上 下
2 / 11
禁書目録大予言編

第1話 「案内役“ポセ”」

しおりを挟む
 天才物理学者「成瀬栄慈」は、神に殺された。
 俺は、死んだのか?
 ここは何処だ?
 栄慈は真っ暗な空間を漂いながら考える。
 俺以外の人間はどうなったんだ?
 守れなかった
 全部、守れなかった
 落ち込んでいる栄慈の目の前に光が現れ、謎の生物が出現する。

「やあ!びっくりした?」

 甲高い声で謎の生物が栄慈に話しかける。

「誰だ?」

「僕は、ポセ。君が異世界に行く手続きをするよ!」

 栄慈の問いかけに謎の生物、ポセが答える。

「異世界?そんなの存在するのか?」

「正確には、『君達』がよく言う天国とか地獄ってあるでしょ?その天国地獄は天界っていう場所の一部であって、その天界の下層部である地界に行ってもらうよ」

「『君達』っていうことは俺以外の人もみんな行くのか?」

「そうだよー。悪人を除いてみんな行くよー。因みに君達はさっき死んだんじゃなくてこの異空間にワープさせられてただけだよー」

「そうなのか?みんな生きてて良かった」

 少し泣き出しそうな声で栄慈は呟く。

「安心している所悪いけど、地界に行く手続きとして、能力と地界での名前を決めてもらいます」

「能力?」

「はい!君達が生身の状態では地界で死んでしまうかもしれませんから何か一つ能力を与えるんです。但し、『最強』みたいな抽象的な能力は無理です。そして能力を応用して複数の技を使うのはオッケーですが、能力自体を複数所持することはできません。ここまでの情報しっかり入ってますか?」

「大丈夫だ、一語一句覚えてる」

「それはそれで怖いですが流石、天才物理学者様ですね」

「あまり天才と言われるのは好きじゃない。天才でも努力はしているのに、全て才能だと思われるのが嫌だからな」

 栄慈は天才と呼ばれるのがあまり好きじゃないと告げる。

「そこんとこは苦労してるんですね」

「ポセも苦労してそうだけどな。地球の人類ほぼ全員に話しかけてるんだろ?」

「いえ、僕は分身できるんで地球の人類の数に分身すれば仕事はすぐ終わるんでそこまでですよ」

「そうなのか。つまり、ポセの能力は『分身』か」

「そうです!そんな感じの能力を選んで下さい」

 そんな感じの能力といっても何にしようかな?『重力操作』とかか?いや、もっと応用の効く能力がいいな。そうだ、あの能力にしよう。
 悩んだ結果、栄慈が決めた能力は———

「俺の欲しい能力は『引力操作』だ!」

「成程!物理学者らしい能力ですね!それで、名前の方はどうしますか?」

「名前か。自分で自分の名前を考えるのってなんか恥ずかしいからな。好きな素粒子からとるとしよう。俺の新しい名前は———」

「ミューだ」
しおりを挟む

処理中です...