よく分からない。だけど…

いなば

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「なあ、どう?おためし期間は」
弁当を机上にひろげながら村瀬が小声で話を振ってきた。今朝は課題の話などを優先して話しており、お互いに照れくさくてこの時間までこの話題には触れなかった。なかなか気恥しい親友との恋バナ。
「ああ、うん...えっと」
「森くん、今いい?」
俺が話し始めようとした時、見たことの無い女子が俺に話しかけてきた。
「なに?」
「今日放課後時間ありますか?」
その場にいたクラスメイトたちが一斉にこちらをむいた
「今日は帰りに約束があるから、なるべくすぐに帰りたいんだけど」
「あ~、そっか。そうなんだ...じゃあ、」
去ろうとした女子に声をかけた
「今じゃダメ?」
村瀬が、驚いた顔をした。女子も驚いている。
「ここじゃ言えないこと?
場所変える?先、食ってて」
村瀬に声をかけ俺が立ち上がり廊下に出た。周りの視線が無くなる、
少し人が疎らになった廊下で立ち止まった
「あ、あり、ありがとう。まさか、話聞いて貰えると思わなくて。あの、貴重なお昼休憩無駄にさせたくないのでいきなり言っちゃうんですけど...!好きなので付き合って欲しいです..」
自分で言うのもなんだけど予想はついていた内容だった。
「うん、ごめんね。俺は君のこと知らないし付き合うとかは出来ないんだけど...」
女子は謝らないでください!そうですよね!と、気丈に振舞ってくれた。
「言いたいこと言えて偉いよね。すごい緊張した?」
女子が目に涙を貯めて頷く。
「どうして、俺なの」
「森くんは、誰に対しても態度が変わらない。どんな美人でもみんな扱いが同じで、こんな私と、美人な子との扱いも一緒で...」
女子が泣き出してしまった。
本当に申し訳ないけど、心底興味なかったからみんなに同じ扱いになっていただけなんだけどな...この子にはそれが良いところだと見えていたのか...
「こんな私だなんて言うもんじゃないよ。君は勇気のある誠実ないい子だと思う。俺だったら1人でなんて来れないよ...実は俺、付き合ってる人が居るんだ。だから君と付き合うことはできないんだけど、俺、今日で君のこと覚えたし友達になってはくれないかな」
恋バナするような、友達が欲しかったというのもあるし、この子を無下にはできなかった。好きな人と話すには莫大な勇気がいることを俺は身をもって知ってしまっていたし、今まで俺に近づいてきたような高飛車でもなんでもない誠実に俺を好いていることが伝わってきた。
「でも、残酷か。」
俺が言うと女子はブンブンと力強く首を振った
「いいえ!元々、憧れの方が強くて!お近付きになれればそれで...!!」
憧れだから付き合わなくていい?そういうこともあるのか
「昼飯食べに戻ろうか。君は...」
「あ!隣のクラスの真嶋佳奈です」
「真嶋も友達のとこ戻る?」
「あ!いや、私は所謂ボッチなのでひとり飯ですのでお気づかいなく!」
去ろうとした真嶋を、またもや引き止める
「なぁ、真嶋が良ければ一緒に食おうぜ。」
ご飯とってきます!と走っていった真嶋より先に俺は村瀬の元に戻る。
「なあ、どういう風の吹き回し?告白の雰囲気だったよ?」
今日はチョコチップメロンパンを頬張りながら村瀬が言った。
「1人で来てたじゃん。誰にも面白がられずに演出もせずドーンとさ。俺には出来ない。今までの子達の中でもそういう子がもしかしたらいたと思うとおれは酷いことしてたなって。」
「今までの子達って...どんだけ告られてんだよ。まあ、今の森は恋する森くんだからね、気持ちがわかってしまったのか」
ニヤニヤと村瀬が言う
「まあ、そう。それで今から一緒に飯食うことにしたから」
近くにあった机をひとつくっ付けながら俺は言った。
「は?!俺は?!」
村瀬が立ち上がる。
「え?てか付き合うの?」
村瀬がおれにずずいと近寄る。
「滅相もないです!おふたりの邪魔しません!私は壁です!」
ちょうどそこへ、真嶋が現れた。
「友達になった。付き合ってる人がいることは伝えてあるんだ」
俺が説明すると村瀬が真嶋へ視線を移した。
「壁?てか、そんなのって、つらくないの?」
「おふたりとも、お優しい!流石です!」
椅子にサッと座り自らのお弁当をひろげ、真嶋はいただきます。と、手を合わせた。
「私、隣のクラスの真嶋佳奈と申します!所謂オタク、所謂ボッチです。村瀬くんの事ももちろん存じ上げておりますので!」
「...個性強そうだな?」
「裏表無さそうだろ。そして誠実」
村瀬と俺は別に小声になるわけでもなくそう言った。
「そういうの私に聞こえても大丈夫です?いや、こちらは、平気です!コソコソ言われなれてるので逆にこちらが気を使ってしまっただけです。ところで。お付き合いしているというのは、森くん村瀬くんで私はカモフラージュにでもなれという事ですかね?」
「「えっ?!」」
とんでもない言葉に俺達は声を上げた。
「先程つらくない?と心配してくださいましたが、森くんには説明済ですが憧れに近いのでおふたりの関係を知ってもノーダメージ。それどころか当て馬になりたさもあったくらいなので推しカプが間近で見れる友達位置はむしろ最高です結果オーライ」
少々早口な真嶋の言葉に俺らは呆気に取られた
「当て馬...推しカプ...?」
俺が知らない単語を次々に真嶋は出した
「と、とりあえず真嶋さんは男同士でもなんとも思わないわけ?」
村瀬が、小声で問いかけた。うん、まぁそこだよな。そこからだ、たしかに。
「おっと、すみません。リアルBLに興奮してしまいました。ナイーブな内容ですよね、失礼しました。」
真嶋も、小声になった
「腐女子というものでして、少女漫画なのですが男同士の恋愛漫画を好んで愛読しており偏見どころか大好きなジャンルです。」
そんなジャンルが...余計に心強い。村瀬もそう思ったのか俺と目が合った。
「真嶋...敬語やめて良いからな...俺が付き合っているのは村瀬じゃないよ」
「尊いものをみるとつい敬語に..分かった。自然にしなきゃだもんね、なおす」
尊い...?
「なーんだ村瀬くんじゃないのか」
真嶋は心底残念という顔をして大きなおにぎりを1口頬張った
実は付き合ってるといっても、お試しで...という話の流れから、かくかくしかじかと、これまで説明をすることになった。
「もだキュンBL祭りじゃん!」
真嶋がまた、わからない?ことばをはっしている。会話は常に小声で進行中だ。
「森くんも、村瀬くんも恋する男児か。森くんに関しては右だったか...解釈違いだったけどありよりのあり全然OK」
ふむふむと頷いている。
「真嶋...知らない単語や使い回しがあったように思うが...」
俺が尋ねると
「うっ。顔面が強い!顔面の強さにはまだ慣れが必要なので細目で見ますねすみません。」
「おもしろい顔」
思わず笑ってしまう
「くぅっ、リアルおもしれぇ女いただいてしまった」
「森そんなこと言ってないよ?」
「ニュアンスが、いっしょ、」
「いや、女子に言ったらだめな単語でしょ」
村瀬とのやり取りにも、笑ってしまった
「俺らの友達増えただろ」
「めっちゃおもしろいの入ってきたな~」
俺が言うと村瀬も笑いながら言った。
真嶋は光栄です!と叫んだ
午後の授業への予鈴がなり
話はわかりました、得意分野なので明日は深堀して考えてみよう!と、今にもスキップしだしそうな表情で真嶋は自分の教室へと戻っていった。
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