猫の首に鈴をつけたい騎士団長とおひさま浴びてヘソ天で寝たい闇の教祖

あさ田ぱん

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12.うちの子が世界で一番かわいい

「この蛇は一体…」
「蛇じゃない、バルちゃんだっ」
「え……」

 なんかめちゃくちゃ気持ち悪い見た目の、どう見ても蛇だけど…。あの使用人が言っていた通り、すっごい大切に、名前まで付けて飼ってるんだ。

「バルちゃんは、怪我をしているんですか?」
「孤児院の近くで見つけた時からずっと、弱っていたんだ。今まで、いろいろ試してみた。聖女のポーション、古の女神像、暗黒神オルドのお守り…。しかし、どれも効かなかった」
暗黒神オルドのお守り…?!」

 ああああ!こいつどこかで見たことがあると思ったら、エミリアからお守りを買っていた、神経質そうな男だ!確かに、病気に効くのか、と尋ねていたっけ。

 暗黒神オルドのお守りは俺が適当に作ったものだ。あれはともかく、古の女神像に聖女のポーションまで効かなかったとなると、もう、他に効く薬を探すのは難しそうだ。

「昨日、少し目を離した隙に外に出ていて、こんな状態になっていたんだ…」
「そ、そうですか。野生動物は最期を察知すると隠れるって言いますもんね」
「おいお前っ、縁起でもないこと言うなっ!!」
「す、すみません…!!」

 男は俺の胸倉をつかんだ…。しまった、俺にとってはただの蛇だが、バルちゃんはこいつにとって家族なんだ…!

「しゅ…しゅうぅ…」
「バ、バルちゃんっ!!」

 バルちゃんがちょっとだけ唸った。少し呻くと、どろどろしている液体が床に垂れて「じゅ…」って鳴るからものすごく恐ろしいし、なんだかすごく空気が重い!

 あの液体、絶対身体によくないよ。それでこの男、痩せてるんじゃあ…。

 男はバルちゃんに駆け寄り、真剣に話しかけている。

「バルちゃんどうした?!」
「しゅ、しゅうぅ……」
「うんうん、分かった。この男がバルちゃんを治せるんだね?」
「へ?!」
 
 なにコイツ!好きが高じて、蛇語が通じちゃってる!どうなってんだ?!

 それに、暗黒神オルドのお守りが効かなかったってことは俺じゃ治せないと思うけど。家主の男の目がキラキラ輝いていて、断れそうにない…。

 仕方なく俺は、バルちゃんの回復を願い祈祷を行った。

「しゅ…、…っ!」
「バ、バルちゃんーー?!バルちゃん…?!」

 祈祷を行うと、バルちゃんは目に見えて弱った。みんなこれで性病にもならないって言ってたけど、なんで?!蛇には効かないの?!

「貴様ー!なんてことを!!」
「ひいい!!」
「しゅ…!」
「バルちゃん?!」

 俺の胸倉をつかんだと思ったら、また男がバルちゃんのそばに駆け寄る。忙しい男だ…。

「しゅ…しゅ…」
「うんうん、なるほど、やり方が違うんだね?」

 やり方が違う…?祈祷とは違う、回復方法があるのか?

「おいお前!ちがうやり方を試してみろ!」
「いや、これしかやったことないです」
「いいからやれ!」
「でも今度はバルちゃんにとどめ差しちゃうかもしれないですよ!?」
「じゃあやり方を調べて出直せ!すぐにだ!」
「えええええ…」

 だってこのばっちいへびを治すために、調べる…?俺、子供たちの世話もあるし、偽オルド問題もあるし、すっごい忙しいんだけど。

 俺が難色を示すと、部屋の扉がばーんと開いた。

「バルちゃんを助けてあげてっ!!!!」
「え、リオ…?」

 玄関ホールに待たせていたはずのリオがいつのまにかやってきて、扉を開けて叫んだ。後ろにいるカイとクレイもうんうんとうなずいている。

「で、でもさ…、蛇だよ?蛇のお医者さんなんて、聞いたことないし」
「魔法があるでしょ!諦めないでっ!」
「いやでも、蛇だし…」
「蛇じゃない、バルちゃんっ!」
「いやだからバルちゃんはね、爬虫類…」
「じゃあさ、リオが同じ病気になったら、ノワールはリオを見捨てるのっ?!」
「リオは人間だろ、一緒じゃない」
「一緒だよ!おじさんにとってバルちゃんは家族なんだよ!」

 リオは涙ながらに俺に訴えた。ど、どうして、そんなに…?

「リオも、いっぱい家族いるから、わかるもんっ!!」

 リオはポケットをごそごそすると、錆び付いた真鍮の入れ物を取り出した。大きさは手のひら大。リオが蓋を開けると、入れ物の中になにやら黒いものがぎっしり詰まっているのが見えた。

「リオ―、なんだそれえっっ!?!?!?」

 ひいいいいいい!

 なんか黒いものが小さく丸くなって、ころころしちゃってるしっ、ぐにぐにと動いてるやつもいるぅ!!!!

 入れ物のなか、ぜんぶ、ダンゴムシだぁーー!!

 ぎゃあーーっ!

「ダンゴムシは家族じゃないだろ!!!!」
「家族だもん!去年からずっと一緒にいるもん!!ご飯もあげて、家族も増えてるもん!みんな、すっごいかわいいもん!」
「かわいくないかわいくない!そんでもって増やすな、増やすな!餌もあげるな!」
「餌じゃ無い、ごはん!」
「餌だろっ!」
「違うもんっ!」

 子供三人と猫一匹と暮らしてるはずが、うっかり去年からダンゴムシとも同居してて大家族だったぁ~!

 家主の男は、リオの台詞に感動して、リオを抱きしめた。

「なんていい子なんだあっ!リオ君はっ!そうだよな!一緒に暮らしてたら自分の家族だ!その子たちは、世界一かわいいよな!!」

 涙まで流して、意気投合してるぅ~…!

 猫とか犬ならかわいいし、気持ちも少しはわかるけど…。

 カイもクレイも、その後ろから、俺をじっとりと見ていた。あいつら、ルナちゃんを可愛がってたのに、すっかり、ゲテモノ一派に加わってるし!

 俺っ、四対一なんだが?!
 
 常識人の俺が、ちょっと悪者じゃない?!納得いかないんですけど?!


「ノワール、バルちゃんを治す方法を探してきてよ!」
「いやでも、もう夜遅いし…。みんなも、ご飯食べて寝ないとだろ?」
「じゃあ、こうするのはどうだ?バルちゃんを治す方法が分かるまで子供たちはこの家に泊まる。食事と、寝床を提供しよう」
「でも、孤児院にはルナちゃんがいるから餌をあげるためにも帰りたいです。魔法全集も孤児院にあるし。…それに、この邸は…」

 この屋敷はあの怪しげな黒いものを吐く蛇がいて、健康を害する可能性がある。

 しかし、リオはこの男が気に入ったらしく、俺が渋るとぷうっと膨れた。その様子を見た年長のカイが助け舟を出す。

「夜道を移動するのは怖いし、もう眠い。ノワールだけ孤児院に帰ってルナちゃんに餌をあげるついでに、魔法も調べればいいんじゃない?」

 みんな、俺一人で行ってこいと、そういうこと…?!確かにバルちゃんは一刻を争う状況だし、子供達を預かってもらった方が行動しやすいけど。

 俺は、家族じゃないのかよ…!もう少し優しくしてっ!

 複雑な気持ちになったが、家賃の支払いを免除してもらった手前、しぶしぶ頷いた。

「……わ、分かったよ。じゃあ、子供たちは、バルちゃんには触らない、部屋には近寄らないこと。それは守れる…?」
「「「うん、わかった」」」

 あと、ダンゴムシは捨てて、いや、野に帰してほしいけど…。言い出せなかった。

「じゃあ、子供たちを頼みます!子供たちにもし、万が一のことがあったらバルちゃんは…。いいですね?」
「大丈夫だよ!小動物をかわいがる人に悪人はいないんだからあ~!」

 年長のカイはわかったような口ぶりで、俺の背中を叩いた。

 脳裏に、コンラッドの優しい笑顔が浮かぶ。

 …確かに、一理ある。


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