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第22話 君とは付き合いたくない(2)*
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光輝は洗濯物を干し終わると、汗をぬぐいながら麦茶を飲んだ。少し前まで続いてた雨も途絶え、ここ最近は暴力的な暑さを放つ太陽が姿を見せるようになった。テレビでは『今年も災害級の暑さ』『熱中症』などの単語が飛び交っている。
光輝は小さな頃から夏が好きではない。去年の夏に好きだった同級生に失恋してからもっと嫌いになった。洗濯物がすぐ乾く以外にいいところが見つからない。
けれども、もうすぐ夏休みだ。受験から解放されて、試用期間中ではあるが彼氏がいる初めての夏休みだ。光輝は小学生の時ぶりに夏休みを楽しみにしていた。
が、その前に試験がある。勉強は苦手ではなかったが、テスト前から終わるまでは奏汰に会わないことにしている。それが嫌だ。
奏汰とは隙あらば会っていた。大学では近づきすぎるなと言われているので、その分放課後にしょっちゅう奏汰の家に立ち寄った。奏汰は光輝が来るのも性行為も拒まなかった。拒まないが向こうから会いたい、したいとアクションを起こしてくれることがほぼなかった。それが光輝には少し寂しい。
少しでも間が空いたら奏汰との絆が元に戻ってしまいそうで、光輝は会えるうちに必死に奏汰との隙間を埋めていた。
「ねーーなんか食べるものあるー?」
一通りの家事を終えて学校に行く支度をしていると光輝の姉が部屋から出てきた。自由気ままな姉と光輝はあまり相性が良くなく、光輝は憂鬱な気持ちになった。
「食パンならあるけど」
光輝はぶっきらぼうに答える。
「じゃートーストがいい」
と言って姉は半分寝たまま食卓に座った。
「自分で焼けよ!」
光輝は姉を無視して鞄を持って玄関に向かった。
「けちー」
姉の悪口をスルーして光輝は
「今日休み?洗濯物取り込んどいてよ」
と言いながら靴紐をキュッと結んだ。
「えーーめんどくさ…。アンタいないの?」
「今日友達んち泊まってくる」
「友達なんていたの?」
「うるせーな!」
光輝は家を飛び出す。姉に構ってなどいられない。今日は奏汰の家に泊まる約束をしている。奏汰の家に泊まるのは三回目だ。早く授業終わらないかな…と光輝はまだ電車に乗ってもいないのに気持ちが逸る。
奏汰に会いたい。緩やかなパーマのかかったふわふわな茶色い髪の毛を触りたい。ラウンドのメガネの奥のやや垂れた優しい瞳で見つめられたい。穏やかな声音で話しかけられたいし、大きな手で撫でられたいし、逞しい腕で抱きしめられたい。奏汰といる時はその全てが自分のものだと思うとたまらない気持ちになる。
奏汰はどうだろう。奏汰も同じように思ってくれることはあるだろうか。それとも未だにセフレの人に囚われているのだろうか。
奏汰はセフレの人とはどうなったのだろうか。さすがに今は会ってはいないとは思うが、会いたいとは思っているかもしれない。今、自分とセフレの人とどちらかに会えるとしたら、どっちを選ぶだろう。
「…………」
すでに夏の盛りのような7月の太陽が光輝をじりじり照りつける。奏汰のことを考えると幸せな気持ちと不安な気持ちでいつも思考が焼けこげそうだった。
それでも不安な気持ちも寂しい気持ちも奏汰に直接会うと吹っ飛んでしまう。日付も変わるかという時間に、奏汰と光輝は肌を合わせていた。
何度か体を重ねて、奏汰が何を言えば悦ぶのか、どこを突けば善がるのか大体分かってきた。分かってはきたが、奏汰は光輝がいくら頑張っても達することがあまりない。
けれど、光輝はめげずに今夜も抽送を繰り返しながら奏汰に舌を絡め、首筋にキスをして胸を吸った。そうしているうちに奏汰の全身は汗でじっとりと濡れていた。
「奏汰さん、気持ち良い?」
「ん…うん…」
奏汰のナカはいつものように光輝を迎えてくれている。何度か腰を動かしているうちに、奏汰は
「あ、コウくん…今日イケそうかも…」
と切なげに呟いた。
「ほんと!?」
「はぁっ…はぁ…なんか…言って…」
奏汰は光輝にしがみついた。懇願しているようだった。
「…!」
光輝は焦って思いつくセリフを言ってみた。
「奏汰さんのここすっごいぐちゃぐちゃになってますよ…」
光輝の言葉に興奮したのか、奏汰はきつく挿入されている光輝のものを締め付ける。
「はぁ、あっあっ、あぁ、もっともっとぐちゃぐちゃにして!」
「あっ!奏汰さん、俺もイキそう」
光輝はさらに腰の動きを早めたが、奏汰は
「待って、お願い、もっと俺のことお仕置きして!」
と叫んだ。
「え!?」
(おしおき!?)
お仕置きとはなんだ、と光輝が今にも射精してしまいそうになりながら、ぐるぐると考える。頭が沸騰しそうになった。
「あ、ダメ、俺もう我慢できない…」
と言ったのは奏汰だ。
「イキそうですか?」
「違っ、う、」
「ん、あぁ、俺のおまんこ、おちんぽでお仕置きしてくださいっっ」
(え)
突然、直接的な卑猥な単語を羅列されて光輝は驚いて一瞬固まってしまった。その間も奏汰は勝手に言い続けている。
「あっごめんなさい、ごめんなさい、イク、イクっおまんこイッてるっ」
奏汰は叫ぶように言いながら、射精をした。白い粘液が奏汰の腹を汚していた。元々、あまり達することが少ないが、性器を触らずに後ろだけで達するのを見たのは初めてだった。
「…………」
光輝の顔はかーっと赤面して変な汗が吹き出す。茫然としたまま奏汰を見た。奏汰は荒い息を吐きながら、ぼんやりと焦点の合わない目で虚空を見ていた。その姿は今まで見た奏汰の中で一番艶めかしくていやらしかった。
「……っ、引いた…?」
奏汰はハッとしたように光輝に視点を戻した。
「え!!ひ、引いてないっ!!大丈夫、大丈夫!」
光輝は慌てて否定する。しかし奏汰は、光輝の萎えてコンドームが取れかかっているそこを見て
「やっぱり引いてんじゃん!」
と顔を赤くして叫んだ。
「もうやだ!今日はおしまい!!」
と言って奏汰はタオルケットを頭から被って丸まってしまった。
「ちょっと…!!」
光輝はタオルケットを引っ張るが奏汰もものすごい力で取られまいと奮闘する。破れるのではないかと思い、光輝は手の力をゆるめた。
「奏汰さぁ~ん…」
と今度はタオルケット越しに優しく撫でてみる。
「引いてないですよ。ちょっとびっくりしただけで、ぜ」
「それを引いたって言うんだよ!もう帰って!!」
奏汰はタオルケットの中からくぐもった声を出す。なんとなく鼻声に聞こえるのは泣いてるのかもしれない。
奏汰は結局布団から出てきてくれず、その後何を言っても答えてくれず、光輝は仕方なく一回外に出ることにした。帰ってもいいのだが、帰りたくない。家にいる姉に意地悪なことを言われるも嫌だし、傷ついているらしい奏汰を置いていくのも嫌だ。
奏汰はずっとあんなふうに乱れたかったのを我慢していたのかもしれない。それなら進歩じゃないかと光輝は散歩をしながら考えた。
今夜も熱帯夜だ。夜道といえどぬるま湯をかき分けて歩いているようだった。静かな住宅街では室外機が回る音がそこかしらから聞こえてきた。
奏汰とはだいぶ仲良くなれたような気もするのだが、一方で近づけば近づくほど、何か越えがたい最後の壁のようなものを感じていた。
奏汰は光輝にいつも優しい。光輝があれしたい、これしたいと言うとたまに文句を言いながらも真摯に対応してくれる。自ら強請られたことはないけれど、体も拒否されたことはない。
最初に泊まりに行った時のように性行為の最中に錯乱するようなことはなかった。けれど、何が奏汰の地雷なのか分からなくて、どうしてもおそるおそるの行為になってしまっていた。
自分も奏汰もいまいち没頭できている感じがしなかった。
光輝はそれでも奏汰と触れ合えれば良かったのだが、奏汰は満足していないのは明白だった。光輝が、して欲しいことは何か聞いても奏汰は「好きにしていいよ」と言うばかりでいまいちきちんと答えてくれなかったし、達してくれることも全然なかった。
(でも今日はイッてくれた…)
光輝は先ほどの奏汰の様子を思い出して、にやけた。人通りが少ない深夜なので、存分に口角を上げてしまった。奏汰のセリフには驚いてしまったが、このまま頑張れば奏汰はセフレの人より自分を好きになってくれるかもしれない。光輝はそう思ってうきうきとしていた。早く、早く自分が奏汰の一番になりたい。
やっと手に入れたんだ。俺が欲しかったもの。絶対に手放さない。
光輝は小さな頃から夏が好きではない。去年の夏に好きだった同級生に失恋してからもっと嫌いになった。洗濯物がすぐ乾く以外にいいところが見つからない。
けれども、もうすぐ夏休みだ。受験から解放されて、試用期間中ではあるが彼氏がいる初めての夏休みだ。光輝は小学生の時ぶりに夏休みを楽しみにしていた。
が、その前に試験がある。勉強は苦手ではなかったが、テスト前から終わるまでは奏汰に会わないことにしている。それが嫌だ。
奏汰とは隙あらば会っていた。大学では近づきすぎるなと言われているので、その分放課後にしょっちゅう奏汰の家に立ち寄った。奏汰は光輝が来るのも性行為も拒まなかった。拒まないが向こうから会いたい、したいとアクションを起こしてくれることがほぼなかった。それが光輝には少し寂しい。
少しでも間が空いたら奏汰との絆が元に戻ってしまいそうで、光輝は会えるうちに必死に奏汰との隙間を埋めていた。
「ねーーなんか食べるものあるー?」
一通りの家事を終えて学校に行く支度をしていると光輝の姉が部屋から出てきた。自由気ままな姉と光輝はあまり相性が良くなく、光輝は憂鬱な気持ちになった。
「食パンならあるけど」
光輝はぶっきらぼうに答える。
「じゃートーストがいい」
と言って姉は半分寝たまま食卓に座った。
「自分で焼けよ!」
光輝は姉を無視して鞄を持って玄関に向かった。
「けちー」
姉の悪口をスルーして光輝は
「今日休み?洗濯物取り込んどいてよ」
と言いながら靴紐をキュッと結んだ。
「えーーめんどくさ…。アンタいないの?」
「今日友達んち泊まってくる」
「友達なんていたの?」
「うるせーな!」
光輝は家を飛び出す。姉に構ってなどいられない。今日は奏汰の家に泊まる約束をしている。奏汰の家に泊まるのは三回目だ。早く授業終わらないかな…と光輝はまだ電車に乗ってもいないのに気持ちが逸る。
奏汰に会いたい。緩やかなパーマのかかったふわふわな茶色い髪の毛を触りたい。ラウンドのメガネの奥のやや垂れた優しい瞳で見つめられたい。穏やかな声音で話しかけられたいし、大きな手で撫でられたいし、逞しい腕で抱きしめられたい。奏汰といる時はその全てが自分のものだと思うとたまらない気持ちになる。
奏汰はどうだろう。奏汰も同じように思ってくれることはあるだろうか。それとも未だにセフレの人に囚われているのだろうか。
奏汰はセフレの人とはどうなったのだろうか。さすがに今は会ってはいないとは思うが、会いたいとは思っているかもしれない。今、自分とセフレの人とどちらかに会えるとしたら、どっちを選ぶだろう。
「…………」
すでに夏の盛りのような7月の太陽が光輝をじりじり照りつける。奏汰のことを考えると幸せな気持ちと不安な気持ちでいつも思考が焼けこげそうだった。
それでも不安な気持ちも寂しい気持ちも奏汰に直接会うと吹っ飛んでしまう。日付も変わるかという時間に、奏汰と光輝は肌を合わせていた。
何度か体を重ねて、奏汰が何を言えば悦ぶのか、どこを突けば善がるのか大体分かってきた。分かってはきたが、奏汰は光輝がいくら頑張っても達することがあまりない。
けれど、光輝はめげずに今夜も抽送を繰り返しながら奏汰に舌を絡め、首筋にキスをして胸を吸った。そうしているうちに奏汰の全身は汗でじっとりと濡れていた。
「奏汰さん、気持ち良い?」
「ん…うん…」
奏汰のナカはいつものように光輝を迎えてくれている。何度か腰を動かしているうちに、奏汰は
「あ、コウくん…今日イケそうかも…」
と切なげに呟いた。
「ほんと!?」
「はぁっ…はぁ…なんか…言って…」
奏汰は光輝にしがみついた。懇願しているようだった。
「…!」
光輝は焦って思いつくセリフを言ってみた。
「奏汰さんのここすっごいぐちゃぐちゃになってますよ…」
光輝の言葉に興奮したのか、奏汰はきつく挿入されている光輝のものを締め付ける。
「はぁ、あっあっ、あぁ、もっともっとぐちゃぐちゃにして!」
「あっ!奏汰さん、俺もイキそう」
光輝はさらに腰の動きを早めたが、奏汰は
「待って、お願い、もっと俺のことお仕置きして!」
と叫んだ。
「え!?」
(おしおき!?)
お仕置きとはなんだ、と光輝が今にも射精してしまいそうになりながら、ぐるぐると考える。頭が沸騰しそうになった。
「あ、ダメ、俺もう我慢できない…」
と言ったのは奏汰だ。
「イキそうですか?」
「違っ、う、」
「ん、あぁ、俺のおまんこ、おちんぽでお仕置きしてくださいっっ」
(え)
突然、直接的な卑猥な単語を羅列されて光輝は驚いて一瞬固まってしまった。その間も奏汰は勝手に言い続けている。
「あっごめんなさい、ごめんなさい、イク、イクっおまんこイッてるっ」
奏汰は叫ぶように言いながら、射精をした。白い粘液が奏汰の腹を汚していた。元々、あまり達することが少ないが、性器を触らずに後ろだけで達するのを見たのは初めてだった。
「…………」
光輝の顔はかーっと赤面して変な汗が吹き出す。茫然としたまま奏汰を見た。奏汰は荒い息を吐きながら、ぼんやりと焦点の合わない目で虚空を見ていた。その姿は今まで見た奏汰の中で一番艶めかしくていやらしかった。
「……っ、引いた…?」
奏汰はハッとしたように光輝に視点を戻した。
「え!!ひ、引いてないっ!!大丈夫、大丈夫!」
光輝は慌てて否定する。しかし奏汰は、光輝の萎えてコンドームが取れかかっているそこを見て
「やっぱり引いてんじゃん!」
と顔を赤くして叫んだ。
「もうやだ!今日はおしまい!!」
と言って奏汰はタオルケットを頭から被って丸まってしまった。
「ちょっと…!!」
光輝はタオルケットを引っ張るが奏汰もものすごい力で取られまいと奮闘する。破れるのではないかと思い、光輝は手の力をゆるめた。
「奏汰さぁ~ん…」
と今度はタオルケット越しに優しく撫でてみる。
「引いてないですよ。ちょっとびっくりしただけで、ぜ」
「それを引いたって言うんだよ!もう帰って!!」
奏汰はタオルケットの中からくぐもった声を出す。なんとなく鼻声に聞こえるのは泣いてるのかもしれない。
奏汰は結局布団から出てきてくれず、その後何を言っても答えてくれず、光輝は仕方なく一回外に出ることにした。帰ってもいいのだが、帰りたくない。家にいる姉に意地悪なことを言われるも嫌だし、傷ついているらしい奏汰を置いていくのも嫌だ。
奏汰はずっとあんなふうに乱れたかったのを我慢していたのかもしれない。それなら進歩じゃないかと光輝は散歩をしながら考えた。
今夜も熱帯夜だ。夜道といえどぬるま湯をかき分けて歩いているようだった。静かな住宅街では室外機が回る音がそこかしらから聞こえてきた。
奏汰とはだいぶ仲良くなれたような気もするのだが、一方で近づけば近づくほど、何か越えがたい最後の壁のようなものを感じていた。
奏汰は光輝にいつも優しい。光輝があれしたい、これしたいと言うとたまに文句を言いながらも真摯に対応してくれる。自ら強請られたことはないけれど、体も拒否されたことはない。
最初に泊まりに行った時のように性行為の最中に錯乱するようなことはなかった。けれど、何が奏汰の地雷なのか分からなくて、どうしてもおそるおそるの行為になってしまっていた。
自分も奏汰もいまいち没頭できている感じがしなかった。
光輝はそれでも奏汰と触れ合えれば良かったのだが、奏汰は満足していないのは明白だった。光輝が、して欲しいことは何か聞いても奏汰は「好きにしていいよ」と言うばかりでいまいちきちんと答えてくれなかったし、達してくれることも全然なかった。
(でも今日はイッてくれた…)
光輝は先ほどの奏汰の様子を思い出して、にやけた。人通りが少ない深夜なので、存分に口角を上げてしまった。奏汰のセリフには驚いてしまったが、このまま頑張れば奏汰はセフレの人より自分を好きになってくれるかもしれない。光輝はそう思ってうきうきとしていた。早く、早く自分が奏汰の一番になりたい。
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