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第2話 愛する男とキスしちゃった件
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レイプされた時は破瓜の痛みに泣きじゃくり、二度とセックスなんてするものかと思っていた。
そんな自分が一護くんと性の快楽に溺れ、男とのセックスを心の底から楽しいと感じてしまったのだ。
男に対する嫌悪感そのものはなくならないが、一護くんになら、もう一度ぐらい抱かれてもいいと素直に思った。
あの後、一護くんが僕と同じ高校に入学したことを知り、今日は珍しく学校に通う気になった。
高校からはΩの男子にも女子用制服の着用が義務づけられているので仕方なく僕は短いスカートを穿いている。
女子用制服を着るようになってから露骨に性的対象として扱われるようになったり、以前よりも軽く見られたり、痴漢に遭う頻度も激増した。そのせいで高校に入学して、すぐに僕はまた不登校になっていたのだ。
学校は、つまらなかった。成績はクラスの下の下ぐらい。
数学の公式を暗記したり、化学式を覚えたり、歴史的出来事の年代を暗記したりしてみても、それが自分という存在とどう関わっているのか、さっぱり分からなかったし、そんなことのために、なぜ自分の貴重な時間を費やさなければならないのか、まるで納得できなかった。
僕は地下鉄の改札を出て、地下通路の階段を上り、地上に出た。
そこは都心の大きな交差点に接した歩道で、車道にはトラックやバス、営業車、自家用車がひしめき合い、歩道には初夏の陽気のせいで妙にはしゃいでいる学生や会社員などが往き来している。
すれ違う男たちの視線が僕の身体に吸い寄せられるように集まる。
すれ違いざまに、「ヤリてえ~」とか「孕ましたい」とか「犯してえぜ」などと言われるのを年中だったし、わざわざ振りかえって、「おい、そこのブスやらせろ!」と呼び止められたり、「もう我慢できねえ~ッ!!!」などと叫びながら追いかけてくる危ないヤツもいた。
性別という変えようがない属性が原因で、男たちから毎日のように不当な扱いを受け続けていたら、不登校になるのも無理はないだろう。
どうしてΩに生まれたというだけで常に危険と隣り合わせの世界で生きなきゃならないのか不思議でしょうがない。
「アオイ~、こんなところで会うなんて奇遇だなぁ♡」
いきなり背後から強く抱きしめられ、僕は思わず素っ頓狂な声を出してしまう。
「ふぎゃあ~ッ!……って、一護くん⁉︎」
一瞬にして頰が熱くなるのが自分でも分かった。
苦しいほどに心臓もとくとくと弾んでいた。
胸の中いっぱいにひろがる甘酸っぱい気持ちを、僕は1人でそっと嚙みしめる。
「アオイ、空を見てみろよ。綺麗な飛行機雲だぜ♡」
大きな空はどこまでも澄んだ深い青色をし、とても高いところに、ゆっくりと飛行機雲が伸びている。
「もちろん、今日のアオイも綺麗だ。すっぴんでもアオイは可愛いぜ♡」
そんな風に言われると、意志とは関係なく身体が火照る。
自分でもどうにもならないこの感情が、恋というものであることを僕は悟った。
「俺、アオイのために弁当作ってきたんだ♡ 昼休みに一緒に食おうぜ」
2段の弁当箱を見せられた瞬間、朝食を抜いてきた僕の腹の虫がグウと鳴った。
「アオイ、腹減ってるだろ? そこのベンチに座って、一緒に食ってこうぜ♡」
僕たちは遊歩道に設置されたベンチに座って、朝食を取ることにした。
「すごく綺麗な形の三角おむすびだね。すごいなぁ、僕なんかΩのくせに料理も掃除もろくに出来ないから一護くんが羨ましいよ」
僕は握り飯を頬張りながら一護くんを見つめて相好を崩す。
Ωは結婚したら死ぬまで奴隷のように炊事洗濯掃除や育児を強制され、夜は夫への性奉仕のため寝ることも許されない毎日を送ることになる。たとえ、それが妊娠中であったとしてもだ。
だから、こんな風にαの男に手料理を振る舞ってもらえる日が来るなんて夢のようだった。
「俺と結婚してくれたら、毎日のようにアオイに料理を作ってやるんだけどなぁ~♡」
自分なんか逆立ちしてもかなわない大人びた男性――そんな、ちょっともったいないほどの一護くんの魅力に、思春期真っ只中の僕は完全に魅了されていた。
こんな風に2人きりでデートまがいの時間を過ごせるなんて天国にいるみたいだ。
この甘酸っぱい時間が永遠に続けばいいのにと心底思ってしまう。今の僕にとっては何物にも代えがたい、宝物のようなひとときだった。
「あ、ほっぺについてるぞ~♡」
美味しそうにおにぎりを頬張る僕の頰に一護くんは指を伸ばした。
「あ……」
僕は思わず緊張する。
一護くんの指がわずかに口の脇に触れただけで、カーッと頰が熱くなった。
「ほっぺにご飯粒なんて、やっぱりアオイは可愛いぜ♡」
大好きな人が言ってくれた可愛いと言われると、僕はますます顔が火照るのを感じた。
お願い、そんなに火照らないでと思うものの、まるで真冬のストーブかと思うほど顔が熱くなってヒリヒリする。
「アオイの可愛い顔が赤くなったぞぉ~♡」
「もうイジワル……」
覗き込むように顔を見られ、たまらず僕は唇を窄めた。
それでも一護くんは嬉しそうに僕の顔をなおも見つめ続けた。
「はひ……」
そんなにマジマジと見つめないでと気恥ずかしさが増した。
僕は首をすくめ、穴があったら入りたい気分になる。
「ふぇッ……」
ドキッとして身体が固まった。
思いがけない大胆さで、いきなり一護くんの顔が眼前に接近してきたのである。
「アオイ……」
「一護くん……」
春風のように、という言い方がふさわしいかもしれない。
気づけば僕はごく自然な流れのように、一護くんに唇を奪われていた。
胸の中いっぱいに、さらに強い甘酸っぱさがじわじわとひろがった。
あまりの嬉しさに、小さな胸が張り裂けてしまうのではないかと思うほどの感激を覚える。
僕はうっとりと目を閉じ、愛しい一護くんとのキスに身を任せた。
「おっと……これ以上やったら、人前でアオイを押し倒しちまいそうだ♡ ちょっとは自重しないとなぁwww」
やがて、そっと唇を離すと、囁くように一護くんが言った。
僕はもうたまらなかった。思わず人目もはばからず、自分から一護くんに甘えるように抱きついていく。
「ちょっとだけ……こうしてていい?」
「ちょっとと言わず、ずっとそうしててくれると嬉しいぜ♡」
僕のことを一護くんは優しくそっと抱き返してくれた。
「僕……一護くんのこと大好きだよ♡」
「おう、俺もだぜ。今すぐ2人でベッドインしたいくらいだ♡」
身も心もとろけてしまいそうだった。
うっとりと瞼を閉じ、万感の思いで熱い吐息を漏らす。
本当に幸せだ。
今までの人生の中でこれほどまでに幸せを感じたのは初めてだ。
僕は自分の幸福に酔いしれながら一護くんに身を預け、再び熱い口づけを交わすのであった。
そんな自分が一護くんと性の快楽に溺れ、男とのセックスを心の底から楽しいと感じてしまったのだ。
男に対する嫌悪感そのものはなくならないが、一護くんになら、もう一度ぐらい抱かれてもいいと素直に思った。
あの後、一護くんが僕と同じ高校に入学したことを知り、今日は珍しく学校に通う気になった。
高校からはΩの男子にも女子用制服の着用が義務づけられているので仕方なく僕は短いスカートを穿いている。
女子用制服を着るようになってから露骨に性的対象として扱われるようになったり、以前よりも軽く見られたり、痴漢に遭う頻度も激増した。そのせいで高校に入学して、すぐに僕はまた不登校になっていたのだ。
学校は、つまらなかった。成績はクラスの下の下ぐらい。
数学の公式を暗記したり、化学式を覚えたり、歴史的出来事の年代を暗記したりしてみても、それが自分という存在とどう関わっているのか、さっぱり分からなかったし、そんなことのために、なぜ自分の貴重な時間を費やさなければならないのか、まるで納得できなかった。
僕は地下鉄の改札を出て、地下通路の階段を上り、地上に出た。
そこは都心の大きな交差点に接した歩道で、車道にはトラックやバス、営業車、自家用車がひしめき合い、歩道には初夏の陽気のせいで妙にはしゃいでいる学生や会社員などが往き来している。
すれ違う男たちの視線が僕の身体に吸い寄せられるように集まる。
すれ違いざまに、「ヤリてえ~」とか「孕ましたい」とか「犯してえぜ」などと言われるのを年中だったし、わざわざ振りかえって、「おい、そこのブスやらせろ!」と呼び止められたり、「もう我慢できねえ~ッ!!!」などと叫びながら追いかけてくる危ないヤツもいた。
性別という変えようがない属性が原因で、男たちから毎日のように不当な扱いを受け続けていたら、不登校になるのも無理はないだろう。
どうしてΩに生まれたというだけで常に危険と隣り合わせの世界で生きなきゃならないのか不思議でしょうがない。
「アオイ~、こんなところで会うなんて奇遇だなぁ♡」
いきなり背後から強く抱きしめられ、僕は思わず素っ頓狂な声を出してしまう。
「ふぎゃあ~ッ!……って、一護くん⁉︎」
一瞬にして頰が熱くなるのが自分でも分かった。
苦しいほどに心臓もとくとくと弾んでいた。
胸の中いっぱいにひろがる甘酸っぱい気持ちを、僕は1人でそっと嚙みしめる。
「アオイ、空を見てみろよ。綺麗な飛行機雲だぜ♡」
大きな空はどこまでも澄んだ深い青色をし、とても高いところに、ゆっくりと飛行機雲が伸びている。
「もちろん、今日のアオイも綺麗だ。すっぴんでもアオイは可愛いぜ♡」
そんな風に言われると、意志とは関係なく身体が火照る。
自分でもどうにもならないこの感情が、恋というものであることを僕は悟った。
「俺、アオイのために弁当作ってきたんだ♡ 昼休みに一緒に食おうぜ」
2段の弁当箱を見せられた瞬間、朝食を抜いてきた僕の腹の虫がグウと鳴った。
「アオイ、腹減ってるだろ? そこのベンチに座って、一緒に食ってこうぜ♡」
僕たちは遊歩道に設置されたベンチに座って、朝食を取ることにした。
「すごく綺麗な形の三角おむすびだね。すごいなぁ、僕なんかΩのくせに料理も掃除もろくに出来ないから一護くんが羨ましいよ」
僕は握り飯を頬張りながら一護くんを見つめて相好を崩す。
Ωは結婚したら死ぬまで奴隷のように炊事洗濯掃除や育児を強制され、夜は夫への性奉仕のため寝ることも許されない毎日を送ることになる。たとえ、それが妊娠中であったとしてもだ。
だから、こんな風にαの男に手料理を振る舞ってもらえる日が来るなんて夢のようだった。
「俺と結婚してくれたら、毎日のようにアオイに料理を作ってやるんだけどなぁ~♡」
自分なんか逆立ちしてもかなわない大人びた男性――そんな、ちょっともったいないほどの一護くんの魅力に、思春期真っ只中の僕は完全に魅了されていた。
こんな風に2人きりでデートまがいの時間を過ごせるなんて天国にいるみたいだ。
この甘酸っぱい時間が永遠に続けばいいのにと心底思ってしまう。今の僕にとっては何物にも代えがたい、宝物のようなひとときだった。
「あ、ほっぺについてるぞ~♡」
美味しそうにおにぎりを頬張る僕の頰に一護くんは指を伸ばした。
「あ……」
僕は思わず緊張する。
一護くんの指がわずかに口の脇に触れただけで、カーッと頰が熱くなった。
「ほっぺにご飯粒なんて、やっぱりアオイは可愛いぜ♡」
大好きな人が言ってくれた可愛いと言われると、僕はますます顔が火照るのを感じた。
お願い、そんなに火照らないでと思うものの、まるで真冬のストーブかと思うほど顔が熱くなってヒリヒリする。
「アオイの可愛い顔が赤くなったぞぉ~♡」
「もうイジワル……」
覗き込むように顔を見られ、たまらず僕は唇を窄めた。
それでも一護くんは嬉しそうに僕の顔をなおも見つめ続けた。
「はひ……」
そんなにマジマジと見つめないでと気恥ずかしさが増した。
僕は首をすくめ、穴があったら入りたい気分になる。
「ふぇッ……」
ドキッとして身体が固まった。
思いがけない大胆さで、いきなり一護くんの顔が眼前に接近してきたのである。
「アオイ……」
「一護くん……」
春風のように、という言い方がふさわしいかもしれない。
気づけば僕はごく自然な流れのように、一護くんに唇を奪われていた。
胸の中いっぱいに、さらに強い甘酸っぱさがじわじわとひろがった。
あまりの嬉しさに、小さな胸が張り裂けてしまうのではないかと思うほどの感激を覚える。
僕はうっとりと目を閉じ、愛しい一護くんとのキスに身を任せた。
「おっと……これ以上やったら、人前でアオイを押し倒しちまいそうだ♡ ちょっとは自重しないとなぁwww」
やがて、そっと唇を離すと、囁くように一護くんが言った。
僕はもうたまらなかった。思わず人目もはばからず、自分から一護くんに甘えるように抱きついていく。
「ちょっとだけ……こうしてていい?」
「ちょっとと言わず、ずっとそうしててくれると嬉しいぜ♡」
僕のことを一護くんは優しくそっと抱き返してくれた。
「僕……一護くんのこと大好きだよ♡」
「おう、俺もだぜ。今すぐ2人でベッドインしたいくらいだ♡」
身も心もとろけてしまいそうだった。
うっとりと瞼を閉じ、万感の思いで熱い吐息を漏らす。
本当に幸せだ。
今までの人生の中でこれほどまでに幸せを感じたのは初めてだ。
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