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第5話 年下の男の子(5)
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「あと30分あるなぁ…って大丈夫?」
「だ、大丈夫れす…………」
光輝はベッドの上で脱力しながら答えた。あれから何度も突かれて、ふにゃふにゃにされて呂律が回らない。
「もうシャワー浴びて出る?それともこうしてる?」
カナタは光輝のそばに寝そべると液体のように伸びている体を抱きしめた。
「うん…」
カナタの腕に抱かれて胸の中にいると守られているような安心感がある。雛鳥はこういう気持ちかもしれない。と思った。
このまま眠ってしまいたい。朝まで一緒にいたい。カナタの肌は質の良いタオルケットみたいに吸いついてきて、瞼に心地良い重みを感じる。
この人が彼氏になってくれたら毎日この穏やかな多幸感を味わえるのかと、光輝は胸をときめかせた。
「あの、今日泊まりませんか?俺が出すんで」
光輝は一か八か提案してみた。叶うならもっとカナタと一緒に過ごしたい。彼のことを知りたいと思った。
しかしカナタは、
「うーん、ありがと。でもごめん、明日朝からバイトあるからさ。一回荷物取りに帰らないとまずいんだよね」
と色良い返事をしてはくれなかった。
「そうですよね、すみません」
「コウ君ってほんと可愛いなあ。君ならすぐに彼氏できるよ」
と言って髪を撫でてくれた。
「そうですかね…」
と答えつつ、光輝は「え?」と思った。これは牽制されたのだろうか?それとも「じゃあなってくれますか?」と言うところなのだろうか?
光輝がカナタの腕の中で悶々としていると、
「じゃあ、そろそろシャワーして出ようか」
と言われてしまい、夢のような時間はお開きになってしまった。
外はもう暗くなっていた。日曜の夜でもこの街の繁華街は光と音で溢れていた。
「コウ君は何番線?」
と聞かれて光輝はハッと顔を上げた。このまま別れるのは嫌だ。せめて連絡先を知りたい。なんと言えば断られないだろう。と考えているうちに駅に着いてしまっていた。
「あ、えっと、11番線かな…」
「俺は8番線だからここでバイバイだね。気をつけて帰って」
「あ、あの、俺、またカナタさんに会いたいです!」
思わず引き留めそうに伸ばしかけた腕を引っ込める。光輝は勇気を出して言ってみたが、カナタは
「ありがとう!機会があったらまた会お!またねー」
と言うとあっさりと人混みに紛れて振り返りもせずに行ってしまった。光輝は数秒ほど呆けたようにその場にいたが、誰かにぶつかられ舌打ちが聞こえると慌てて歩き出した。
それから光輝はしばらくあの甘い時間を忘れる事ができなかった。別の男に会ってみたいという気持ちにはもうなれなかった。
ただただカナタに会いたい。あの幸福な時間は自分だけが楽しかったのだろうか?と思い出すたびに胸が苦しい。
どうしようか迷った末に一度だけカナタにアプリを通じてお礼とまた会いたいですとシンプルに伝えたが、『機会があれば(^^)』とだけ返ってきたので、光輝はしばらくの間がっかりしたまま日々を過ごす羽目になった。
どんよりとした光輝の気持ちに追い打ちをかけるように関東は梅雨入りをしたのだった。
「だ、大丈夫れす…………」
光輝はベッドの上で脱力しながら答えた。あれから何度も突かれて、ふにゃふにゃにされて呂律が回らない。
「もうシャワー浴びて出る?それともこうしてる?」
カナタは光輝のそばに寝そべると液体のように伸びている体を抱きしめた。
「うん…」
カナタの腕に抱かれて胸の中にいると守られているような安心感がある。雛鳥はこういう気持ちかもしれない。と思った。
このまま眠ってしまいたい。朝まで一緒にいたい。カナタの肌は質の良いタオルケットみたいに吸いついてきて、瞼に心地良い重みを感じる。
この人が彼氏になってくれたら毎日この穏やかな多幸感を味わえるのかと、光輝は胸をときめかせた。
「あの、今日泊まりませんか?俺が出すんで」
光輝は一か八か提案してみた。叶うならもっとカナタと一緒に過ごしたい。彼のことを知りたいと思った。
しかしカナタは、
「うーん、ありがと。でもごめん、明日朝からバイトあるからさ。一回荷物取りに帰らないとまずいんだよね」
と色良い返事をしてはくれなかった。
「そうですよね、すみません」
「コウ君ってほんと可愛いなあ。君ならすぐに彼氏できるよ」
と言って髪を撫でてくれた。
「そうですかね…」
と答えつつ、光輝は「え?」と思った。これは牽制されたのだろうか?それとも「じゃあなってくれますか?」と言うところなのだろうか?
光輝がカナタの腕の中で悶々としていると、
「じゃあ、そろそろシャワーして出ようか」
と言われてしまい、夢のような時間はお開きになってしまった。
外はもう暗くなっていた。日曜の夜でもこの街の繁華街は光と音で溢れていた。
「コウ君は何番線?」
と聞かれて光輝はハッと顔を上げた。このまま別れるのは嫌だ。せめて連絡先を知りたい。なんと言えば断られないだろう。と考えているうちに駅に着いてしまっていた。
「あ、えっと、11番線かな…」
「俺は8番線だからここでバイバイだね。気をつけて帰って」
「あ、あの、俺、またカナタさんに会いたいです!」
思わず引き留めそうに伸ばしかけた腕を引っ込める。光輝は勇気を出して言ってみたが、カナタは
「ありがとう!機会があったらまた会お!またねー」
と言うとあっさりと人混みに紛れて振り返りもせずに行ってしまった。光輝は数秒ほど呆けたようにその場にいたが、誰かにぶつかられ舌打ちが聞こえると慌てて歩き出した。
それから光輝はしばらくあの甘い時間を忘れる事ができなかった。別の男に会ってみたいという気持ちにはもうなれなかった。
ただただカナタに会いたい。あの幸福な時間は自分だけが楽しかったのだろうか?と思い出すたびに胸が苦しい。
どうしようか迷った末に一度だけカナタにアプリを通じてお礼とまた会いたいですとシンプルに伝えたが、『機会があれば(^^)』とだけ返ってきたので、光輝はしばらくの間がっかりしたまま日々を過ごす羽目になった。
どんよりとした光輝の気持ちに追い打ちをかけるように関東は梅雨入りをしたのだった。
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