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第5章:亀裂
5-4:結果とプロセス
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5人がシミュレーターから降り立つと、ドーム内は奇妙な沈黙に包まれていた。
橘涼介が、壁に寄りかかったまま、初めて興味深そうな目で彼らを見ていた。他のクルーたちも、あの空中分解寸前だったチームが、なぜミッションをクリアできたのか理解できず、戸惑いの表情を浮かべている。
三笠博士が、ゆっくりと彼らの前に歩み出た。その手には、先ほどと同じタブレットが握られている。
彼は、タブレットのログデータと、5人の顔を交互に見比べた後、静かに口を開いた。
「……結果は、成功だ。見事なドッキングだったと言える」
その言葉に、大山の肩から、わずかに力が抜けた。
「だが」
三笠は、しかし、すぐに言葉を継いだ。
「そのプロセスは、午前中と何ら変わらん。災害レベルの大失敗だ」
その一言が、かすかな安堵の空気を再び凍りつかせた。
「独裁、反抗、傍観。君たちの役割は、午前中と本質的には何も変わっていない。ただ、偶然にも、そのバラバラなベクトルが、ほんの一瞬だけ同じ方向を向いただけに過ぎん。……それは、連携とは言わん。ただの、幸運だ」
三笠の言葉は、彼らの不格好な勝利に隠された、本質的な問題を容赦なく抉り出した。
「そして……」
三笠は、初めて、高森大地の目をまっすぐに見た。
「高森大地。君は、自分の無力さに気づいたようだな」
「……はい」
大地は、か細い声で答えるしかなかった。
「君には、健吾のような統率力も、しずくのような分析力も、結実のような技術力もない。空っぽだ。その自覚は、正しい」
あまりにも直接的な、残酷な評価。大地の膝が、笑いそうになる。
「だが」
三笠の瞳が、ガラスレンズの奥で、鋭く光った。
「君は、今日、たった一つだけ、他の誰にもできない仕事をした。……バラバラに錆びついて、固着しかけていた歯車と歯車の間に、自らの身を投じて、無理やり潤滑油の役割を果たした。その結果、歯車はほんの少しだけ、回った」
潤滑油。その言葉が、大地の頭の中で反響した。
三笠博士は、格納庫で、確かにそう言っていた。
「それは、君にしかできない役割かもしれん。……だが、覚えておきたまえ。潤滑油は、歯車が回るたびにすり減り、いずれは燃え尽きる消耗品だということを。他人の感情の間に身を投じ続けることが、どれほど過酷なことか。……君に、その覚悟があるかね?」
それは、問いかけの形をした、警告だった。
大地は、何も答えられなかった。覚悟なんて、あるはずもなかった。
「評価は、変わらん。チーム・アルファの減点は、10のままだ。成功は、当然の結果。失敗にのみ、罰が与えられる」
三笠は、冷徹にそう言い放つと、全員に向き直った。
「本日の訓練は、これにて終了だ。各自、自室に戻って今日の失敗をよく反芻するように。……解散」
その言葉を最後に、三笠は背を向けて去っていった。
他のクルーたちも、それぞれに何かを考え込むように、あるいはチーム・アルファを憐れむように、静かにドームを後にしていく。
後に残されたのは、やはりチーム・アルファの5人だけだった。
成功したはずなのに、その心は、午前中の敗北よりもさらに重く、冷たく沈んでいた。
橘涼介が、壁に寄りかかったまま、初めて興味深そうな目で彼らを見ていた。他のクルーたちも、あの空中分解寸前だったチームが、なぜミッションをクリアできたのか理解できず、戸惑いの表情を浮かべている。
三笠博士が、ゆっくりと彼らの前に歩み出た。その手には、先ほどと同じタブレットが握られている。
彼は、タブレットのログデータと、5人の顔を交互に見比べた後、静かに口を開いた。
「……結果は、成功だ。見事なドッキングだったと言える」
その言葉に、大山の肩から、わずかに力が抜けた。
「だが」
三笠は、しかし、すぐに言葉を継いだ。
「そのプロセスは、午前中と何ら変わらん。災害レベルの大失敗だ」
その一言が、かすかな安堵の空気を再び凍りつかせた。
「独裁、反抗、傍観。君たちの役割は、午前中と本質的には何も変わっていない。ただ、偶然にも、そのバラバラなベクトルが、ほんの一瞬だけ同じ方向を向いただけに過ぎん。……それは、連携とは言わん。ただの、幸運だ」
三笠の言葉は、彼らの不格好な勝利に隠された、本質的な問題を容赦なく抉り出した。
「そして……」
三笠は、初めて、高森大地の目をまっすぐに見た。
「高森大地。君は、自分の無力さに気づいたようだな」
「……はい」
大地は、か細い声で答えるしかなかった。
「君には、健吾のような統率力も、しずくのような分析力も、結実のような技術力もない。空っぽだ。その自覚は、正しい」
あまりにも直接的な、残酷な評価。大地の膝が、笑いそうになる。
「だが」
三笠の瞳が、ガラスレンズの奥で、鋭く光った。
「君は、今日、たった一つだけ、他の誰にもできない仕事をした。……バラバラに錆びついて、固着しかけていた歯車と歯車の間に、自らの身を投じて、無理やり潤滑油の役割を果たした。その結果、歯車はほんの少しだけ、回った」
潤滑油。その言葉が、大地の頭の中で反響した。
三笠博士は、格納庫で、確かにそう言っていた。
「それは、君にしかできない役割かもしれん。……だが、覚えておきたまえ。潤滑油は、歯車が回るたびにすり減り、いずれは燃え尽きる消耗品だということを。他人の感情の間に身を投じ続けることが、どれほど過酷なことか。……君に、その覚悟があるかね?」
それは、問いかけの形をした、警告だった。
大地は、何も答えられなかった。覚悟なんて、あるはずもなかった。
「評価は、変わらん。チーム・アルファの減点は、10のままだ。成功は、当然の結果。失敗にのみ、罰が与えられる」
三笠は、冷徹にそう言い放つと、全員に向き直った。
「本日の訓練は、これにて終了だ。各自、自室に戻って今日の失敗をよく反芻するように。……解散」
その言葉を最後に、三笠は背を向けて去っていった。
他のクルーたちも、それぞれに何かを考え込むように、あるいはチーム・アルファを憐れむように、静かにドームを後にしていく。
後に残されたのは、やはりチーム・アルファの5人だけだった。
成功したはずなのに、その心は、午前中の敗北よりもさらに重く、冷たく沈んでいた。
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