青春、残り3泊4日。—Boys Aoharu— (原題:3泊4日の青春)

沼津平成@25周年カップ参加中

文字の大きさ
16 / 17

第12話+ 乗れない*自転車 ぐるぐる

しおりを挟む
「自転車乗れないですよね?」
「いいえ、乗れないよ」

 と、英語の文章をそのまま翻訳したみたいなやり取りを繰り広げていたところを、一人の大人が通りかかった。「あれ? 君たちどうしたの? 家出?」

 どうやら、カンの良い大人のようだ。ハルキたちは項垂れてから、いろいろと話し始めた。

「……なるほど。家出ではなさそうだね」

 男の人(大人)はちょっと悩んでから、いった。「今日は、うちに泊まらないかい」

「えっ?」

 ハルキたちはちょっと困惑した。なぜか。命を助けてくれようとしてくださっている人には失礼だが、このヒゲのおやじが学生二人をやしなえるほど広い家を持っているはずがないと思ったからだ。

「いやあね」大人の人が、首筋をぽりぽりとかいた。「うち、港食堂を営んでいるんですよ」

「えっ?」

 また素っ頓狂な声が出た。このおやじが……港食堂をいとなんでいるだと……!? マンガならば集中線が出ていたところだろう。

 隣を見ると、ショウも顔をこわばらせて硬直こうちょくしている。やめなさい。せっかくの恩赦なのだぞ。
 数秒後。
 土下座でもしそうな勢いで、中学生と高校生がアーケード商店街で土下座していた。
 理由は、そういうわけである。

「あー、よく寝た」

 朝食も五百円で済んだことだし、とショウが財布を動かしてみる。まあ、前と比べてちょっと音が寂しくなったかな、という程度だ。

「でも、自転車乗れないんだろう? うちのを貸そうか?」
「だから、乗れないってば」
「あ、そうか」

 おやじは案外抜けているところがあるようである。少し考えてから「そういえば君たち。ここへはどうやってきたんだ」

「イカダです」

「えっ。イカダって、ちっこいもの?」

「はい。バイク二台分です」そりゃそうだ。バイク二台を等積変形とうせきへんけいしただけのイカダだ。我ながら、いい例えだと思った。

「ええ、ちっこいね。うちもバイク持ってるからわかるけど、乗ってみると、意外と思ったよりちっこいんだよね、あれね」

「ええ……」本物のバイクに乗ったわけではないからか、冷や汗が出ていた。

「そうだ。それで帰りなよ」
「エッ。イカダで。駿河湾の海って、深いんですよ」さっきの家族の受け売りだ。
「じゃあ、バイクで帰ったら?」
「それだ! じゃあ、お邪魔しました」
「あいよ。……今度、沼津に来ることがあったら、ぜひウチを訪ねなさい」
「はい」

 3日目。今からイカダをバイクに戻して、4日目の夜までにたどり着けるか? あれ、上着のポケットに何か入っているぞ。

 『沼津→首都圏の実家』

 ショウの手書きの切符だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

東京の人

くるみあるく
青春
BLなのかもしれませんし、そうでないかもしれません。 沖縄からたまたま東京に来ていた警官・矢上明信(やがみ・あきのぶ)は、悲鳴を聞きつけある女性を助けました、が、彼女は言いました。「私、男です」 あっけにとられる矢上に彼女いや彼は自分も沖縄の人間だと告げ、勤め先であるミックスバーの名刺を渡して立ち去りました。彼女いや彼は金城明生(きんじょう・あきお)という名前なのですが読み方を変えて‘あけみ’と名乗っています。同じ明の字を持つ同郷の矢上を、‘あけみさん’は「ノブさん」と親しく呼びました。 矢上はやがて上京の度に、彼女いや彼こと‘あけみさん’やミックスバーの面々と親しく交流するようになります。矢上自身はやくに妻と死に別れ、孤独を紛らわせる場を探していたのでした。 ところが矢上の中学生の息子が母親の遺品で化粧を始めるようになります。息子は小さな頃から女の子のものを欲しがることが多かったのです。今はなんとか保健室登校をしていますが、「高校へ行きたくない、制服を着たくない」と泣き叫びます。悩んだ矢上は‘あけみさん’に相談すると、彼女いや彼は自分の高校の女子服を譲ってもいいと申し出ます。 そして二人は制服の受け渡しのためデートをすることに。‘あけみさん’が男であることをわかっているのに胸の高鳴りをおぼえる自分に矢上は戸惑いを隠せなくて……。 2026.2.20〜 AI校正を導入しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

秘書と社長の秘密

廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。 突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。 ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

処理中です...