レイプされて男性恐怖症になった僕に彼氏ができた件

M

文字の大きさ
74 / 77

第74話 人生が虚しい件〜前編〜

しおりを挟む
 無性に僕は何か物足りないような気持ちになって他のことが全く手につかなくなる時がある。
 言語化することが難しい、この満たされない思いに僕の中の何かが今にもはち切れそうになって苦しくなる。
 このモヤモヤの正体について考えるたび、何故か自分の不甲斐なさに涙が止まらなくなって謎の閉塞感に包まれ、身動きが取れなくなってしまう。
 理由もなく泣き出す僕を見て、メンヘラ気質のメンドくさいヤツだと思う人もいるだろうし、生理中特有のヒステリーだと感じる人もいるかもしれない。でも、そういうのとは違うのだ。たぶん……。
 僕は一護いちごくんに相談しようかと迷ったが、不思議と同じΩである尾芽牙おめがくんの方に悩みを聞いてもらうことにした。


「なんか分かるなぁ、アオイくんの気持ち。毎日似たような日常の繰り返しで人生つまらないと感じるんだよね。いまいち青春って感じがしないというか、このまま大人になっていくのかと思うと凄く虚しいっていうかさ」


 尾芽牙おめがくんの一言に僕はハッとなった。今まさに尾芽牙おめがくんが今の僕の思いの一部を言語化してくれたのだ。


「そうなんだよねぇ。僕みたいに発達障害がある人間は大人になっても人生が変わることなんてないだろうし、そんな未来を生きていくぐらいなら、ずっと子供のまま時間が止まっちゃえばいいのにって思う時があるんだ」


 僕がそう言うと、尾芽牙おめがくんはクスクス笑いながら首肯した。


「うふふ、アオイくんとはホント気が合うよ♡ きっと、この感じは一護いちごには分かんないだろうなぁ。あいつ、アオイくんを幸せにするために毎日努力して大人の男になろうとしてるからさwww」


 尾芽牙おめがくんが言うように一護いちごくんは大学受験に向けて猛勉強しながら子供を養うためにバイトを掛け持ちしている。
 僕と幸せな家庭を築こうと必死に頑張って努力をしている一護いちごくんを見ていると、何とも言い難い罪悪感を覚えるのだ。


「どうして、あんなにも一護いちごくんは一生懸命になれるんだろう? たかが僕みたいなΩのためにさ……」


 ASD(自閉氏スペクトラム症)の僕は相手の感情を読み取ることが出来ないため、男の子の気持ちが分からない時がある。


「そんなの言うまでもないよ。アオイくんのことが大大大好きだからでしょ♡」
「よく分かんないけど、それだけの価値が僕にあるの?」
「少なくとも身体目当ての男が身を粉にしてまで頑張るなんてこと絶対ないよ。認めたくないけど、一護いちごのアオイくんに対する愛はホンモノだろうね。まあ、そこだけはアイツのいいところなんじゃない?」


 本気で愛してもらうって、こういう感じなのかと改めて僕は実感していた。
 心地良い多幸感と漠然とした不安とが混在したアンビバレンスな感情が僕の中で湧き起こる。


「いつか僕は一護いちごくんをガッカリさせちゃうんじゃないかって、すごく不安になる時があるんだ。愛されるのは嬉しいけど、その愛が失われた時のことを考えると、不安で不安でしょうがない……」


 僕の話を尾芽牙おめがくんは真摯に聞いてくれた。


「そういう風に考えてたなんて驚きだよ。僕は一護いちごがアオイくんのことをガッカリさせるんじゃないかと心配してるぐらいなんだけどねwww」
「そんなことないよ! この世に一護いちごくんより良い男なんて存在しないんだから!」


 思わず大声を出してしまった自分の口を羞恥で塞ぐ。


「ごめん……大きな声、出しちゃって……」
「うんうん、気にしないで」


 そういった尾芽牙おめがくんの表情は少しばかり寂しそうに見えた。


「そんな風にアオイくんに愛してもらえる一護いちごが羨ましいよ。でも、そう思うと同時にボクもアオイくんみたいに誰かに愛されてみたかったなぁ……」


 そう言って僕を見つめる尾芽牙おめがくんの表情には険があった。


「……尾芽牙おめがくん?」
「ごめん、なんかΩとしての本性が出ちゃったみたい。Ωとしてのアイデンティティなんか捨てたつもりだったんだけど、やっぱり本能には抗えないのかなぁ~」


 そう言うと、尾芽牙おめがくんはいつもの柔和な表情に戻った。


「ボクは男と恋愛したいと思ったことは一度もないけど、実は一護いちごみたいな力強いヤツとセックスはしてみたいと思ったことはあるんだ。ほら、一護いちごって凄くチンポでかいから子宮まで届きそうじゃんwww」


 男嫌いの尾芽牙おめがくんでも、そんなことを考えるのかと思うと、なんだか笑いが込み上げてくる。


「へぇ~、意外に尾芽牙おめがくんって肉食系なんだねwww」
「でも、アオイくんみたいに絶対に中出しはさせないけどね。一護いちごみたいにゴムつけないで、しょっちゅう妊娠させて喜んでるような男は絶対無理!……あ、噂をすれば何とやらwww」


 そう言われて振り向くと、一護いちごくんが手を振りながら僕たちの方へ駆け寄ってくるのが見えた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。

かとらり。
BL
 セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。  オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。  それは……重度の被虐趣味だ。  虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。  だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?  そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。  ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

処理中です...