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339 変態ランナー
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できない子を平均値まで持っていくために教師が努力するのは義務教育までらしい。
できない学生を情け容赦なく切るのが大学教育であり、もっと言うなら大学の教授たちは本来先生などではない。本業は研究者で専門分野に興味を持った学生に知識を分け与えているに過ぎないのだ。
そんな大学教育から切り捨てられたのが僕だ。
僕の学歴は事実上高卒であり、大学は卒業していない。
僕にとって大学教育は困難の連続だった。履修登録に試験にレポートにグループワークとやるべき事は多く、それらを十全にこなすことは頭がすこぶる悪い僕には不可能であった。
ドロップアウトした僕は生産性のない人間となり、リョウに養われることになった。
働いて結婚して子を産み家庭を設けるのが『生産性のある人』として価値ある人間とされる一方、働けず結婚もできず子を産めない(作らない)人たちが『生産性のない人』として無価値な人間とされる風潮を疑問に思うのは僕だけではないはずだ。
『生産性』などと視野の狭い基準を持ち出して、同性愛者や障害者や子供がいない女性が差別されるような現状は断じて許されるべきではないだろう。
だが、残念ながら生産性のない人間に発言権はなく、今日も隠れるように僕たちは日陰の中で生き続ける。
「それにしても今日も僕の日常は何の生産性もなかったなぁ……」
生産性のあることをしない、もしくはやれない人間は消費することしか出来ない。
最近の僕はいかに楽しく金を使うかばかりを考えており、消費する以外には何も出来ないウ◯コ製造機と化している。
でも、ウ◯コを捻り出せるうちはまだ健康な証であり、ウ◯コさえ出来なくなったら人生終わりだ。むしろ、ウ◯コやセックスするだけの人生の何が悪いのだろうか?
そんなことを考えながら僕はトイレで用をたす。
我ながら実にしょうもないことを考えていると思うが、今の僕はそれだけ閉鎖的で退屈な世界で生きているのだ。
ウ◯コとセックス以外で僕が愛するリョウに提供できるものなどあるのだろうか?
「お~い、アキラ。いつまでトイレの中で籠城してんだ?」
そう言うと、リョウはトイレの個室のドアをノックした。
「うるさいなぁ、トイレぐらいゆっくりさせてよね」
「そんなにウ◯コの切れが悪いのか?」
「べ、別に……そういうわけじゃないんだからね!」
「そういうわけじゃないなら早く出てこいよ」
トイレの中で考え事をする癖がある僕はいつもこうやってリョウに早く出るよう催促される。
「リョウ……僕、ウ◯コしか捻り出せないや……」
「なんだよ、唐突にwww」
「ウ◯コしか生み出せない自分に僕は心底絶望してるんだよ……」
「いや、誰だってウ◯コはするだろwww」
ここのところ、僕は漠然とした虚無感に苛まれ、わりとメンヘラ気味なのだ。
「ま~たメンヘラ気味なのか?」
「またメンヘラ気味なんですぅ……」
「やれやれ……困ったなぁ。とりあえず、出てこいよ」
トイレから出てきた僕をリョウはいつものようにベッドへと誘う。
「今回アキラのメンがヘラってる理由はなんだ?」
「うん……ウ◯コ以外のモノを生み出せない自分が嫌になってきたんだ」
「おいおい、何じゃそりゃwww」
面食らうリョウを無視して僕は話し始める。
「生産性でしか人を見ない人間を信用できなくなってきたんだ。もう男同士の友情なんかも信用できない……」
僕の言にリョウはしばし無言になった。
「いいか、アキラ。鬱病は心だけの問題ではなく、身体にもストレスが溜まっている状態なんだ。だからこそ運動でストレスを発散させるのが一番だぜ!」
リョウは僕の手を引くと、自宅にあるルームランナーまで強制的に連れて行かれた。
「これからアキラには2時間以上走ってもらう。有酸素運動は鬱病に効果的だからなぁ。俺も元気がない時ほど走りまくるぜ♡」
そう言うと、リョウはルームランナーのスタートボタンを押す。
僕は振り落とされないように慌てて足早に動いた。
リョウは僕が走り始めると、ルームランナーの起動音に負けないほどの大音量でアニソンを流す。
音楽の力でモチベーションが上がった僕はフォームを整えてランニングに集中する。
限界を超えてきた辺りでランナーズハイが起き、苦痛が快感に変わった。
「なんだかセックス並みに気持ちよくなってきたぁ~ッ!!!」
ランナーズハイをもたらせる物質は体内で生成される脳内麻薬らしく、今まさに僕の全身をマリファナ並みの快楽が駆け巡っていた。
「あぁ~ん、気持ち良すぎてイクぅぅぅぅッ!!!」
僕は身体中から汗を撒き散らしながら絶頂の真っ只中にいた。
ランニングがセックス並みの快楽を与えてくれるとは今まで知らなかった。
「運動不足は心身の不調の元凶だ。コ◯ナ禍で自宅に引きこもりがちな今だからこそ運動で身体をリフレッシュさせるんだ」
2時間15分ぐらい走った後、お風呂で汗を流すと適度な疲れが僕の身体を癒し、そのまま深い眠りへと僕を誘うのだった。
できない学生を情け容赦なく切るのが大学教育であり、もっと言うなら大学の教授たちは本来先生などではない。本業は研究者で専門分野に興味を持った学生に知識を分け与えているに過ぎないのだ。
そんな大学教育から切り捨てられたのが僕だ。
僕の学歴は事実上高卒であり、大学は卒業していない。
僕にとって大学教育は困難の連続だった。履修登録に試験にレポートにグループワークとやるべき事は多く、それらを十全にこなすことは頭がすこぶる悪い僕には不可能であった。
ドロップアウトした僕は生産性のない人間となり、リョウに養われることになった。
働いて結婚して子を産み家庭を設けるのが『生産性のある人』として価値ある人間とされる一方、働けず結婚もできず子を産めない(作らない)人たちが『生産性のない人』として無価値な人間とされる風潮を疑問に思うのは僕だけではないはずだ。
『生産性』などと視野の狭い基準を持ち出して、同性愛者や障害者や子供がいない女性が差別されるような現状は断じて許されるべきではないだろう。
だが、残念ながら生産性のない人間に発言権はなく、今日も隠れるように僕たちは日陰の中で生き続ける。
「それにしても今日も僕の日常は何の生産性もなかったなぁ……」
生産性のあることをしない、もしくはやれない人間は消費することしか出来ない。
最近の僕はいかに楽しく金を使うかばかりを考えており、消費する以外には何も出来ないウ◯コ製造機と化している。
でも、ウ◯コを捻り出せるうちはまだ健康な証であり、ウ◯コさえ出来なくなったら人生終わりだ。むしろ、ウ◯コやセックスするだけの人生の何が悪いのだろうか?
そんなことを考えながら僕はトイレで用をたす。
我ながら実にしょうもないことを考えていると思うが、今の僕はそれだけ閉鎖的で退屈な世界で生きているのだ。
ウ◯コとセックス以外で僕が愛するリョウに提供できるものなどあるのだろうか?
「お~い、アキラ。いつまでトイレの中で籠城してんだ?」
そう言うと、リョウはトイレの個室のドアをノックした。
「うるさいなぁ、トイレぐらいゆっくりさせてよね」
「そんなにウ◯コの切れが悪いのか?」
「べ、別に……そういうわけじゃないんだからね!」
「そういうわけじゃないなら早く出てこいよ」
トイレの中で考え事をする癖がある僕はいつもこうやってリョウに早く出るよう催促される。
「リョウ……僕、ウ◯コしか捻り出せないや……」
「なんだよ、唐突にwww」
「ウ◯コしか生み出せない自分に僕は心底絶望してるんだよ……」
「いや、誰だってウ◯コはするだろwww」
ここのところ、僕は漠然とした虚無感に苛まれ、わりとメンヘラ気味なのだ。
「ま~たメンヘラ気味なのか?」
「またメンヘラ気味なんですぅ……」
「やれやれ……困ったなぁ。とりあえず、出てこいよ」
トイレから出てきた僕をリョウはいつものようにベッドへと誘う。
「今回アキラのメンがヘラってる理由はなんだ?」
「うん……ウ◯コ以外のモノを生み出せない自分が嫌になってきたんだ」
「おいおい、何じゃそりゃwww」
面食らうリョウを無視して僕は話し始める。
「生産性でしか人を見ない人間を信用できなくなってきたんだ。もう男同士の友情なんかも信用できない……」
僕の言にリョウはしばし無言になった。
「いいか、アキラ。鬱病は心だけの問題ではなく、身体にもストレスが溜まっている状態なんだ。だからこそ運動でストレスを発散させるのが一番だぜ!」
リョウは僕の手を引くと、自宅にあるルームランナーまで強制的に連れて行かれた。
「これからアキラには2時間以上走ってもらう。有酸素運動は鬱病に効果的だからなぁ。俺も元気がない時ほど走りまくるぜ♡」
そう言うと、リョウはルームランナーのスタートボタンを押す。
僕は振り落とされないように慌てて足早に動いた。
リョウは僕が走り始めると、ルームランナーの起動音に負けないほどの大音量でアニソンを流す。
音楽の力でモチベーションが上がった僕はフォームを整えてランニングに集中する。
限界を超えてきた辺りでランナーズハイが起き、苦痛が快感に変わった。
「なんだかセックス並みに気持ちよくなってきたぁ~ッ!!!」
ランナーズハイをもたらせる物質は体内で生成される脳内麻薬らしく、今まさに僕の全身をマリファナ並みの快楽が駆け巡っていた。
「あぁ~ん、気持ち良すぎてイクぅぅぅぅッ!!!」
僕は身体中から汗を撒き散らしながら絶頂の真っ只中にいた。
ランニングがセックス並みの快楽を与えてくれるとは今まで知らなかった。
「運動不足は心身の不調の元凶だ。コ◯ナ禍で自宅に引きこもりがちな今だからこそ運動で身体をリフレッシュさせるんだ」
2時間15分ぐらい走った後、お風呂で汗を流すと適度な疲れが僕の身体を癒し、そのまま深い眠りへと僕を誘うのだった。
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