16 / 17
第十五章
しおりを挟む
中間テストも終わり、季節は完全に夏モード。
部屋の中には、じっとりとした蒸し暑さが漂っていた。
俺――魔宮辰巳は、扇風機の前でゴロゴロしながらため息をつく。
「……暑すぎる。もう動きたくねぇ……」
騒がしかった学校生活もしばらくは休憩だ。
ようやく、静かな時間が戻ってくる――はずだった。
「辰巳、学校生活はどうだい?」
ふいに、背後から魔宮正義こと、じいちゃんの声が飛んでくる。
「んー、まあまあ楽しいよ。今は“聖心部”って部活で、人助けとかしてる」
その瞬間――親父の目がギラッと光った。
「貴様……まさか“キリストの道”に染まったんじゃあるまいなッ!」
「親父! 落ち着いてください! 辰巳坊っちゃんはまだ仏門の血が流れております!」
若頭がすかさず親父を羽交い締めにする。
「ち、違うって! ただ普通に、人助けしてるだけだよ!」
「“普通に”って言葉ほど信用ならん!」
「いやほんとに! 別に十字架に祈ったりしてねーし!」
「……ほんとか? お前、“アーメン”とか言い出したら勘当だぞ」
「言わねぇよ!!」
ようやく落ち着いた親父は、ふぅと煙を吐きながら言った。 「いいか、辰巳。信仰なんざどうでもいい。宗派が違おうと、考え方が違おうと関係ねぇ。困ってる奴、泣いてる奴がいたら助けろ。どんなにボロボロでも、最後まで手を伸ばせ――それが、魔宮家の流儀だ。」
「はーい」
魔宮は素直に返事をした。親父が昔から口酸っぱく言い続けてきたこの言葉は、もう完璧に頭に染み付いている。
扇風機の風を顔に当て、ひと息ついたそのとき――スマホが震えた。
画面を覗くと、神崎からのメールだった。件名が目に入る。
「緊急!みんなでワイワイせよ~♪」
嫌な予感がした魔宮は、そっとスマホを閉じた。
するとすぐに、次のメール通知が鳴る。今度は黒崎からだった。件名を見て、魔宮は思わず眉をひそめた。
「運命の糸は、我らに試練を課す――」
厨二病全開のその件名に、魔宮は小さく息を吐いた。
「……やっぱり来たか、黒崎のヤツ。」好奇心には勝てず、魔宮は画面をタップしてメールを開いた。
――そこに書かれていたのは、意味深な文面だった。
「孤影の館にて、我ら聖心部の力を試す時が来たり。
己が信念を貫き、迷える魂を導け――ただし、道は平穏ならず。
準備せよ、試練の幕開けを。」
「……こいつ、何を言ってやがるんだ?」魔宮が眉をひそめてスルーした瞬間、スマホが再び震えた。
今度は天城先生からだった。件名は至ってシンプル――「聖心部・夏合宿の案内」。
本文を開くと、文字の端々に先生らしい熱量が滲んでいた。
「夏休みになると生徒たちの喧嘩事件が年々増えておりましてね……。
魔宮くんが喧嘩で人を殺してしまうんじゃないかと考えると、夜も眠れません!
ですから……魔宮くん、夏合宿、来ますよね?ね!?絶対ですよ、絶対!」
魔宮は思わず画面を押さえ、ため息をついた。
「……なんで俺ばっかり対象になるんだよ……」
ため息をつきながらスマホを置こうとしたその瞬間、さらに新着メールが届いた。
画面には――綾瀬からだった。件名は柔らかくて、少しはにかんだ雰囲気だ。件名「夏合宿、魔宮くん来るよね?」
魔宮くん……夏合宿、やっぱり来てくれるよね?
みんなで一緒に過ごせたら嬉しいな、って思って……
魔宮は思わず唇を緩め、画面を見つめる。
スマホを放り出し、魔宮は床にゴロリと寝転がった。
「あーあ……今年の夏は、忙しくなりそうだなぁ!」
扇風機の風が顔をかすめ、じっとりとした夏の空気が部屋に漂う。
部屋の中には、じっとりとした蒸し暑さが漂っていた。
俺――魔宮辰巳は、扇風機の前でゴロゴロしながらため息をつく。
「……暑すぎる。もう動きたくねぇ……」
騒がしかった学校生活もしばらくは休憩だ。
ようやく、静かな時間が戻ってくる――はずだった。
「辰巳、学校生活はどうだい?」
ふいに、背後から魔宮正義こと、じいちゃんの声が飛んでくる。
「んー、まあまあ楽しいよ。今は“聖心部”って部活で、人助けとかしてる」
その瞬間――親父の目がギラッと光った。
「貴様……まさか“キリストの道”に染まったんじゃあるまいなッ!」
「親父! 落ち着いてください! 辰巳坊っちゃんはまだ仏門の血が流れております!」
若頭がすかさず親父を羽交い締めにする。
「ち、違うって! ただ普通に、人助けしてるだけだよ!」
「“普通に”って言葉ほど信用ならん!」
「いやほんとに! 別に十字架に祈ったりしてねーし!」
「……ほんとか? お前、“アーメン”とか言い出したら勘当だぞ」
「言わねぇよ!!」
ようやく落ち着いた親父は、ふぅと煙を吐きながら言った。 「いいか、辰巳。信仰なんざどうでもいい。宗派が違おうと、考え方が違おうと関係ねぇ。困ってる奴、泣いてる奴がいたら助けろ。どんなにボロボロでも、最後まで手を伸ばせ――それが、魔宮家の流儀だ。」
「はーい」
魔宮は素直に返事をした。親父が昔から口酸っぱく言い続けてきたこの言葉は、もう完璧に頭に染み付いている。
扇風機の風を顔に当て、ひと息ついたそのとき――スマホが震えた。
画面を覗くと、神崎からのメールだった。件名が目に入る。
「緊急!みんなでワイワイせよ~♪」
嫌な予感がした魔宮は、そっとスマホを閉じた。
するとすぐに、次のメール通知が鳴る。今度は黒崎からだった。件名を見て、魔宮は思わず眉をひそめた。
「運命の糸は、我らに試練を課す――」
厨二病全開のその件名に、魔宮は小さく息を吐いた。
「……やっぱり来たか、黒崎のヤツ。」好奇心には勝てず、魔宮は画面をタップしてメールを開いた。
――そこに書かれていたのは、意味深な文面だった。
「孤影の館にて、我ら聖心部の力を試す時が来たり。
己が信念を貫き、迷える魂を導け――ただし、道は平穏ならず。
準備せよ、試練の幕開けを。」
「……こいつ、何を言ってやがるんだ?」魔宮が眉をひそめてスルーした瞬間、スマホが再び震えた。
今度は天城先生からだった。件名は至ってシンプル――「聖心部・夏合宿の案内」。
本文を開くと、文字の端々に先生らしい熱量が滲んでいた。
「夏休みになると生徒たちの喧嘩事件が年々増えておりましてね……。
魔宮くんが喧嘩で人を殺してしまうんじゃないかと考えると、夜も眠れません!
ですから……魔宮くん、夏合宿、来ますよね?ね!?絶対ですよ、絶対!」
魔宮は思わず画面を押さえ、ため息をついた。
「……なんで俺ばっかり対象になるんだよ……」
ため息をつきながらスマホを置こうとしたその瞬間、さらに新着メールが届いた。
画面には――綾瀬からだった。件名は柔らかくて、少しはにかんだ雰囲気だ。件名「夏合宿、魔宮くん来るよね?」
魔宮くん……夏合宿、やっぱり来てくれるよね?
みんなで一緒に過ごせたら嬉しいな、って思って……
魔宮は思わず唇を緩め、画面を見つめる。
スマホを放り出し、魔宮は床にゴロリと寝転がった。
「あーあ……今年の夏は、忙しくなりそうだなぁ!」
扇風機の風が顔をかすめ、じっとりとした夏の空気が部屋に漂う。
0
あなたにおすすめの小説
貞操逆転世界で出会い系アプリをしたら
普通
恋愛
男性は弱く、女性は強い。この世界ではそれが当たり前。性被害を受けるのは男。そんな世界に生を受けた葉山優は普通に生きてきたが、ある日前世の記憶取り戻す。そこで前世ではこんな風に男女比の偏りもなく、普通に男女が一緒に生活できたことを思い出し、もう一度女性と関わってみようと決意する。
そこで会うのにまだ抵抗がある、優は出会い系アプリを見つける。まずはここでメッセージのやり取りだけでも女性としてから会うことしようと試みるのだった。
俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた
夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。
数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。
トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。
俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
俺をフッた女子に拉致されて、逃げ場のない同棲生活が始まりました
ちくわ食べます
恋愛
大学のサークル飲み会。
意を決して想いを告げた相手は、学内でも有名な人気女子・一ノ瀬さくら。
しかし返ってきたのは――
「今はちょっと……」という、曖昧な言葉だった。
完全にフラれたと思い込んで落ち込む俺。
その3日後――なぜか自分のアパートに入れなくなっていた。
高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる