すと、アナベルは自分で自分のことが不思議になった。

 (こんな事は今までなかったはずだが…)

 以前、ディボルが怪我をした時、「あなたの涙を拭くと気分が良くなる」と言われた事がある。あれはどのような意味だったのだろうか?

 アナベルが作るお守りがよく効いたと言われたときも、相手の気の持ちようだと思っていたのだが…。

 考え事をしていたら、いつの間にか眠ってしまっていた。

「起きたか」

 次に目が覚めた時、部屋の中には先ほどの短髪の男が居た。

「アレク様がお話したいとの事で、来ていただきたい」

 先ほどとは異なる、丁寧な仕草で立たされ、部屋から連れ出される。

 連れていかれたのは、食堂だった。ここはひょっとして修道院のようなところなのかもしれない。長いテーブルが複数配置されており、大勢で食事する様子が目に浮かぶ。
 
 アレクと呼ばれた女性は先ほどとは違い、余裕のあるブラウスにスラックス姿で現れた。

「食事をしながら話しましょう。貴方の拘束は解きますが、念のため、魔力封じの腕輪は付けさせていただきます」

 アナベルは拘束を解かれ、腕輪をつけてから席についた。

 「早速ですが」とアレクが切り出す。

「私はアレクリゼス・ルラカと申します。亡くなった父から修道院を引き継ぎ、修道騎士団長を努めております。この度の私たちの乱暴な行いをまず、謝罪させてください」

「………」

 アナベルは、肯定も否定もしなかった。もし矢が当たっていたら、ギルフォード達の被害は甚大だったからだ。

「あなたの事を調べさせてもらいました。お会いできて光栄です。『イーリスの神子』、アナベル様」

 アレクが口にした『イーリスの神子』とは、今までも時々呼ばれて来たのだが…。今回の出来事と関係あるのだろうか?

 そう考えると、アナベルは混乱しそうだった。

「アナベル様と同じように、私たちもローゼンダール国教会ではなく、土地の神、冥府の神ミアレルを信仰しております」

「ミアレル…?」

「ええ。死者の魂と眠りを統べるミアレルは旱魃などの自然災害に苦しむ我らを太古より救って来ました」

  しかし、ここはずいぶんと静かだ。アナベルが辺りを見回したので、アレクはその疑問に気がついたようだ。

「信仰の中心はこの修道院が担っていたのですが、教理の違いから二派に別れました。今は市井のものたちとダルムアイン領主、ここの修道騎士団に分裂している状況です」

「…ダルムアイン領主様と、何故仲違いを?」

「市井の者たちはスタンピードが起こると湖のほとりに住む魔獣、いえ、あれは山犬なのですが…、それを殺すと言い出したのです。私達はそれを拒否しました。その山犬こそが我らの神、ミアレルなのですから」

「山犬、しかも魔獣が、神?」

「そうです」 

「なぜ?」

「それをアナベル様に、なぜミアレルが魔獣にその身を堕としたのか…、聞いていただきたいのです。神の声を聞くと言う『イーリスの神子』である、あなたに…!」

 アレクに懇願され、アナベルは困ってしまった。アナベルは神の声など、聞いた事がないのだ。

「そもそも市井のもの達と対立したのは、ミアレルが『犬のわけがない』という別の教理……、長い歴史の中で、思い上がった人間が作った教理のせいなのです。私はそれを明らかにしたい」

「アレク様…」

「まさか、ダルムアイン領主まで、それを信じ離脱するとは。私は……」

 アレクは涙を流していた。アナベルはもし自分がその立場に置かれたらどうしただろうと考えた。

「私も、もし『イーリスを焼き払う』と言われたら、この身が裂けそうです」

「アナベル様!協力いただけるなら、私も貴方のために尽くします!」

「しかし私は、あなた達の奇襲にあい、捉えられて乱暴されました。もしその奇襲が上手く行っていたら、私の仲間達がどうなっていたかと考えると、恐ろしい。簡単に協力するとは言えない」

「ミアレルとその根城を焼き払う為の武器を、見過ごす事が出来なかった。あなたを傷つけた事は謝罪するしかありません」

「……」

 このままアレクと問答を続けても、前に進めない。アナベルには一つ、考えが浮かんだ。

「元はひとつだったと言う事は、相手について、精通しているのでしょうか?」

「ある程度は」

「私たちの目的は、エメルソン殿下含む仲間の救出です。彼らはダルムアイン領主に捉えられて時間も経っています。何か情報…。いえ、解放に向けて尽力頂けるのなら、私も微力ですが協力します」

「……わかりました」

 アレクはそう言うと、部屋の隅に控えていた短髪の男を呼んだ。

「アナベル様。少しお待ちください。この者に探らせます」
  

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