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第三話:月明かりが照らす、君の無防備な寝顔
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腕の中で、白銀夜瑠は小さな寝息を立てていた。
完璧な生徒会長の仮面は完全に剥がれ落ち、そこには熱に浮かされた、ただの一人の少女の寝顔があるだけだ。
すっかり陽が落ちた生徒会室は、月明かりと街のネオンにぼんやりと照らされている。
静寂の中で、さっきまでの出来事が生々しい熱を持って俺の脳裏に蘇る。
彼女の唇の感触。
必死に俺を求め、そして俺の全てを受け入れた、あの健気な姿。
最後に流した、一粒の涙。
(……俺は、とんでもないことをしてしまったんじゃないか?)
罪悪感が胸をよぎる。
だがそれ以上に、腕の中にいる彼女の存在が、どうしようもなく愛おしかった。
守ってやりたい、と。心の底からそう思った。
「……っ……」
俺の汚れた下着と制服を、そっと整える。
彼女の制服も、乱れたスカートを直してやった。その指先が太ももに触れるたび、心臓が馬鹿みたいに跳ねる。
このままここにいるわけにはいかない。
彼女を、家に帰してやらないと。
俺は覚悟を決め、彼女の華奢な身体をそっと横抱きにした。
いわゆる、お姫様抱っこ、というやつだ。
思ったよりもずっと軽いその体重に、胸がちくりと痛む。こいつ、ちゃんと飯を食ってるんだろうか。
「ん……」
腕の中で、彼女が身じろぎする。
俺の首に、か細い腕がゆるく回された。無意識の行動だろうが、その信頼しきった仕草に、俺の鼓動はさらに速くなる。
生徒会室の鍵を閉め、俺は月明かりだけが頼りの廊下を、慎重に進んだ。
夜の学校は、昼間とは全く違う顔をしている。
しん、と静まり返った廊下に、俺たちの衣擦れの音と、彼女の小さな寝息だけが響いていた。
(白銀の家、どこなんだ……?)
幸い、彼女の学生鞄から見つけ出した生徒手帳に、住所は書かれていた。
地図アプリで検索すると、学校から歩いて15分ほどの、高級住宅街の一角だった。
やはり、というべきか。
夜の冷たい空気が、火照った俺の頬に心地いい。
腕の中の彼女は、俺の胸に顔をうずめ、安心しきった様子で眠り続けている。
すれ違う人もいない夜道を、俺はただひたすら、彼女の家の場所だけを目指して歩いた。
やがてたどり着いたのは、少女漫画にでも出てきそうな、立派な門構えの屋敷だった。
表札には、確かに「白銀」と書かれている。
(……ここ、か)
インターホンを押すべきか。
なんて説明すればいい?
「娘さんが熱を出して倒れたので送ってきました」?
そのせいで、俺の帰りがこんなに遅くなったことを、どう説明する?
俺が門の前で逡巡している、その時だった。
「……ありすがわ、くん……?」
腕の中から、掠れた、甘い声が聞こえた。
見下ろすと、白銀がうっすらと目を開け、夢うつつに俺を見上げていた。
月明かりに照らされた彼女の瞳は、まだ熱で潤んでいる。
「……白銀さん。家、着いたぞ」
「……うん……」
彼女はこくりと頷くと、俺の首に回していた腕に、きゅっと力を込めた。
「……おろして、ほしくない……」
「は……?」
「……このまま……あなたの腕の中がいい……」
駄々をこねる子供のような、甘えきった声。
その言葉と、俺の胸にすり寄せてくる柔らかな感触に、一度は収まったはずの下腹部の熱が、再びじわりと蘇るのを感じた。
まずい。このままでは、また理性が──。
俺が葛藤していると、彼女はさらに追い打ちをかけるように、とんでもないことを囁いた。
「……ねぇ……私の部屋、誰もいないから……“ご褒美”のつづき、しよ……?」
その悪魔的な囁きは、俺の思考を完全に麻痺させるには、十分すぎるほどの威力を持っていた。
【続く】
完璧な生徒会長の仮面は完全に剥がれ落ち、そこには熱に浮かされた、ただの一人の少女の寝顔があるだけだ。
すっかり陽が落ちた生徒会室は、月明かりと街のネオンにぼんやりと照らされている。
静寂の中で、さっきまでの出来事が生々しい熱を持って俺の脳裏に蘇る。
彼女の唇の感触。
必死に俺を求め、そして俺の全てを受け入れた、あの健気な姿。
最後に流した、一粒の涙。
(……俺は、とんでもないことをしてしまったんじゃないか?)
罪悪感が胸をよぎる。
だがそれ以上に、腕の中にいる彼女の存在が、どうしようもなく愛おしかった。
守ってやりたい、と。心の底からそう思った。
「……っ……」
俺の汚れた下着と制服を、そっと整える。
彼女の制服も、乱れたスカートを直してやった。その指先が太ももに触れるたび、心臓が馬鹿みたいに跳ねる。
このままここにいるわけにはいかない。
彼女を、家に帰してやらないと。
俺は覚悟を決め、彼女の華奢な身体をそっと横抱きにした。
いわゆる、お姫様抱っこ、というやつだ。
思ったよりもずっと軽いその体重に、胸がちくりと痛む。こいつ、ちゃんと飯を食ってるんだろうか。
「ん……」
腕の中で、彼女が身じろぎする。
俺の首に、か細い腕がゆるく回された。無意識の行動だろうが、その信頼しきった仕草に、俺の鼓動はさらに速くなる。
生徒会室の鍵を閉め、俺は月明かりだけが頼りの廊下を、慎重に進んだ。
夜の学校は、昼間とは全く違う顔をしている。
しん、と静まり返った廊下に、俺たちの衣擦れの音と、彼女の小さな寝息だけが響いていた。
(白銀の家、どこなんだ……?)
幸い、彼女の学生鞄から見つけ出した生徒手帳に、住所は書かれていた。
地図アプリで検索すると、学校から歩いて15分ほどの、高級住宅街の一角だった。
やはり、というべきか。
夜の冷たい空気が、火照った俺の頬に心地いい。
腕の中の彼女は、俺の胸に顔をうずめ、安心しきった様子で眠り続けている。
すれ違う人もいない夜道を、俺はただひたすら、彼女の家の場所だけを目指して歩いた。
やがてたどり着いたのは、少女漫画にでも出てきそうな、立派な門構えの屋敷だった。
表札には、確かに「白銀」と書かれている。
(……ここ、か)
インターホンを押すべきか。
なんて説明すればいい?
「娘さんが熱を出して倒れたので送ってきました」?
そのせいで、俺の帰りがこんなに遅くなったことを、どう説明する?
俺が門の前で逡巡している、その時だった。
「……ありすがわ、くん……?」
腕の中から、掠れた、甘い声が聞こえた。
見下ろすと、白銀がうっすらと目を開け、夢うつつに俺を見上げていた。
月明かりに照らされた彼女の瞳は、まだ熱で潤んでいる。
「……白銀さん。家、着いたぞ」
「……うん……」
彼女はこくりと頷くと、俺の首に回していた腕に、きゅっと力を込めた。
「……おろして、ほしくない……」
「は……?」
「……このまま……あなたの腕の中がいい……」
駄々をこねる子供のような、甘えきった声。
その言葉と、俺の胸にすり寄せてくる柔らかな感触に、一度は収まったはずの下腹部の熱が、再びじわりと蘇るのを感じた。
まずい。このままでは、また理性が──。
俺が葛藤していると、彼女はさらに追い打ちをかけるように、とんでもないことを囁いた。
「……ねぇ……私の部屋、誰もいないから……“ご褒美”のつづき、しよ……?」
その悪魔的な囁きは、俺の思考を完全に麻痺させるには、十分すぎるほどの威力を持っていた。
【続く】
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