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日常編
11 変態お菓子屋さん〜前編〜
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様々なクエストを受けてきたけど、僕の冒険者としてのレベルが上がることはなく、それどころか仲間の足を引っ張っているようにすら感じる今日この頃。
正直、僕には冒険者のような危険な職業は向かない気がする……。
でも、元いた世界のようにヒキニートになってしまってはヒビキに申し訳ない。
そこで僕はこの間、仲良くなった魔王ゼノンのコネで魔王軍幹部が経営するお菓子屋で働くことになった。
早朝から、お客さんの失礼にならない程度に身だしなみをチェックする。
僕は調理室の前で足を止め、ドアを開いた。中では社員が和気藹々と、お菓子作りの準備を始めている。
「君がミライ君だね。魔王様から話を聞いてるよ。そうそう、君と同時期にもう2人、新人が来ることになったんだ」
「新人……どんな人でしょう?」
新人と思われる人影は、後ろのドアからこっそり退室しようとしていた。けれども、一瞬で誰か分かった。
「……ミント? それにヒビキまでいるじゃないッ⁉︎ どうして、ここに?」
「バレちまったか。後でミーティングの自己紹介の時に驚かせてやろうと思ったんだがな」
ヒビキは僕の背後にまわると、フリルのエプロンの帯を結んでくれた。
ヒビキの恰好は今日も甲冑姿で、フリルのエプロンがしっくりこない。腰には剣を携えており、銃刀法違反も何のその。まあ、この世界にそんな法律はないんだろうけど。
「じゃあ早速、生地から作っていこっか」
本日の献立はクッキーだ。
「理想のお菓子とは、見栄えがよく、美味しく、そして低カロリーであること。お菓子作りならボクに任せといて♡」
どうやらミントはお菓子作りの専門知識を豊富に持っているらしい。
ミントの隣で僕も不器用なりにクッキーの生地を捏ねる。はずだったのだが……。
「なかなかミントみたいに固まらないよ。何か手順を間違えちゃったのかな?」
僕が一生懸命やればやるほど、生地は滅茶苦茶に散らかっていた。まだ小麦粉が牛乳や卵と混ざりきってもおらず、粉っぽいうえ、ボウルの中は卵の殻だらけ。
「量も少なくなってきちゃったね。ちょっと増やそうかな」
お次は水を注ぎ、製作途中の生地を極薄に伸ばしてみる。
「……ミライって、料理したことある?」
「あるにはあるんだけど、昔から全然できなくて……。家庭科は1だったよ」
僕はクッキー生地の出来損ないを頰につけ、ひとしおの達成感を浮かべる。
まだ焼きあげてもいなかったけど、僕は一仕事終えたような感覚に陥っていた。
「ミライの作るクッキーは奥が深いなぁ。これはこれでいけるじゃないか♡」
ヒビキは僕が作ったクッキー生地の出来損を美味しそうに食べてくれた。
「奥が深いなんてレベルじゃないよ。ドン底だよ……」
ミントは驚きを通り越して呆れ、口の端を引き攣らせた。
他の社員も手を止め、僕のボウルを唖然と覗き込んでいる。
「焼いてみようか。フライパンは……」
さらに僕は液状のクッキー生地を、フライパンに流し込む。
しばらくして他の社員が作ったハート形や四角形の可愛いクッキーがたくさん焼きあがった中、僕のものだけ謎のドロドロな物体と化してしまった。
さすがの僕も失敗を自覚した。
「う~ん、失敗しちゃったか。途中までは上手くいってたような気がしたんだけどなぁ~」
社員一同からは「最初から失敗だったような……」とボソッと言われた気がしたが、空耳だと思いたい。
「いや、これは従来のクッキーの常識を覆す画期的な大発明だ。一般的なクッキー特有の食感を微塵も感じさせない斬新なドロドロ感は食べる者全てに驚きと感動を与えてくれる極上の逸品に仕上がっている。これを作ったミライを天才と評さずに誰を天才と呼ぶんだろうか?」
ヒビキが僕の作ったドロドロクッキーを大いに絶讃してくれた。正直ちょっと嬉しい♡
ヒビキは僕の手をつかんで分厚い胸へと引き寄せた。
「きゃッ!」
僕は小さな声で叫び、頰を染めて顔をそむけた。その頰にヒビキの唇が落ちてきた。
「1番美味しいお菓子はミライそのものだぜぇ♡」
耳朶を舐められ、低い声でささやかれると、僕の背筋がゾクッと震える。逃げようと身悶えした瞬間、押し倒された。
「も~う、ヒビキったらこんな所で……」
「クッキーよりも甘~いミライの身体を俺に味わわせてくれ♡」
ヒビキは体の重みで僕を押さえつけ、震えている乳首に舌を這わせた。尖らせた舌の先で乳うんの周囲をなぞり、乳首を軽く噛む。
「あッ……ああッ……」
乳首を噛まれただけで小さなあえぎ声が出てしまい、死にたくなるほど恥ずかしい。
僕は唇を噛み締めて両目をきつく閉じ、肌をなぶるヒビキの手に絶対反応すまいと必死になった。けれど乳首を執拗に揉まれると、息はいやでも荒くなってくる。とうとう下半身を剥き出しにされてしまった。
「ああッ、らめぇ、そこは……」
太腿を開かれそうになり、脚に力を込めて僕は必死に抵抗する。しかし、きつくつかまれた太腿を強引に割り開かれてしまった。
正直、僕には冒険者のような危険な職業は向かない気がする……。
でも、元いた世界のようにヒキニートになってしまってはヒビキに申し訳ない。
そこで僕はこの間、仲良くなった魔王ゼノンのコネで魔王軍幹部が経営するお菓子屋で働くことになった。
早朝から、お客さんの失礼にならない程度に身だしなみをチェックする。
僕は調理室の前で足を止め、ドアを開いた。中では社員が和気藹々と、お菓子作りの準備を始めている。
「君がミライ君だね。魔王様から話を聞いてるよ。そうそう、君と同時期にもう2人、新人が来ることになったんだ」
「新人……どんな人でしょう?」
新人と思われる人影は、後ろのドアからこっそり退室しようとしていた。けれども、一瞬で誰か分かった。
「……ミント? それにヒビキまでいるじゃないッ⁉︎ どうして、ここに?」
「バレちまったか。後でミーティングの自己紹介の時に驚かせてやろうと思ったんだがな」
ヒビキは僕の背後にまわると、フリルのエプロンの帯を結んでくれた。
ヒビキの恰好は今日も甲冑姿で、フリルのエプロンがしっくりこない。腰には剣を携えており、銃刀法違反も何のその。まあ、この世界にそんな法律はないんだろうけど。
「じゃあ早速、生地から作っていこっか」
本日の献立はクッキーだ。
「理想のお菓子とは、見栄えがよく、美味しく、そして低カロリーであること。お菓子作りならボクに任せといて♡」
どうやらミントはお菓子作りの専門知識を豊富に持っているらしい。
ミントの隣で僕も不器用なりにクッキーの生地を捏ねる。はずだったのだが……。
「なかなかミントみたいに固まらないよ。何か手順を間違えちゃったのかな?」
僕が一生懸命やればやるほど、生地は滅茶苦茶に散らかっていた。まだ小麦粉が牛乳や卵と混ざりきってもおらず、粉っぽいうえ、ボウルの中は卵の殻だらけ。
「量も少なくなってきちゃったね。ちょっと増やそうかな」
お次は水を注ぎ、製作途中の生地を極薄に伸ばしてみる。
「……ミライって、料理したことある?」
「あるにはあるんだけど、昔から全然できなくて……。家庭科は1だったよ」
僕はクッキー生地の出来損ないを頰につけ、ひとしおの達成感を浮かべる。
まだ焼きあげてもいなかったけど、僕は一仕事終えたような感覚に陥っていた。
「ミライの作るクッキーは奥が深いなぁ。これはこれでいけるじゃないか♡」
ヒビキは僕が作ったクッキー生地の出来損を美味しそうに食べてくれた。
「奥が深いなんてレベルじゃないよ。ドン底だよ……」
ミントは驚きを通り越して呆れ、口の端を引き攣らせた。
他の社員も手を止め、僕のボウルを唖然と覗き込んでいる。
「焼いてみようか。フライパンは……」
さらに僕は液状のクッキー生地を、フライパンに流し込む。
しばらくして他の社員が作ったハート形や四角形の可愛いクッキーがたくさん焼きあがった中、僕のものだけ謎のドロドロな物体と化してしまった。
さすがの僕も失敗を自覚した。
「う~ん、失敗しちゃったか。途中までは上手くいってたような気がしたんだけどなぁ~」
社員一同からは「最初から失敗だったような……」とボソッと言われた気がしたが、空耳だと思いたい。
「いや、これは従来のクッキーの常識を覆す画期的な大発明だ。一般的なクッキー特有の食感を微塵も感じさせない斬新なドロドロ感は食べる者全てに驚きと感動を与えてくれる極上の逸品に仕上がっている。これを作ったミライを天才と評さずに誰を天才と呼ぶんだろうか?」
ヒビキが僕の作ったドロドロクッキーを大いに絶讃してくれた。正直ちょっと嬉しい♡
ヒビキは僕の手をつかんで分厚い胸へと引き寄せた。
「きゃッ!」
僕は小さな声で叫び、頰を染めて顔をそむけた。その頰にヒビキの唇が落ちてきた。
「1番美味しいお菓子はミライそのものだぜぇ♡」
耳朶を舐められ、低い声でささやかれると、僕の背筋がゾクッと震える。逃げようと身悶えした瞬間、押し倒された。
「も~う、ヒビキったらこんな所で……」
「クッキーよりも甘~いミライの身体を俺に味わわせてくれ♡」
ヒビキは体の重みで僕を押さえつけ、震えている乳首に舌を這わせた。尖らせた舌の先で乳うんの周囲をなぞり、乳首を軽く噛む。
「あッ……ああッ……」
乳首を噛まれただけで小さなあえぎ声が出てしまい、死にたくなるほど恥ずかしい。
僕は唇を噛み締めて両目をきつく閉じ、肌をなぶるヒビキの手に絶対反応すまいと必死になった。けれど乳首を執拗に揉まれると、息はいやでも荒くなってくる。とうとう下半身を剥き出しにされてしまった。
「ああッ、らめぇ、そこは……」
太腿を開かれそうになり、脚に力を込めて僕は必死に抵抗する。しかし、きつくつかまれた太腿を強引に割り開かれてしまった。
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