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328 変態ポリコレ論
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今更だが、やっと僕は入手困難だった某国民的人気漫画の最終巻をゲットした。
数え切れないほどの書店を巡り巡って、ようやく手に入れ、僕はついに全巻読破を達成したのであった。
「ふぅ……全部読み終わった」
「アキラ的にはどうだった?」
事前にネットでネタバレを見て結末を知っていたリョウに感想を求められる。
「……まあまあかなぁ」
何とも言語化しにくい微妙な感覚に陥ってしまった僕はぎこちない感想を述べる。
「おう……いろいろ思うところはあったが、まあまあなラストではあったよなぁ」
リョウは微妙な表情を浮かべながら相槌を打った。
僕は本作において前々から思っていたことを吐露する。
「何というか、多くの自己犠牲によって成し遂げた勝利というものに僕は意味が感じられないんだよね。そのせいでイマイチ感動できないっていうか、なんか虚しい感じがする……」
ネット上でも某国民的人気漫画の登場人物たちが特攻隊に見えるといった意見をチラホラと見かけた。
もしかしたら未だに我が国には、こうしたブラック企業的な滅私奉公の精神が根強いのかもしれない。
「アキラの言いたいこと分かるぜ。リーダーは妻子もろとも自爆するし、下っ端なんかも特攻し過ぎで思わずドン引きするほどの旧態依然とした価値観で描かれた漫画なんだよなぁ。男らしさを史上とする俺でさえ、死を当然とした自己犠牲を肯定するようなマッチョイズムには同意できないぜ」
リョウの言う通りで、実はネット上でも同様の批判の声が数多く上がっていた。
『このような漫画・アニメに影響を受けた子供が、将来ブラック企業で働くようになってしまわないかが心配』
『リーダーも下級兵もみんな特攻する突き抜けたマッチョで、「長男は死んでも戦え」という話なのに、なんで女子小中学生に人気なんだろ』
『ブラック企業まんまじゃん。暴力がまかり通ってるし、個人の自由なんてものはないし、何かいい声出す社長みたいヤツのためなら死ねる宗教めいたところとか、完全にブラック企業で見てられなかった』
上記はネット上の批判意見を引用したものだが、概ね的を得た指摘だとは思う。
正直、本作で良かったのはキャラの容姿とファッションだけでストーリー自体は決していいものではない。
無論、アニメや映画のクオリティが高いのは客観的事実であり、多くの人々が惹きつけられるのも理解はできるが、名作とは到底言い難いというのが僕の本音だ。
海外展開が今よりも進んでいけば、そのうちポリコレ棒で盛大に殴られる日も残念ながら近いだろう。
ジ◯リ以外の日本産アニメはポリコレ棒で殴られることが大変多いが、おそらくジェンダー表現に何らかのクレームがつくことは間違いないと断言しよう。……と、ここまで偉そうに書いておいて何だが、試しにネット上で検索してみたところ、ジェンダー表現に関しては随分と早い段階で批判されていたようだ。
普段はあまりネットの評価は気にしないのでエゴサーチはしないのだが、けっこう批判意見が多いことに驚きが隠せない。決して嫌いな漫画ではないんだけどなぁ……。
「おっぱいボインボインの女は出てくるわ、『男なら~』とか『長男だから~』といったステレオタイプの役割を押し付けたり、敵を倒すためなら自分の命ですら簡単に捨てることを当然の大前提にしてたり、はっきり言ってポリコレ的には完全アウトだろうなぁ。日本でさえ、そうした批判意見が出るなら海外だと逆にどんな批判をされるのか気になるぜwww」
「良くも悪くも登場人物がジェンダーロールに忠実なイケメン、美人しか出てこないんだよね。日本はジェンダーに関しては男女ともに世界で最も保守的な国だと思うwww」
日本的な性役割は我が国の伝統なんだろうけど、そこから逸脱した作品があっても別にいいんじゃないかと思う。と言っても、そうした作品が我が国で売れるかどうかは分からないが……。
「誰しもが理想的なヒーロー、ヒロインを求めてるのさ。日曜日の朝からゴロゴロしてるような男らしくないヒーローがいるか? 男に依存してるだけの女らしくないワガママなヒロインなんか必要か? 結局の話、日本人はジェンダーロールに忠実な男女を理想としてるのさ」
今のリョウの話を聞いて思い出したことがある。前にネット上で「性役割から降りた男は女の敵になる」という面白いことを言っている女性がいた。女の腐ったような男は他者に依存的で誰彼構わず利用しようとするから女にとっては始末に負えない存在になるそうだ。彼女曰く、男らしくない男と関わるとろくなことがないらしいwww
マンパワーを持たない男や、女らしくない女には地獄のような話だが、そんな国だからこそ国民的大ヒット作品として世を席巻したのだろう。
願わくば、もう少しだけ今よりジェンダー表現が柔らかい作品が増えることを望んでいるが、そう思うと同時に我が国では到底無理だという諦めに近い感情も湧き上がってしまい、仕方なく僕は今日もBLを漁りまくるのだった。
数え切れないほどの書店を巡り巡って、ようやく手に入れ、僕はついに全巻読破を達成したのであった。
「ふぅ……全部読み終わった」
「アキラ的にはどうだった?」
事前にネットでネタバレを見て結末を知っていたリョウに感想を求められる。
「……まあまあかなぁ」
何とも言語化しにくい微妙な感覚に陥ってしまった僕はぎこちない感想を述べる。
「おう……いろいろ思うところはあったが、まあまあなラストではあったよなぁ」
リョウは微妙な表情を浮かべながら相槌を打った。
僕は本作において前々から思っていたことを吐露する。
「何というか、多くの自己犠牲によって成し遂げた勝利というものに僕は意味が感じられないんだよね。そのせいでイマイチ感動できないっていうか、なんか虚しい感じがする……」
ネット上でも某国民的人気漫画の登場人物たちが特攻隊に見えるといった意見をチラホラと見かけた。
もしかしたら未だに我が国には、こうしたブラック企業的な滅私奉公の精神が根強いのかもしれない。
「アキラの言いたいこと分かるぜ。リーダーは妻子もろとも自爆するし、下っ端なんかも特攻し過ぎで思わずドン引きするほどの旧態依然とした価値観で描かれた漫画なんだよなぁ。男らしさを史上とする俺でさえ、死を当然とした自己犠牲を肯定するようなマッチョイズムには同意できないぜ」
リョウの言う通りで、実はネット上でも同様の批判の声が数多く上がっていた。
『このような漫画・アニメに影響を受けた子供が、将来ブラック企業で働くようになってしまわないかが心配』
『リーダーも下級兵もみんな特攻する突き抜けたマッチョで、「長男は死んでも戦え」という話なのに、なんで女子小中学生に人気なんだろ』
『ブラック企業まんまじゃん。暴力がまかり通ってるし、個人の自由なんてものはないし、何かいい声出す社長みたいヤツのためなら死ねる宗教めいたところとか、完全にブラック企業で見てられなかった』
上記はネット上の批判意見を引用したものだが、概ね的を得た指摘だとは思う。
正直、本作で良かったのはキャラの容姿とファッションだけでストーリー自体は決していいものではない。
無論、アニメや映画のクオリティが高いのは客観的事実であり、多くの人々が惹きつけられるのも理解はできるが、名作とは到底言い難いというのが僕の本音だ。
海外展開が今よりも進んでいけば、そのうちポリコレ棒で盛大に殴られる日も残念ながら近いだろう。
ジ◯リ以外の日本産アニメはポリコレ棒で殴られることが大変多いが、おそらくジェンダー表現に何らかのクレームがつくことは間違いないと断言しよう。……と、ここまで偉そうに書いておいて何だが、試しにネット上で検索してみたところ、ジェンダー表現に関しては随分と早い段階で批判されていたようだ。
普段はあまりネットの評価は気にしないのでエゴサーチはしないのだが、けっこう批判意見が多いことに驚きが隠せない。決して嫌いな漫画ではないんだけどなぁ……。
「おっぱいボインボインの女は出てくるわ、『男なら~』とか『長男だから~』といったステレオタイプの役割を押し付けたり、敵を倒すためなら自分の命ですら簡単に捨てることを当然の大前提にしてたり、はっきり言ってポリコレ的には完全アウトだろうなぁ。日本でさえ、そうした批判意見が出るなら海外だと逆にどんな批判をされるのか気になるぜwww」
「良くも悪くも登場人物がジェンダーロールに忠実なイケメン、美人しか出てこないんだよね。日本はジェンダーに関しては男女ともに世界で最も保守的な国だと思うwww」
日本的な性役割は我が国の伝統なんだろうけど、そこから逸脱した作品があっても別にいいんじゃないかと思う。と言っても、そうした作品が我が国で売れるかどうかは分からないが……。
「誰しもが理想的なヒーロー、ヒロインを求めてるのさ。日曜日の朝からゴロゴロしてるような男らしくないヒーローがいるか? 男に依存してるだけの女らしくないワガママなヒロインなんか必要か? 結局の話、日本人はジェンダーロールに忠実な男女を理想としてるのさ」
今のリョウの話を聞いて思い出したことがある。前にネット上で「性役割から降りた男は女の敵になる」という面白いことを言っている女性がいた。女の腐ったような男は他者に依存的で誰彼構わず利用しようとするから女にとっては始末に負えない存在になるそうだ。彼女曰く、男らしくない男と関わるとろくなことがないらしいwww
マンパワーを持たない男や、女らしくない女には地獄のような話だが、そんな国だからこそ国民的大ヒット作品として世を席巻したのだろう。
願わくば、もう少しだけ今よりジェンダー表現が柔らかい作品が増えることを望んでいるが、そう思うと同時に我が国では到底無理だという諦めに近い感情も湧き上がってしまい、仕方なく僕は今日もBLを漁りまくるのだった。
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