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第3話 年下の男の子(3)*
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鳥羽光輝には夢があった。好きな人とただ普通に暮らすこと。でもこの普通がこの世界ではとんでもなく難しいことも知っていた。
「どっちがいい?」
優しい声音でカナタに囁かれて、コウこと鳥羽光輝はくらくらと目眩がするような気分になった。のぼせてしまいそうだった。
のこのこついてきたホテルで、促されるままにふかふかのベッドに腰を下ろすと、カナタはいきなりキスをしてきた。
驚いたが抵抗はしなかった。そんなことできないくらいに、カナタの唇は柔らかくふわふわとして気持ちが良かった。光輝の頬に添えられたカナタの掌は大きくて温かった。
そのまま後頭部を抱くようにカナタはやんわりと光輝を押し倒して、
「どっちがいい?」
と問うたのだ。
『ちょっと試してみる?』
『えっ、何を…』
『体の相性だよ』
『ヤるって事ですか!?』
『もちろん無理にとは言わないけど。でも体の相性って大事でしょ』
先ほどのカフェでの会話を光輝は思い出す。こんな事を言われてホテルまで着いてきてしまった。
流されやすい自分に嫌気がさしていたのに、ヤリモクなんてと小馬鹿にしていたのに、そんな事もうどこかへ吹っ飛んでしまった。
(俺、男の人に押し倒されてる…)
夢に見ていたシチュエーションの一つが叶っている。男に押し倒されてみたかった。ベッドに押し付けられて求められてみたかった。それが今叶っている。しかもこんな素敵な人に。
光輝は夢心地になる。優しくて温かくて穏やかなカナタのオーラに当てられて、色々どうでもよくなってしまった。このままカナタの温和な空気に包まれてしまいたい。
警戒心は強いくせに人一倍夢見がちで絆されやすい光輝にとって、浅見奏汰は麻薬のように作用した。
「抱く方と抱かれる方、どっちがいい?」
カナタは質問の仕方を変えて再び問う。
「えっ……どっちでも…」
と答えるのが精一杯だった。光輝には性行為の経験がほとんどない。ほとんどないゆえに、アプリではポジションをリバで登録してしまった。
光輝は先ほどまでのフワフワした気持ちから一転して急に不安になる。経験が全然ないのにそんなふうに書いてしまったが、がっかりされたらどうしようと。どっちにしろ上手くできる気がしない。
光輝の困った様子を見てカナタは大丈夫だよ、というように髪を撫でた。
「俺もどっちでもできるよ。でも君はめちゃくちゃ甘やかされたいって顔してる」
「えっ」
「俺が抱いてもいい?」
こくっこくっと光輝は頷いた。
「じゃあ一緒にシャワー行こっか」
と言うとカナタは光輝の背中を抱くようにしてバスルームに向かった。
経験がないのを見透かされた気がして、光輝は恥ずかしさで顔を赤くする。けれどカナタは光輝を馬鹿にしたり、上からものを言うようなことは決してなかった。「ここの風呂場綺麗だよ」とか「クーラー寒くない?」とかそういう事ばかり言ってきた。
脱衣所でさえもまごまごしている光輝の服を脱がせてあげると、カナタは恥ずかしげもなくさっさと自分の服を脱いだ。
カナタの体は意外にも筋肉質だった。緩やかな服装だったから分からなかったが、胸筋も腹筋も腕の筋肉も見て分かるほどには引き締まっていた。こういう場合、大多数が体のラインを強調するような服を着るのに、カナタは主張する事には興味がないようだ。そういうところも好感が持てる。
「すごい、鍛えてるんですか」
ぺたっと腹筋のあたりを触ってもカナタは嫌がらなかった。自分以外の男の体にちゃんと触れるのは初めてで光輝はドキドキとした。
「んー特には。たまにテニスやるくらいかなあ。中学も高校もテニスやってたから」
カナタは眼鏡を外すとずっと幼く見えて幼気な印象が増す。
(カナタさんかわいい……)
とぼうっと見惚れていると、
「わっ」
カナタに触れていた手を掴まれて、光輝は抱き寄せられ体を密着させられる。二人に一人分の熱いシャワーがザーザー降ってくる。
カナタの背は光輝よりもやや高い。自分よりも背の高い男に抱きしめられ、安心感と高揚感に包まれた。
カナタの首筋からはすっきりとした香水のような良い匂いが立ち上っていた。
「もっとくっつかないと洗えないよ」
「あっ」
カナタは手でボディソープを泡立てると光輝を抱きしめながら背中を撫でるように洗う。
「んっ」
(やばい、変な声が出た!!)
光輝は口を慌てて塞ぐ。しかしカナタは何も気にしていないようだった。
「俺、体は手で洗う派なんだ」
などと呑気に言って手を動かしている。ボディソープの泡が光輝の肌をデコレーションするようにまとわりついては、シャワーがするする流していく。ホテルにありがちな強めなソープの香りと、カナタの匂いになんだか酔ってしまいそうだ。
光輝はカナタに身を預けてされるがままになっていた。カナタの掌が肌をすべるのが気持ちが良くて溶けてしまいそうだった。
「あはは、もう勃ってる。結構大きいね」
カナタはさも当然のように光輝の充血し出した性器に手を伸ばしてきた。
「!!」
光輝は驚いてカナタから身を離すと、瞬時にくるりと背を向けた。しかしカナタは背後から光輝を抱きすくめて、なおも股間に手を伸ばしてきた。
「ここも洗ってあげるよ」
耳元で囁かれ、内腿や鼠蹊部をボディソープのついた手でするすると触れられて、光輝のそこはあっという間に張り詰めてしまった。
こんなところを他人に触れられるのも初めてだった。
「ちょっ、と、待って、無理、無理です」
「え、まさか、もう出ちゃう?」
「や、やめて」
光輝は慌ててカナタの手首を掴んで動きを止めた。
「待って、あとちょっとでも触られたらダメかも……」
光輝は情けなさを感じながら消え入りそうな声で申告した。
「わかった。じゃあもう何もしないよ。先に上がってるね。後ろの洗い方知ってる?」
「い、一応」
「じゃあ、あとでね」
カナタは光輝の頬骨の辺りに優しくキスを残して浴室を出て行った。
こんな調子で最後までちゃんとできるのだろうか?
光輝の頭は期待、興奮、不安、羞恥心で爆発してしまいそうだった。
「どっちがいい?」
優しい声音でカナタに囁かれて、コウこと鳥羽光輝はくらくらと目眩がするような気分になった。のぼせてしまいそうだった。
のこのこついてきたホテルで、促されるままにふかふかのベッドに腰を下ろすと、カナタはいきなりキスをしてきた。
驚いたが抵抗はしなかった。そんなことできないくらいに、カナタの唇は柔らかくふわふわとして気持ちが良かった。光輝の頬に添えられたカナタの掌は大きくて温かった。
そのまま後頭部を抱くようにカナタはやんわりと光輝を押し倒して、
「どっちがいい?」
と問うたのだ。
『ちょっと試してみる?』
『えっ、何を…』
『体の相性だよ』
『ヤるって事ですか!?』
『もちろん無理にとは言わないけど。でも体の相性って大事でしょ』
先ほどのカフェでの会話を光輝は思い出す。こんな事を言われてホテルまで着いてきてしまった。
流されやすい自分に嫌気がさしていたのに、ヤリモクなんてと小馬鹿にしていたのに、そんな事もうどこかへ吹っ飛んでしまった。
(俺、男の人に押し倒されてる…)
夢に見ていたシチュエーションの一つが叶っている。男に押し倒されてみたかった。ベッドに押し付けられて求められてみたかった。それが今叶っている。しかもこんな素敵な人に。
光輝は夢心地になる。優しくて温かくて穏やかなカナタのオーラに当てられて、色々どうでもよくなってしまった。このままカナタの温和な空気に包まれてしまいたい。
警戒心は強いくせに人一倍夢見がちで絆されやすい光輝にとって、浅見奏汰は麻薬のように作用した。
「抱く方と抱かれる方、どっちがいい?」
カナタは質問の仕方を変えて再び問う。
「えっ……どっちでも…」
と答えるのが精一杯だった。光輝には性行為の経験がほとんどない。ほとんどないゆえに、アプリではポジションをリバで登録してしまった。
光輝は先ほどまでのフワフワした気持ちから一転して急に不安になる。経験が全然ないのにそんなふうに書いてしまったが、がっかりされたらどうしようと。どっちにしろ上手くできる気がしない。
光輝の困った様子を見てカナタは大丈夫だよ、というように髪を撫でた。
「俺もどっちでもできるよ。でも君はめちゃくちゃ甘やかされたいって顔してる」
「えっ」
「俺が抱いてもいい?」
こくっこくっと光輝は頷いた。
「じゃあ一緒にシャワー行こっか」
と言うとカナタは光輝の背中を抱くようにしてバスルームに向かった。
経験がないのを見透かされた気がして、光輝は恥ずかしさで顔を赤くする。けれどカナタは光輝を馬鹿にしたり、上からものを言うようなことは決してなかった。「ここの風呂場綺麗だよ」とか「クーラー寒くない?」とかそういう事ばかり言ってきた。
脱衣所でさえもまごまごしている光輝の服を脱がせてあげると、カナタは恥ずかしげもなくさっさと自分の服を脱いだ。
カナタの体は意外にも筋肉質だった。緩やかな服装だったから分からなかったが、胸筋も腹筋も腕の筋肉も見て分かるほどには引き締まっていた。こういう場合、大多数が体のラインを強調するような服を着るのに、カナタは主張する事には興味がないようだ。そういうところも好感が持てる。
「すごい、鍛えてるんですか」
ぺたっと腹筋のあたりを触ってもカナタは嫌がらなかった。自分以外の男の体にちゃんと触れるのは初めてで光輝はドキドキとした。
「んー特には。たまにテニスやるくらいかなあ。中学も高校もテニスやってたから」
カナタは眼鏡を外すとずっと幼く見えて幼気な印象が増す。
(カナタさんかわいい……)
とぼうっと見惚れていると、
「わっ」
カナタに触れていた手を掴まれて、光輝は抱き寄せられ体を密着させられる。二人に一人分の熱いシャワーがザーザー降ってくる。
カナタの背は光輝よりもやや高い。自分よりも背の高い男に抱きしめられ、安心感と高揚感に包まれた。
カナタの首筋からはすっきりとした香水のような良い匂いが立ち上っていた。
「もっとくっつかないと洗えないよ」
「あっ」
カナタは手でボディソープを泡立てると光輝を抱きしめながら背中を撫でるように洗う。
「んっ」
(やばい、変な声が出た!!)
光輝は口を慌てて塞ぐ。しかしカナタは何も気にしていないようだった。
「俺、体は手で洗う派なんだ」
などと呑気に言って手を動かしている。ボディソープの泡が光輝の肌をデコレーションするようにまとわりついては、シャワーがするする流していく。ホテルにありがちな強めなソープの香りと、カナタの匂いになんだか酔ってしまいそうだ。
光輝はカナタに身を預けてされるがままになっていた。カナタの掌が肌をすべるのが気持ちが良くて溶けてしまいそうだった。
「あはは、もう勃ってる。結構大きいね」
カナタはさも当然のように光輝の充血し出した性器に手を伸ばしてきた。
「!!」
光輝は驚いてカナタから身を離すと、瞬時にくるりと背を向けた。しかしカナタは背後から光輝を抱きすくめて、なおも股間に手を伸ばしてきた。
「ここも洗ってあげるよ」
耳元で囁かれ、内腿や鼠蹊部をボディソープのついた手でするすると触れられて、光輝のそこはあっという間に張り詰めてしまった。
こんなところを他人に触れられるのも初めてだった。
「ちょっ、と、待って、無理、無理です」
「え、まさか、もう出ちゃう?」
「や、やめて」
光輝は慌ててカナタの手首を掴んで動きを止めた。
「待って、あとちょっとでも触られたらダメかも……」
光輝は情けなさを感じながら消え入りそうな声で申告した。
「わかった。じゃあもう何もしないよ。先に上がってるね。後ろの洗い方知ってる?」
「い、一応」
「じゃあ、あとでね」
カナタは光輝の頬骨の辺りに優しくキスを残して浴室を出て行った。
こんな調子で最後までちゃんとできるのだろうか?
光輝の頭は期待、興奮、不安、羞恥心で爆発してしまいそうだった。
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