問題児の俺、何故かギャルシスターと更生させられることになったんだが

週末のべるぜぶぶ

文字の大きさ
15 / 17

第十四話

しおりを挟む
聖桜学園の廊下は、やたらと長い。
一歩間違えると、ラスボスでも出てきそうなダンジョンみたいだ。

そんな廊下を――俺、魔宮辰巳は包帯ぐるぐるの頭で歩いていた。
……そう、先日ヤンキーにどつかれたせいで、見事に負傷中である。

当然、注目の的だ。

「魔宮くん、喧嘩したの!?」
「最近おとなしかったのに~、見直してたのに~!」
「やっぱ“喧嘩番長”の称号は返上できなかったか……」

――そんな称号、いつの間に授与されたんだよ。

そのとき。

「おはよー、魔宮ーっ! 今日のテスト自信ある?」

ドンッ! 背中に衝撃。
反射的に振り向くと、そこには満面の笑みを浮かべた神崎がいた。

「いってぇ……神崎、おまえな……! 頭ケガしてんの見えねぇのか!?」
「えっ、あ、ごめん! でも生きてるなら元気ってことでしょ!」
「いや論理おかしいだろ!」

神崎は悪びれもせずに笑いながら、俺の包帯をじーっと見つめてくる。
「……それ、巻き方ダサくない?」
「黙れ。命の勲章だ。」
「うわー出た、厨二病。黒崎だけで十分だよ。」

ため息をつきながら教室へ入るとすでに綾瀬、黒崎がそれぞれ机に向かっていた。
妙に真剣な顔で勉強している。

「何その集中力……」
俺がつぶやくと、黒崎が顔も上げずに言った。
「今日、中間テストだろ。それに――“なんでも券”チャンスだ。」

「……ああ、あれか。好きなお願い一つ聞いてもらえるやつ。」
「そう、それ。」

神崎がニヤッと笑う。
「ふふふ、優勝したら魔宮に“シスター服で謝罪”とか命じちゃおうかなぁ~」
「やめろ、罰ゲームが過ぎる!」

そのとき、教室のドアが開いた。

「おはよー。はい注目~! 今日はいよいよテストだぞ~!」

担任の天城先生が、いつも通りのテンションで入ってくる。
だが俺の頭を見ると、二度見したあと――なぜかスルー。
まあ、そこは触れない優しさだろう。

教室の空気は、どこかピリッとしていた。
クラスメイトが一斉に席に着き、ペンの音やページをめくる音だけが響く。

俺は包帯の上から頭を軽く押さえ、深呼吸。
「よし……集中、集中だ。」

神崎は前の席で机に突っ伏しな

たがら、鉛筆をカチカチと鳴らしている。
綾瀬は真剣そのもので、ノートをギッシリと埋めていた。
黒崎は少し前のめりで、無言で問題を解いている――その頬には、まだ涙の跡がうっすら残っていた。

「……あいつら、何にそんなに真剣になってるんだ?」

試験開始のチャイムが鳴る。
「はい、スタート!」
天城先生の声に合わせて、教室が一気に静まり返る。

ページをめくる音。ペン先の走る音。
それだけで、異様な緊張感が生まれる。

俺は問題用紙を見下ろした。
「……まずは基本からか……」

頭の包帯が少しズキズキする。
だが集中を切らさず、ペンを走らせる。

そのとき、後ろから小さな笑い声が聞こえた。
「ふふっ……この問題、天城先生やるじゃん」

思わず横目で見ると、神崎が眉間にしわを寄せながらも楽しそうにノートを見ていた。
――ったく、こいつはどんな時でもマイペースだ。

やがて天城先生が声を上げた。
「終了ーっ!」

教室中が一斉に息をつく。

「ふぅ……」
俺は背もたれに体を預け、ぼんやり天井を見上げた。

「魔宮、どうだった?」
神崎歩いて話しかけてきた。

「あー……頭が痛くて、あんま集中できなかったわ。」
「そっかー。でも、元気そうで何より!」

……うん、元気ってのは、こういう意味じゃねぇ。テストが終わり、俺たちはいつものように部室へ集まっていた。
窓の外は夕焼け色で、修道院の古い壁にオレンジの光が差し込んでいる。

「ふあ~、終わった終わった~!」
神崎がソファにダイブしながら叫ぶ。
「もう一生勉強したくな~い!」

「お前、毎回それ言ってるけど一週間後にまた言うだろ」
「うっ……否定できないのが悔しい」

綾瀬はそんなやり取りをよそに、静かに紅茶を注いでいた。
「でも、なんだかんだで今回はちゃんと頑張ったよね」
「そうそう、なんでも券かかってるしな」

俺がそう言うと、ちょうどドアが開いた。

「おーい、お前ら~! 今回はよく頑張ったな!」

顧問の天城先生が、成績表の束を片手に入ってくる。
白衣のポケットには、なぜかチョコバー。いつも通りだ。

「お互いの苦手教科を補い合って、なんとか全員赤点回避! いや~、青春してるなぁ~!」
「先生、それ完全に部活のノリですよね」
「だって“聖心部”だろ? 心を助け合うのがモットーだ!」

そう言って天城先生はニヤリと笑い、成績表を手に取る。
「じゃあ――結果発表、いっちゃおうか!」

神崎が身を乗り出す。

「出た、恒例のドラムロールタイム!」
黒崎が机を指でトントン叩きながら、「ドゥルルルルル……」と口でリズムを刻む。

天城先生がわざとらしく間を置いた。

「まずは……ビリから!」

部室に一瞬、緊張が走る。
天城先生が紙をめくり、ニヤッと笑う。

「――魔宮辰巳!」
 

「……ま、赤点じゃないだけ奇跡かな」

「全体的に点数は伸びてる健闘した、拍手!」「パチパチパチ~」
神崎が拍手しながら、にやけ顔で言った。
「いや~、“喧嘩番長”が“勉強番長”にはなれなかったか~」
「黙れ。包帯つけながらテスト受けたハンデ考慮しろ!」天城先生が笑いながら次の紙を見る。
「じゃあ続いて……三位、神崎!」

「は? ウチ三位!? マジ~!?」
神崎が立ち上がって、思わず頭を抱える。
「え、でも今回ガチで頑張ったんだけど!?」

「そう言って、寝落ちしてた日あったじゃん」
黒崎が冷静にツッコむ。

「うるさ~い! 夜の二時までは頑張ってたし!」
綾瀬がくすりと笑う。
「でも惜しいな~。あとちょっとで二位だったのに」
「うぅ~、ギリ負けるのいっちばん悔しいやつ~!」
神崎はソファにダイブして、クッションを抱きしめた。天城先生がわざと声を張る。
「では残るは――クラスの優等生、黒崎! そしてそれに挑む綾瀬!」

「ふっ、勝負の結果なんて見えてる」
黒崎は髪をかき上げ、静かに腕を組む。
「今回は満点を狙った」

「そう言って、前回ケアレスミスしてたじゃん」
綾瀬が紅茶を口にしながら、涼しい顔で返す。

「……あれは事故だ」
「はいはい、理系男子あるある~」
神崎がソファで転がりながら茶化す。

天城先生はわざとらしく二人の成績表を見比べ、ニヤリ。
「僅差だな……まさかここまで接戦とは!」

部室の空気が一瞬だけ張り詰める。
神崎が息をのむ。俺も思わず身を乗り出した。「勝者は――綾瀬!最高得点の98点だ!「やったぁ!」
綾瀬が立ち上がって手を叩く。
黒崎は小さくため息をつき、天井を仰いだ。
「……文系、強し」
「黒崎くん、次は一緒に勉強しよう?」
「……善処する」

「はいはい、それじゃ今回の“なんでも券”は綾瀬の勝ち~!」
神崎が叫ぶと、部室に笑い声が広がる。天城先生は満足げにうなずいた。
「うんうん、青春ってやつだな。それじゃ私は職員会議があるから、仲良くするんだぞ~」

白衣を翻し、天城先生は部室を出ていった。
ドアが閉まる音がして、静寂のあと――

「で、綾瀬ちゃん!」
神崎がすかさず身を乗り出す。
「“なんでも券”、何に使うの~? やっぱ告白とか!?」

「ちょ、ちょっと神崎さん!」
綾瀬はあわてて笑いながら手を振った。
「そんな使い方しないってば~」

「え~? 怪しい~!」
神崎がニヤニヤとからかう。

その横で、黒崎が紅茶を口にしながら静かに言った。

「……“願いの書”をどう使うかは、その者の魂次第だ。」
黒崎が紅茶を口にしながらつぶやく。

「出た、黒崎の中二ワード!」
神崎がすかさず突っ込む。

「ち、違うわ! 比喩よ、比喩!」
黒崎は頬を染めてむくれながらも、カップを置いた。
「……綾瀬なら、変なことには使わないと思っただけ。」

「そっか、黒崎さんなりの信頼ってやつだね」
綾瀬がくすっと笑うと、黒崎は少しだけ視線をそらした。
「……別に、そういうつもりじゃないけど。」


笑い声が広がる。
その音の中で、ふと綾瀬の笑う顔が病室の光景と重なった。

――“魔宮くんに使う”

冗談とも本気ともつかないあの言葉。
もし本当に使うとしたら、なぜ俺なんかに――。
そんな考えが胸を掠める。

窓の外では、暮れゆく空が少しだけ滲んで見えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貞操逆転世界で出会い系アプリをしたら

普通
恋愛
男性は弱く、女性は強い。この世界ではそれが当たり前。性被害を受けるのは男。そんな世界に生を受けた葉山優は普通に生きてきたが、ある日前世の記憶取り戻す。そこで前世ではこんな風に男女比の偏りもなく、普通に男女が一緒に生活できたことを思い出し、もう一度女性と関わってみようと決意する。 そこで会うのにまだ抵抗がある、優は出会い系アプリを見つける。まずはここでメッセージのやり取りだけでも女性としてから会うことしようと試みるのだった。

俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。 数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。 トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。 俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

俺をフッた女子に拉致されて、逃げ場のない同棲生活が始まりました

ちくわ食べます
恋愛
大学のサークル飲み会。 意を決して想いを告げた相手は、学内でも有名な人気女子・一ノ瀬さくら。 しかし返ってきたのは―― 「今はちょっと……」という、曖昧な言葉だった。 完全にフラれたと思い込んで落ち込む俺。 その3日後――なぜか自分のアパートに入れなくなっていた。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...