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108話 リゼッタの嫉妬
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暗い、どこまでも暗い、自らの存在すら認識できないほど濃密な闇に包まれている。そんな真っ暗闇の中に唯一光を宿しているものがあった。ぎょろりと動く、それは一対の目だ。
睨まれていると思った。作りもののように感情の宿らぬ冷たい瞳に見られていた。ずっとずっと見られていた。その瞳から逃げ出したくても身体が動かない、石になってしまったように指一本たりとも。
目の持ち主は近づいてくる。どんどんと近づいてきて、激しい恐怖に襲われて喘ぎ声をもらす。
動け! 動け!
焦りでパニックになる。動け──ひときわ強く念じて全身に力を籠める、その瞬間リゼッタはベッドから跳ね起きた。
「また、この夢」
リゼッタは上がった息を整えようと深く息を吐く。もう長いこと見なくなっていた悪夢が今になって襲い掛かってきた。
舌打ちしたいのをこらえて、そっと顔に手を這わす。すべてはこの顔がいけない。この顔は妹に似せているのだ。自分ではない何者でもないものになったというのに、かつて捨て去った己を想起させる。
なぜそんなことをしたのか、理由は単純だ。人に愛されて信用される顔と思いを巡らして、真っ先に思い浮かんだ。常に人の輪の中心で、みなに可愛がられていた妹の姿が。今でもずっと理想とする天使のように愛くるしい顔だった。
『化け物』
──ああ、うるさい。うるさい。うるさい。
『化け物の子』
両手できつく耳をふさいでも聞こえてくる、これは頭の中から聞こえてくる。まるでこの世は地獄だ、生きているだけで息がつまって、苦しみに苛まれる。
「どうか私をお救いください。どうか」
祈りというよりは呪詛染みた呟きを口にする。主様、主様と。ようやく落ち着き始めた頃にノックの音が聞こえてはっとする。
「リゼッタ。起きてるかしら」
「はい」
リゼッタは悪夢で疲弊しきった重い体を持ちあげて、よろよろと起き出した。もうすでに時刻は朝だ。小鳥が囀り、太陽が顔を見せようとしていた。
扉を開けるとイリナ・パラディソスが顔を見せた。
「おはよう。リゼッタ」
「おはようございます」
現在リゼッタはイリナ姫の使っている部屋のうちのひとつを貸してもらっているのだ。イリナは部屋の中に入ってくるなりリゼッタの顔を心配そう見つめた。
「大丈夫?」
「大丈夫、とは?」
「顔色が悪いわ。疲れが出ちゃったのかな」
「元気です。大丈夫ですよ」
「今日はゆっくりしたほうがいいわね」
「低血圧なんです。ご心配には及びません」
突っぱねるように強く言う。
「無理はしないでね」
その言葉には含みがあった。やけに心配すると思えば、どうやら父を亡くした子供を労わっているのだろう。そういえば身の上の設定はそうだった。設定を忘れかけていたとはあるまじき失態だ。
ため息をつきたくもなる。きっと酷い顔だ。心配されるのも分かる。
「あら。寝ぐせついてるわよ」
「そうですか?」
「ちゃんと鏡で見た?」
「いえ。面倒で」
やっぱり子供ねと言わんばかりに、柔らかくイリナは笑う。
「整えてあげるわ」
イリナは踏み出しかけた足を止めた。気が付いたのだ、室内のすべての鏡が布で塞がれていることに。それだけでなく光を反射しそうなものすべてが、決して解けることのないように異様なほど入念に封じ込められている。
「……鏡がどうかしたの?」
「嫌いなんです」
怪しまれたか、そう心配するが当のイリナはさして気にも留めていないようだった。促されるままに化粧台の前にリゼッタが腰を落とすと、イリナは小さく歌を口ずさみながら慣れた様子で髪を整えて、結んでいった。
「はい。もういいわよ」
軽く背を押されて立って向き合う。
「うん。似合ってる。可愛いわ」
「……私は可愛いですか?」
「ええ。とっても」
曇りのない笑顔を見て燃え上った感情は嫉妬であった。
なんて卑怯なのだ。可愛いだけで、人の対応はここまで違う。恵まれた人はいつもこんな思いをしている。愛されて可愛がられて、それが当然のことだと思っている。
今までリゼッタのことを本当に見てくれたのは主人だけだった。だがそれで構わなかった。それだけで救われたのだから。一番の恐れはその救いを奪われることにあった。
「お昼すぎたらお買い物行きましょうか。いろいろ必要なものもあるでしょうしね」
「分かりました」
監獄都市の中には数多くの商業施設がある。なぜなら都市内には看守を筆頭にして罪人ではないものたちが居住し、生活を営んでいるのだ。彼らが羽を伸ばせる娯楽施設なども多い。そしてそこで働く一般人もいた。
犯罪以外の理由で監獄都市に送られたものや、罪を犯していてもその量刑をかんがみて態度が良好と認められるものは立ち入りを許され、働くこともできる。刑務作業で得られる雀の涙のお金とは違い、まとまった金額になるため多くのものがこの商業街に入ることを望み、それだけ競争は激しい。
大手を振っての探索は願ってもないことだった。イリナ姫と一緒ならば怪しまれることもなく様々な場所を観察することができた。
かつてこの都市の設計にも関わったというエリックの話では商業施設の下水道施設から外に繋がる秘密通路があるという。その下見もしなければならない。忍び込んだ先が敵のど真ん中でしたでは笑い話にもならない。内部への出入り口の安全さえ確保してリゼッタの主さえ招き入れれば時空間魔法で扉を作れる。そうなればこんな都市など一気に攻め落とせる。
だがその前に賢人会議の情報と、英雄を失脚させるだけの証拠を集める必要があった。もともとこの都市を人間ごと吹き飛ばすだけなら容易いのだ。求めるのは情報だ。
隙を見て抜け出さなくては──そう考え込んでぼんやり思考に沈んでいたが、
「リズ。好きなものあった?」
声をかけられて勢いよく振り返った。かつてまだ優しかった頃の母と、父がリゼッタのことをよくそう呼んでくれたものだった。
「嫌だった?」
固まったリゼッタの様子を見てイリナは申し訳なさそうに口にした。
「い、いえ。別に嫌ではないです」
首を振って誤魔化した。
長い買い物だ。着せ替え人形のように何度も違う洋服に着替えさせられる。貧しい村の生まれのリゼッタにはこういうことは初めての経験だった。みんなこんなに時間をかけるものなのだろうか。この人は誰にでもこんなに優しいのだろうか。
「じゃあ次これ着替えてみましょうか」
「はい」
イリナの楽し気な顔もきっとリゼッタの本当の姿を見れば凍りつくことだろう。醜いものを見た人間の反応というのは恐ろしいものだった。塵を見るような冷たい目をするのだ。その目に見据えられるととても辛くて身体が震える。
だからリゼッタは許せない。恵まれたものがどうしても許せなかった。
日用品を買い、洋服店をいくつか巡る先々でイリナは人々からの羨望の視線を集めていた。口を開けばお世辞交じりの褒め称える言葉がかけられる。奇麗だ、美しい、英雄殿との結婚が楽しみだなどと。
──これほど恵まれているのに。
誰もが羨むような境遇を手に入れても当然だと思っているのだろう。きっと何もかも手に入れてきたのだろう。手に入らなかったものなどなかったはずだ。それなのにリゼッタのたったひとつのより所さえ奪おうというのか。
めらめらと心のうちでくすぶる感情がある。
強く大きく嫉妬の炎が燃え上がろうとしていた。
夜は地獄だ。暗闇がむき出しの心を包み込んだかのようだ、眠りにつけば悪夢が忍び寄り、リゼッタをひどく苦しめた。
『どうしていいつけが守れないの』
幻想の母は鬼のような形相でリゼッタを責め立てる。ずっとそれを黙って聞いているしかなかった。少しでも口を挟めば決まって言われた。
『口答えするなら父親みたいに出ていけばいい』
それを夢見たとこともあった。だけど幼い少女が頼るものもなく外で生きていけるわけもなく、その勇気もなかった。なにより母を愛していた。いつかもとに戻ってくれると信じていたのだ。だがそれは誤りだった。
『お前には他のどこにも居場所はない。誰も受け入れてくれない』
──うるさい。黙れ。黙れ黙れ。お前なんかもう必要ない。
『化け物を必要とする人なんかいるわけがない』
「うるさいっ!」
怒声とともに目を覚ます。はあはあと荒い息を整えながら手の甲で額を拭った。ぐっしょりと汗をかいていた。ろくに眠れない日々が続き、すっかり疲れ果てていた。
「忘れなきゃ、忘れなきゃ」
もう自由になったのだ。それなにのどうしてこれほど縛るのか。
震える手で服のボタンを外していく。汗で身体は冷え切っていた。着替えるのも億劫なほど身体が重かったが、なんとか憔悴しきった身体を動かしていく。
ぎぃと扉が軋みわずかに開いたのに気が付く。
「リズ。起きてる?」
「イリナさん」
小さな囁き声が届き、イリナが顔を見せた。
「声が聞こえたから。何かあったの?」
「いえ。ただ。少し目が覚めてしまって」
イリナは部屋に入ってくるとベッドの小脇に腰かけた。
「怖い夢を見たの?」
「はい」
大人しく頷いた。全身から血の気は引き、着替えの途中だ。何かあったのだろうことは一目で分かる。下手に誤魔化す意味がなかった。
「まだ起きていたんですか」
「ちょっとお仕事があってね」
「こんな時間まで」
もう深夜3時になろうとしていた。
「少しサボっちゃってたから頑張らないとなんだ」
タオルで背中を拭かれた。温かい体温に触れて、リゼッタの肌も血色を取り戻していった。着替えをすまして、身体を横たえる。
「眠れるまで一緒にいるわ」
優しい笑顔が記憶の中の母と重なって、心がささくれ立った。
「放っておいてください」
「そんなわけにはいかないわ」
「どうしてですか? 他にも困ってる人間はいくらでもいるじゃないですか。私一人ぐらい放っておいても何も変わらないでしょう」
一気に口にして、それから少し呼吸を整えた。
「私が可哀想だからですか」
この世は残酷だ。美しいものが弱いところを見せると憐れみを引く。物語の主人公はいつだって美しい。もし眠れる姫が醜かったら王子には見向きもされなかったはずだ。
リゼッタのように醜いものはただ打ち捨てられるだけだというのに、彼女らは弱さすら強みになる。
「あなたが今一人なのは私のせいだから」
「私は。私は父が嫌いです。ずっと家にいなくて。都合が悪くなると私を置いて自分一人で逃げてしまうんです」
ばちばちと頭の中で火花が弾ける。言葉が口をついて止まらなかった。
「家族ですら助けてくれないのに、なんで他人なんか助けるんですか」
「私には守らなければいけないものがあるの」
「それは何ですか」
ぽつりと問いかける。
「あなたよ」
「わたし?」
「そして国のみんな。助けを必要とするすべての人」
──どうしてだ。なぜそんなにも奇麗ごとを並べ立てることができるのだ。誰もが汚らしい本性を抱えているはずなのに。やるせなくて、どうしてもイリナを否定したかった。
「そうやって身を削って他人を助けて。それでいったい何が得られるっていうんですか」
「得るもの、か」
少し考えるようにして呟いた。
「じゃあ問題。人にあげたらあげただけ増えるものってなーんだ」
「そんなものありません」
「ちょっと考えてみて」
何がおかしいのか、イリナ姫はくすくす笑った。頭に触れる手が心地よくて、心が満たされた気がした。
瞼を落とせば優しい眼差しが脳裏に浮かぶ。家族三人で笑い合って過ごした日々。それはとても温かかった。もう二度と手に入らない、幸せな時間だった。
「答えは……愛情ですか?」
口にしたのが恥ずかしくなるほど甘ったるい答えだと思った。
「あなたは優しい子ね。とても素敵な答えだわ」
「違いましたか?」
「違わないわ。答えがひとつだなんて決まってないもの」
イリナは言葉を続けた。
「私も昔はあなたと似たことを信じていたわ。だけどね、どれだけ愛しても、返してくれない人はいるんだ。人は愛情に対して悪意で返すこともあるのよ」
「ならイリナさんの答えは?」
「それは言葉よ」
「言葉、ですか」
リゼッタは言葉を反芻する。意味を掴みかねたのだ。
「例えば私が役に立つ話をしたら、リズも他の人に話したりするんじゃない?」
漠然と言わんとしていることに理解が及んだ。
「人は愛を伝えるのにも憎しみを伝えるにも言葉を使うのよ。感情はすり減っちゃうし、愛もいずれ尽きることはあるかもしれない、でもそれが言葉として伝えられたのなら、ずっと残っていくの。大昔の物語が残って、時を経て多くの人の心を動かしているように」
リゼッタはただ黙って聞いていた。
「人から人に伝わって、言葉はどんどん増えていくのよ。もし人を蔑むような言葉の応酬が続けば憎しみは連鎖して、それに触れる多くの人の心を傷つけてしまう。それはとても悲しいことだと思うの。だから私は言おうと思う。あなたが大切だって、好きだって。そうやって人を慈しんで、愛おしむような言葉で溢れていたらみんな幸せになれるんじゃないかなって思うの。世界が少しでも優しくなってくれたら嬉しい。それが私が得るものなのかもね」
とても甘い言葉だった。
あまりに愚かで、溺れてしまいそうになりそうなほど。
「そんなの奇麗ごとじゃないですか。そんな言葉が私を母の暴力から守ってくれますか。剣を持って向かってくる相手には無力じゃないですか。そんなの馬鹿げた考えです」
「そうね、私もそう思う」
リゼッタの否定するために発した言葉をイリナはあっさりと頷いてみせる。目が合うとイリナは優しく微笑んだ。
「だから私があなたを守るのよ。力と責任を持つから」
「なぜあなたがそこまでする必要が」
「私は食べるものに困ったことはないし、寝る場所に困ったこともないわ。私はもう十分すぎるほど多くのものを与えられてきた。私なんかがもらうには過分なほどにね。だから私がやらないといけないの。どんなに馬鹿にされても、私だけは笑っていようと思う。優しい言葉を返したいと思う。それが、こんなにも幸せを与えてもらっている私ができる恩返しだと思うから」
もはや何も言えなかった。それ相応の覚悟を持ってこんなこんな生き方をしているのだろう。
──奇麗な人。
涙が溢れて頬を伝った。こんなふうに生まれたかったと、そう心の底から思う。もしそれが叶えばどれほど幸せだったか。母も妹もきっと愛してくれたはずだ。
とめどなく涙が流れ、その間イリナはずっと傍にいた。泣き疲れるとやがて眠気が訪れる。
「おやすみ。リズ」
「……おやすみなさい」
リゼッタは思わず挨拶を返していた。
睨まれていると思った。作りもののように感情の宿らぬ冷たい瞳に見られていた。ずっとずっと見られていた。その瞳から逃げ出したくても身体が動かない、石になってしまったように指一本たりとも。
目の持ち主は近づいてくる。どんどんと近づいてきて、激しい恐怖に襲われて喘ぎ声をもらす。
動け! 動け!
焦りでパニックになる。動け──ひときわ強く念じて全身に力を籠める、その瞬間リゼッタはベッドから跳ね起きた。
「また、この夢」
リゼッタは上がった息を整えようと深く息を吐く。もう長いこと見なくなっていた悪夢が今になって襲い掛かってきた。
舌打ちしたいのをこらえて、そっと顔に手を這わす。すべてはこの顔がいけない。この顔は妹に似せているのだ。自分ではない何者でもないものになったというのに、かつて捨て去った己を想起させる。
なぜそんなことをしたのか、理由は単純だ。人に愛されて信用される顔と思いを巡らして、真っ先に思い浮かんだ。常に人の輪の中心で、みなに可愛がられていた妹の姿が。今でもずっと理想とする天使のように愛くるしい顔だった。
『化け物』
──ああ、うるさい。うるさい。うるさい。
『化け物の子』
両手できつく耳をふさいでも聞こえてくる、これは頭の中から聞こえてくる。まるでこの世は地獄だ、生きているだけで息がつまって、苦しみに苛まれる。
「どうか私をお救いください。どうか」
祈りというよりは呪詛染みた呟きを口にする。主様、主様と。ようやく落ち着き始めた頃にノックの音が聞こえてはっとする。
「リゼッタ。起きてるかしら」
「はい」
リゼッタは悪夢で疲弊しきった重い体を持ちあげて、よろよろと起き出した。もうすでに時刻は朝だ。小鳥が囀り、太陽が顔を見せようとしていた。
扉を開けるとイリナ・パラディソスが顔を見せた。
「おはよう。リゼッタ」
「おはようございます」
現在リゼッタはイリナ姫の使っている部屋のうちのひとつを貸してもらっているのだ。イリナは部屋の中に入ってくるなりリゼッタの顔を心配そう見つめた。
「大丈夫?」
「大丈夫、とは?」
「顔色が悪いわ。疲れが出ちゃったのかな」
「元気です。大丈夫ですよ」
「今日はゆっくりしたほうがいいわね」
「低血圧なんです。ご心配には及びません」
突っぱねるように強く言う。
「無理はしないでね」
その言葉には含みがあった。やけに心配すると思えば、どうやら父を亡くした子供を労わっているのだろう。そういえば身の上の設定はそうだった。設定を忘れかけていたとはあるまじき失態だ。
ため息をつきたくもなる。きっと酷い顔だ。心配されるのも分かる。
「あら。寝ぐせついてるわよ」
「そうですか?」
「ちゃんと鏡で見た?」
「いえ。面倒で」
やっぱり子供ねと言わんばかりに、柔らかくイリナは笑う。
「整えてあげるわ」
イリナは踏み出しかけた足を止めた。気が付いたのだ、室内のすべての鏡が布で塞がれていることに。それだけでなく光を反射しそうなものすべてが、決して解けることのないように異様なほど入念に封じ込められている。
「……鏡がどうかしたの?」
「嫌いなんです」
怪しまれたか、そう心配するが当のイリナはさして気にも留めていないようだった。促されるままに化粧台の前にリゼッタが腰を落とすと、イリナは小さく歌を口ずさみながら慣れた様子で髪を整えて、結んでいった。
「はい。もういいわよ」
軽く背を押されて立って向き合う。
「うん。似合ってる。可愛いわ」
「……私は可愛いですか?」
「ええ。とっても」
曇りのない笑顔を見て燃え上った感情は嫉妬であった。
なんて卑怯なのだ。可愛いだけで、人の対応はここまで違う。恵まれた人はいつもこんな思いをしている。愛されて可愛がられて、それが当然のことだと思っている。
今までリゼッタのことを本当に見てくれたのは主人だけだった。だがそれで構わなかった。それだけで救われたのだから。一番の恐れはその救いを奪われることにあった。
「お昼すぎたらお買い物行きましょうか。いろいろ必要なものもあるでしょうしね」
「分かりました」
監獄都市の中には数多くの商業施設がある。なぜなら都市内には看守を筆頭にして罪人ではないものたちが居住し、生活を営んでいるのだ。彼らが羽を伸ばせる娯楽施設なども多い。そしてそこで働く一般人もいた。
犯罪以外の理由で監獄都市に送られたものや、罪を犯していてもその量刑をかんがみて態度が良好と認められるものは立ち入りを許され、働くこともできる。刑務作業で得られる雀の涙のお金とは違い、まとまった金額になるため多くのものがこの商業街に入ることを望み、それだけ競争は激しい。
大手を振っての探索は願ってもないことだった。イリナ姫と一緒ならば怪しまれることもなく様々な場所を観察することができた。
かつてこの都市の設計にも関わったというエリックの話では商業施設の下水道施設から外に繋がる秘密通路があるという。その下見もしなければならない。忍び込んだ先が敵のど真ん中でしたでは笑い話にもならない。内部への出入り口の安全さえ確保してリゼッタの主さえ招き入れれば時空間魔法で扉を作れる。そうなればこんな都市など一気に攻め落とせる。
だがその前に賢人会議の情報と、英雄を失脚させるだけの証拠を集める必要があった。もともとこの都市を人間ごと吹き飛ばすだけなら容易いのだ。求めるのは情報だ。
隙を見て抜け出さなくては──そう考え込んでぼんやり思考に沈んでいたが、
「リズ。好きなものあった?」
声をかけられて勢いよく振り返った。かつてまだ優しかった頃の母と、父がリゼッタのことをよくそう呼んでくれたものだった。
「嫌だった?」
固まったリゼッタの様子を見てイリナは申し訳なさそうに口にした。
「い、いえ。別に嫌ではないです」
首を振って誤魔化した。
長い買い物だ。着せ替え人形のように何度も違う洋服に着替えさせられる。貧しい村の生まれのリゼッタにはこういうことは初めての経験だった。みんなこんなに時間をかけるものなのだろうか。この人は誰にでもこんなに優しいのだろうか。
「じゃあ次これ着替えてみましょうか」
「はい」
イリナの楽し気な顔もきっとリゼッタの本当の姿を見れば凍りつくことだろう。醜いものを見た人間の反応というのは恐ろしいものだった。塵を見るような冷たい目をするのだ。その目に見据えられるととても辛くて身体が震える。
だからリゼッタは許せない。恵まれたものがどうしても許せなかった。
日用品を買い、洋服店をいくつか巡る先々でイリナは人々からの羨望の視線を集めていた。口を開けばお世辞交じりの褒め称える言葉がかけられる。奇麗だ、美しい、英雄殿との結婚が楽しみだなどと。
──これほど恵まれているのに。
誰もが羨むような境遇を手に入れても当然だと思っているのだろう。きっと何もかも手に入れてきたのだろう。手に入らなかったものなどなかったはずだ。それなのにリゼッタのたったひとつのより所さえ奪おうというのか。
めらめらと心のうちでくすぶる感情がある。
強く大きく嫉妬の炎が燃え上がろうとしていた。
夜は地獄だ。暗闇がむき出しの心を包み込んだかのようだ、眠りにつけば悪夢が忍び寄り、リゼッタをひどく苦しめた。
『どうしていいつけが守れないの』
幻想の母は鬼のような形相でリゼッタを責め立てる。ずっとそれを黙って聞いているしかなかった。少しでも口を挟めば決まって言われた。
『口答えするなら父親みたいに出ていけばいい』
それを夢見たとこともあった。だけど幼い少女が頼るものもなく外で生きていけるわけもなく、その勇気もなかった。なにより母を愛していた。いつかもとに戻ってくれると信じていたのだ。だがそれは誤りだった。
『お前には他のどこにも居場所はない。誰も受け入れてくれない』
──うるさい。黙れ。黙れ黙れ。お前なんかもう必要ない。
『化け物を必要とする人なんかいるわけがない』
「うるさいっ!」
怒声とともに目を覚ます。はあはあと荒い息を整えながら手の甲で額を拭った。ぐっしょりと汗をかいていた。ろくに眠れない日々が続き、すっかり疲れ果てていた。
「忘れなきゃ、忘れなきゃ」
もう自由になったのだ。それなにのどうしてこれほど縛るのか。
震える手で服のボタンを外していく。汗で身体は冷え切っていた。着替えるのも億劫なほど身体が重かったが、なんとか憔悴しきった身体を動かしていく。
ぎぃと扉が軋みわずかに開いたのに気が付く。
「リズ。起きてる?」
「イリナさん」
小さな囁き声が届き、イリナが顔を見せた。
「声が聞こえたから。何かあったの?」
「いえ。ただ。少し目が覚めてしまって」
イリナは部屋に入ってくるとベッドの小脇に腰かけた。
「怖い夢を見たの?」
「はい」
大人しく頷いた。全身から血の気は引き、着替えの途中だ。何かあったのだろうことは一目で分かる。下手に誤魔化す意味がなかった。
「まだ起きていたんですか」
「ちょっとお仕事があってね」
「こんな時間まで」
もう深夜3時になろうとしていた。
「少しサボっちゃってたから頑張らないとなんだ」
タオルで背中を拭かれた。温かい体温に触れて、リゼッタの肌も血色を取り戻していった。着替えをすまして、身体を横たえる。
「眠れるまで一緒にいるわ」
優しい笑顔が記憶の中の母と重なって、心がささくれ立った。
「放っておいてください」
「そんなわけにはいかないわ」
「どうしてですか? 他にも困ってる人間はいくらでもいるじゃないですか。私一人ぐらい放っておいても何も変わらないでしょう」
一気に口にして、それから少し呼吸を整えた。
「私が可哀想だからですか」
この世は残酷だ。美しいものが弱いところを見せると憐れみを引く。物語の主人公はいつだって美しい。もし眠れる姫が醜かったら王子には見向きもされなかったはずだ。
リゼッタのように醜いものはただ打ち捨てられるだけだというのに、彼女らは弱さすら強みになる。
「あなたが今一人なのは私のせいだから」
「私は。私は父が嫌いです。ずっと家にいなくて。都合が悪くなると私を置いて自分一人で逃げてしまうんです」
ばちばちと頭の中で火花が弾ける。言葉が口をついて止まらなかった。
「家族ですら助けてくれないのに、なんで他人なんか助けるんですか」
「私には守らなければいけないものがあるの」
「それは何ですか」
ぽつりと問いかける。
「あなたよ」
「わたし?」
「そして国のみんな。助けを必要とするすべての人」
──どうしてだ。なぜそんなにも奇麗ごとを並べ立てることができるのだ。誰もが汚らしい本性を抱えているはずなのに。やるせなくて、どうしてもイリナを否定したかった。
「そうやって身を削って他人を助けて。それでいったい何が得られるっていうんですか」
「得るもの、か」
少し考えるようにして呟いた。
「じゃあ問題。人にあげたらあげただけ増えるものってなーんだ」
「そんなものありません」
「ちょっと考えてみて」
何がおかしいのか、イリナ姫はくすくす笑った。頭に触れる手が心地よくて、心が満たされた気がした。
瞼を落とせば優しい眼差しが脳裏に浮かぶ。家族三人で笑い合って過ごした日々。それはとても温かかった。もう二度と手に入らない、幸せな時間だった。
「答えは……愛情ですか?」
口にしたのが恥ずかしくなるほど甘ったるい答えだと思った。
「あなたは優しい子ね。とても素敵な答えだわ」
「違いましたか?」
「違わないわ。答えがひとつだなんて決まってないもの」
イリナは言葉を続けた。
「私も昔はあなたと似たことを信じていたわ。だけどね、どれだけ愛しても、返してくれない人はいるんだ。人は愛情に対して悪意で返すこともあるのよ」
「ならイリナさんの答えは?」
「それは言葉よ」
「言葉、ですか」
リゼッタは言葉を反芻する。意味を掴みかねたのだ。
「例えば私が役に立つ話をしたら、リズも他の人に話したりするんじゃない?」
漠然と言わんとしていることに理解が及んだ。
「人は愛を伝えるのにも憎しみを伝えるにも言葉を使うのよ。感情はすり減っちゃうし、愛もいずれ尽きることはあるかもしれない、でもそれが言葉として伝えられたのなら、ずっと残っていくの。大昔の物語が残って、時を経て多くの人の心を動かしているように」
リゼッタはただ黙って聞いていた。
「人から人に伝わって、言葉はどんどん増えていくのよ。もし人を蔑むような言葉の応酬が続けば憎しみは連鎖して、それに触れる多くの人の心を傷つけてしまう。それはとても悲しいことだと思うの。だから私は言おうと思う。あなたが大切だって、好きだって。そうやって人を慈しんで、愛おしむような言葉で溢れていたらみんな幸せになれるんじゃないかなって思うの。世界が少しでも優しくなってくれたら嬉しい。それが私が得るものなのかもね」
とても甘い言葉だった。
あまりに愚かで、溺れてしまいそうになりそうなほど。
「そんなの奇麗ごとじゃないですか。そんな言葉が私を母の暴力から守ってくれますか。剣を持って向かってくる相手には無力じゃないですか。そんなの馬鹿げた考えです」
「そうね、私もそう思う」
リゼッタの否定するために発した言葉をイリナはあっさりと頷いてみせる。目が合うとイリナは優しく微笑んだ。
「だから私があなたを守るのよ。力と責任を持つから」
「なぜあなたがそこまでする必要が」
「私は食べるものに困ったことはないし、寝る場所に困ったこともないわ。私はもう十分すぎるほど多くのものを与えられてきた。私なんかがもらうには過分なほどにね。だから私がやらないといけないの。どんなに馬鹿にされても、私だけは笑っていようと思う。優しい言葉を返したいと思う。それが、こんなにも幸せを与えてもらっている私ができる恩返しだと思うから」
もはや何も言えなかった。それ相応の覚悟を持ってこんなこんな生き方をしているのだろう。
──奇麗な人。
涙が溢れて頬を伝った。こんなふうに生まれたかったと、そう心の底から思う。もしそれが叶えばどれほど幸せだったか。母も妹もきっと愛してくれたはずだ。
とめどなく涙が流れ、その間イリナはずっと傍にいた。泣き疲れるとやがて眠気が訪れる。
「おやすみ。リズ」
「……おやすみなさい」
リゼッタは思わず挨拶を返していた。
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( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
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このまま未完かな……?
感想ありがとうございます。
あまり多くは書けませんので、
復讐シーン以外ではなるべく明るい話になるように心がけています……とだけ。
過去5どこいった?
失礼しました。
予約ミスがあったのかもしれません。
間違えて削除してしまったのか……。
非常に助かりました。