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21 ドヘンタイ王国に行きました!
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喪子さんの母親は過去に起こった慰安婦問題、日常生活に溢れる性暴力、そして世界中で続いている戦時下における性暴力の問題について取り組む社会運動家だった。
ところが性暴力を男の特権だと勘違いした男社会の魔の手によって、そうした社会運動は潰され、喪子さんの母親は魔女裁判のごとく男たちから吊るし上げられた。
「奏くん、エレンくん……お願いだから力を貸して。どうか私と一緒に母さんを助けて欲しいの!」
AVに出演強要された時でも冷静を保っていた喪子さんが泣きっ面で藁にもすがる勢いで僕たちに頼み込んできた。
「お、おう……なんだか大変な状況のようだなぁ。今、母親はどこにいるんだ?」
エレンくんは赤ん坊の世話をしながら喪子さんに尋ねる。
「母さんのいる場所に心当たりがあるから私について来て。赤ちゃんの世話は戸史間さんたちがやってくれるから♡」
喪子さんの言うことに戸史間さんと出武杉さんは一瞬ギョッとしたが、すぐに承諾してくれた。
「よ~し、喪子さんのママを絶対に救出してみせるぞ! たまには僕も男らしいところ見せなきゃね♡」
「まあ、その……奏くんはあんまり無理しないでねwww」
喪子さんは心配そうに苦笑いすると、僕の手を握りながらエレンくんを目的地まで案内する。その道中、喪子さんは男尊女卑な悪魔たちによる母への酷い仕打ちの数々を語って聞かされてくれた。
ーーー
昨晩――。
女手ひとつで子どもを育ててきた愛する母と久しぶりに安らいだ一時を過ごしていた喪子さんは異変に気がついた。
「母さん?」
喪子さんは母親の全身に緊張が漲るのを敏感に察した。
「し……」
人差し指に唇を当てて見せてから、母親はベッドを降りて部屋の扉に耳を寄せる。微かに響いてくる話し声の中から意味の分かるいくつかの言葉を聞き取り、母親はかねてから危惧していたことが現実になったことを知った。
穏やかな表情のままでベッドに戻り、母親は喪子さんを愛しげに見つめる。
「喪子、よく聞いて。もうすぐここにヤバイ男たちが来るけど、怯えたり泣いたりしちゃダメだからね。母さんは平気だから、何があっても平気だから、絶対に泣いちゃダメ。喪子は強い女の子だから大丈夫でしょ?」
喪子さんの問いかけに強く喪子さんはうなずいた。
「それじゃあ、ベッドの下に隠れて。明日の朝になるまで絶対に出てきちゃダメ。分かった?」
念を押してから、母親は喪子さんをベッドの下に潜らせる。
立ち上がって振り向いた母親の目の前で勢いよく扉が開いた。数人の男が乱入し、たちまち母親を取り囲む。
「何者かは知らないけど、夜に女の部屋へ断わりもなく押し入るなんてどういう了見だい?」
落ち着き払った声で叱咤する母親に何を思ったのか、黒い覆面をつけたリーダー格の男が笑った。
「久しぶりだなぁ~、喪子は元気か?」
妙に馴れ馴れしい声で男は言ったが、母親の方は怪訝そうに顔を顰めただけである。
「まさか元夫のことを忘れちまったのか? そりゃあ、ないぜwww」
そう言うと、男は覆面を脱いだ。その顔を見た途端、母親の顔が見るみるうちに青ざめていった。
「どうやら思い出したみたいだなぁ。オレが初めてお前を抱いたのは、確かお前が中学生の時だった。お前はまだ本当に小さくて、オレのモノが中で動くたびに悲鳴をあげて、それはそれは可愛かったぜ。それからというもの、オレはお前を抱き続けた。お前と離婚するまでの間、何度お前の中に精液を注ぎ込んでやったことかwww」
「言うな! あんたみたいな男を家族だと思ったことはないッ! 実の娘からも見捨てられた父親失格の男が今さら何しに来たの⁉︎」
元夫は母親の問いを無視して大股に歩み寄ると、俊敏な動きで元妻の上衣の襟もとに手をかけ、力任せに引き裂いた。上衣は乾いた音とともに左右に開け、胸が露になる。
「女の分際で男に楯突くような活動をすると、どうなるか教えに来てやったんだろうが。今も昔も女なんて生き物は所詮オレたち男を満足させるための慰安婦でしかないのさ。女である限り、慰安婦としての役割から逃れることなど出来ないと悟るんだなぁwww」
じりじりと母親ににじり寄る男たちは全員が異常だった。薄汚れていて、殺伐としているのに、その双眸だけが爛爛と輝きを放っている。あえて例えるなら、それは手負いの野獣の姿であった。
「ひッ――」
無理やり床の上に押しつけられた母親は、次々と取り出される男たちの異常なペニスを見て驚愕の悲鳴をあげた。
赤黒く腫れあがっているもの、白や紫の斑点のあるもの、まるで腐りかけているかのように黒ずんで亀頭から黄色い粘液を滴らせるもの。どれも異様で醜く、健康な男のものとは到底思えない。
「どうだ? 素晴らしいだろう。この男たちはレイプのし過ぎで全員が重い性病を患っていてな。それも症状の激しいきわめつけのやつで、誰かに感染すのが三度の飯より大好きな変態ばかりだ。たった一晩で、お前はあらゆる性病を感染されることになる。どんなに卑しく、堕落した娼婦でも、ここまで無残な経験はなかなかできるものじゃないぞ。さあ、たっぷりと性病チンポを味わうがいいwww」
元夫の高笑いが響くと、喪子さんは愛する母への酷い仕打ちに精神崩壊を起こし、その場で意識を失った。
ーーー
「そんなことがあったなんて……酷い、酷すぎるよ……」
社会的弱者に寄り添う活動をしていただけで魔女狩りのように男たちから迫害されるなんて世の中どうかしてるとしか思えないけれど、これが現実なのだ。
性暴力の加害者が罰せられることは殆どなく、むしろ被害者の方が悪者として叩かれ、男たちから吊るし上げを食らっても耐えるしかない現状に絶望しながら生きている人が大勢いる。
でも、喪子さんのママだけでも助けてあげたい。
そうこうしているうちに僕たちは目的地のドヘンタイ王国の都にたどり着いた。
ドヘンタイ王国とは埼玉と東京の間にある、私立の国家だ。市町村単位でいう「市」くらいの大きさで、言語は日本語が使用されている。建前上は「観光地」で、日本の一部なのだが、超法規的に独立と自治を認められているのだ。
王国内ではωや女は男に対して常時性的奉仕が義務付けられており、まさしく戦時中の慰安婦(慰安夫)のような生活を余儀なくされていた。
打ち鳴らされる太鼓やラッパの音が通りに響く。
その音をかき消すほどの大歓声が通りを、都を埋め尽くした。
「どうやら男たちへの性的奉仕の時間みたい。見てごらん、ωの男の子たちが磔にされてるwww」
ωの男の子たちが全裸で両手を高く掲げさせられた姿を、喪子さんが食い入るように見つめる。
「ねえ、よく見て。女の人もいるみたいだけど……」
僕が言うと、一瞬にして喪子さんは顔面蒼白になった。
劣情を剥き出しにした無数の視線が、喪子さんの母親の全身に突き刺さっていた。
圧倒的なまでの邪な感情をぶつけられ、喪子さんの母親も顔面蒼白になっている。
喪子さんの存在に気がついた母親は拘束具を外そうと抵抗した。だがもちろん、人の手で壊せるような代物ではない。
そして、そうやってあがけばあがくほど、その懸命な姿を民衆に指差されて笑われてしまう。
エレンくんは喪子さんの母親を見つけると、一瞬にして突入していった。
鬨の声さえない奇襲だった。
むしろ、声をもらしたのは、ふいをつかれ事態を把握する暇もなかった男たちの方だった。
性感ばかりを高め色香に溺れていた男など何十人いようが、エレンくんの敵ではなかった。
瞬時のうちに男たちはエレンくんの拳の餌食となった。
エレンくんの人間離れした怪力で拘束具を破壊すると、喪子さんの母親とωの男の子たちを解放することに成功した。
男たちから感染された性病のせいで衰弱しきっていた母親をすぐに病院に連れて行くと、数日で何とか命に別状はないレベルまで回復することができた。
喪子さんは愛する母をここまで追い詰めた実の父に対する復讐心をバネにして、理不尽な男社会を生き抜く決意を改めて固めるのだった。
ところが性暴力を男の特権だと勘違いした男社会の魔の手によって、そうした社会運動は潰され、喪子さんの母親は魔女裁判のごとく男たちから吊るし上げられた。
「奏くん、エレンくん……お願いだから力を貸して。どうか私と一緒に母さんを助けて欲しいの!」
AVに出演強要された時でも冷静を保っていた喪子さんが泣きっ面で藁にもすがる勢いで僕たちに頼み込んできた。
「お、おう……なんだか大変な状況のようだなぁ。今、母親はどこにいるんだ?」
エレンくんは赤ん坊の世話をしながら喪子さんに尋ねる。
「母さんのいる場所に心当たりがあるから私について来て。赤ちゃんの世話は戸史間さんたちがやってくれるから♡」
喪子さんの言うことに戸史間さんと出武杉さんは一瞬ギョッとしたが、すぐに承諾してくれた。
「よ~し、喪子さんのママを絶対に救出してみせるぞ! たまには僕も男らしいところ見せなきゃね♡」
「まあ、その……奏くんはあんまり無理しないでねwww」
喪子さんは心配そうに苦笑いすると、僕の手を握りながらエレンくんを目的地まで案内する。その道中、喪子さんは男尊女卑な悪魔たちによる母への酷い仕打ちの数々を語って聞かされてくれた。
ーーー
昨晩――。
女手ひとつで子どもを育ててきた愛する母と久しぶりに安らいだ一時を過ごしていた喪子さんは異変に気がついた。
「母さん?」
喪子さんは母親の全身に緊張が漲るのを敏感に察した。
「し……」
人差し指に唇を当てて見せてから、母親はベッドを降りて部屋の扉に耳を寄せる。微かに響いてくる話し声の中から意味の分かるいくつかの言葉を聞き取り、母親はかねてから危惧していたことが現実になったことを知った。
穏やかな表情のままでベッドに戻り、母親は喪子さんを愛しげに見つめる。
「喪子、よく聞いて。もうすぐここにヤバイ男たちが来るけど、怯えたり泣いたりしちゃダメだからね。母さんは平気だから、何があっても平気だから、絶対に泣いちゃダメ。喪子は強い女の子だから大丈夫でしょ?」
喪子さんの問いかけに強く喪子さんはうなずいた。
「それじゃあ、ベッドの下に隠れて。明日の朝になるまで絶対に出てきちゃダメ。分かった?」
念を押してから、母親は喪子さんをベッドの下に潜らせる。
立ち上がって振り向いた母親の目の前で勢いよく扉が開いた。数人の男が乱入し、たちまち母親を取り囲む。
「何者かは知らないけど、夜に女の部屋へ断わりもなく押し入るなんてどういう了見だい?」
落ち着き払った声で叱咤する母親に何を思ったのか、黒い覆面をつけたリーダー格の男が笑った。
「久しぶりだなぁ~、喪子は元気か?」
妙に馴れ馴れしい声で男は言ったが、母親の方は怪訝そうに顔を顰めただけである。
「まさか元夫のことを忘れちまったのか? そりゃあ、ないぜwww」
そう言うと、男は覆面を脱いだ。その顔を見た途端、母親の顔が見るみるうちに青ざめていった。
「どうやら思い出したみたいだなぁ。オレが初めてお前を抱いたのは、確かお前が中学生の時だった。お前はまだ本当に小さくて、オレのモノが中で動くたびに悲鳴をあげて、それはそれは可愛かったぜ。それからというもの、オレはお前を抱き続けた。お前と離婚するまでの間、何度お前の中に精液を注ぎ込んでやったことかwww」
「言うな! あんたみたいな男を家族だと思ったことはないッ! 実の娘からも見捨てられた父親失格の男が今さら何しに来たの⁉︎」
元夫は母親の問いを無視して大股に歩み寄ると、俊敏な動きで元妻の上衣の襟もとに手をかけ、力任せに引き裂いた。上衣は乾いた音とともに左右に開け、胸が露になる。
「女の分際で男に楯突くような活動をすると、どうなるか教えに来てやったんだろうが。今も昔も女なんて生き物は所詮オレたち男を満足させるための慰安婦でしかないのさ。女である限り、慰安婦としての役割から逃れることなど出来ないと悟るんだなぁwww」
じりじりと母親ににじり寄る男たちは全員が異常だった。薄汚れていて、殺伐としているのに、その双眸だけが爛爛と輝きを放っている。あえて例えるなら、それは手負いの野獣の姿であった。
「ひッ――」
無理やり床の上に押しつけられた母親は、次々と取り出される男たちの異常なペニスを見て驚愕の悲鳴をあげた。
赤黒く腫れあがっているもの、白や紫の斑点のあるもの、まるで腐りかけているかのように黒ずんで亀頭から黄色い粘液を滴らせるもの。どれも異様で醜く、健康な男のものとは到底思えない。
「どうだ? 素晴らしいだろう。この男たちはレイプのし過ぎで全員が重い性病を患っていてな。それも症状の激しいきわめつけのやつで、誰かに感染すのが三度の飯より大好きな変態ばかりだ。たった一晩で、お前はあらゆる性病を感染されることになる。どんなに卑しく、堕落した娼婦でも、ここまで無残な経験はなかなかできるものじゃないぞ。さあ、たっぷりと性病チンポを味わうがいいwww」
元夫の高笑いが響くと、喪子さんは愛する母への酷い仕打ちに精神崩壊を起こし、その場で意識を失った。
ーーー
「そんなことがあったなんて……酷い、酷すぎるよ……」
社会的弱者に寄り添う活動をしていただけで魔女狩りのように男たちから迫害されるなんて世の中どうかしてるとしか思えないけれど、これが現実なのだ。
性暴力の加害者が罰せられることは殆どなく、むしろ被害者の方が悪者として叩かれ、男たちから吊るし上げを食らっても耐えるしかない現状に絶望しながら生きている人が大勢いる。
でも、喪子さんのママだけでも助けてあげたい。
そうこうしているうちに僕たちは目的地のドヘンタイ王国の都にたどり着いた。
ドヘンタイ王国とは埼玉と東京の間にある、私立の国家だ。市町村単位でいう「市」くらいの大きさで、言語は日本語が使用されている。建前上は「観光地」で、日本の一部なのだが、超法規的に独立と自治を認められているのだ。
王国内ではωや女は男に対して常時性的奉仕が義務付けられており、まさしく戦時中の慰安婦(慰安夫)のような生活を余儀なくされていた。
打ち鳴らされる太鼓やラッパの音が通りに響く。
その音をかき消すほどの大歓声が通りを、都を埋め尽くした。
「どうやら男たちへの性的奉仕の時間みたい。見てごらん、ωの男の子たちが磔にされてるwww」
ωの男の子たちが全裸で両手を高く掲げさせられた姿を、喪子さんが食い入るように見つめる。
「ねえ、よく見て。女の人もいるみたいだけど……」
僕が言うと、一瞬にして喪子さんは顔面蒼白になった。
劣情を剥き出しにした無数の視線が、喪子さんの母親の全身に突き刺さっていた。
圧倒的なまでの邪な感情をぶつけられ、喪子さんの母親も顔面蒼白になっている。
喪子さんの存在に気がついた母親は拘束具を外そうと抵抗した。だがもちろん、人の手で壊せるような代物ではない。
そして、そうやってあがけばあがくほど、その懸命な姿を民衆に指差されて笑われてしまう。
エレンくんは喪子さんの母親を見つけると、一瞬にして突入していった。
鬨の声さえない奇襲だった。
むしろ、声をもらしたのは、ふいをつかれ事態を把握する暇もなかった男たちの方だった。
性感ばかりを高め色香に溺れていた男など何十人いようが、エレンくんの敵ではなかった。
瞬時のうちに男たちはエレンくんの拳の餌食となった。
エレンくんの人間離れした怪力で拘束具を破壊すると、喪子さんの母親とωの男の子たちを解放することに成功した。
男たちから感染された性病のせいで衰弱しきっていた母親をすぐに病院に連れて行くと、数日で何とか命に別状はないレベルまで回復することができた。
喪子さんは愛する母をここまで追い詰めた実の父に対する復讐心をバネにして、理不尽な男社会を生き抜く決意を改めて固めるのだった。
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