200年級ニートが魔王討伐という名目で厄介払いされる話

盈月

文字の大きさ
13 / 165
第一章 陰謀編

陰謀Ⅴ 合流

しおりを挟む
 アタラクシアの関所から山を降りて数日、ルーグとアルエットはようやくイェーゴの村に着いた。イェーゴといえば薬草で作る饅頭が絶品だ。四天王――女王蜂ロサージュとの決着がついたら食べることにしようとそんな暢気なことを考えていたが、どうも様子がおかしい。村人誘拐事件とやらの影響だろうか。

「あんた、旅人かい?なんでまたこんな時に」

 村に入ろうとすると、村人に呼び止められた。

「こんな時?」
「ああ。噂でくらいは聞いてるんだろ?ここの人間が誘拐されてるんだよ。」
「ふむ……詳しく聞いてもよろしいか?」
「うーん、素性もしれない人間にペラペラ喋るわけにはいかんなぁ。最近もスパイ騒ぎが……」
「ああ、すまなかったね。私は王都から蜂の討伐に来た者だ。ルーグ」
「はい、こちらを」

 ルーグは村人に女王の手紙と二人の通行証を見せた。村人は慌てて土下座する。

「こりゃ……アルエット王女殿下でしたか。ご無礼をお許しください。」
「いや、よい。村長殿にとりなしてくれないか?」
「あぁ、それがですね、昨日……。」

 なんてことだ。思わぬ形で村人誘拐事件の裏取りが取れてしまった。まさかよりにもよって村長が攫われているとは……。
 しかしやはり違和感が残る。ロサージュといえばただのいち魔族だったスパイン・ホーネットを魔族の大勢力に引き上げた傑物。戦上手として知られ真っ向勝負で数多の武功を上げた女傑が、拉致なんぞを主導するとは……700歳になると聞くし、耄碌したか?

「村長がいないとなると、どうしたものか……」
「アルエット様、まずは正教の援軍に話を聞いてみるのはいかがでしょうか。」
「そうだね。聖剣の乙女についても聞きたいし、それでいこう。君、正教の部隊長にお目通りすることはできるかな?」
「かしこまりました。こちらへ。」

 村人に連れられて部隊長の元へ行きながら、詳しい事情を聞いた。一昨日の夜に修道士の一人が変死したこと、翌日騒ぎになりその混乱の最中村長が攫われたこと、そして……聖剣の乙女が容疑者になりスパイ行為で投獄、今は村人救出の作戦会議中であること。

「と、投獄!?」

 ルーグは流石に動揺を隠しきれないようだった。まあ、私も同じような気持ちだが。

「はい。殺された晩に修道士と会っていたこと、死因だとされている差し入れをその修道士に渡したこと、事情聴取で村長に罪を擦り付けるような証言をしたことが決め手になったみたいで。」

 確かにそれだと弁護のしようがない。だが

「うーん、聖剣がそんな人間を持ち主に選びますかね?」

 私もルーグと同じ疑問を抱いた。

「ですが、彼女以外に犯行が可能だった人物はいません。」

 確かに、その晩に会ったのが彼女しかいないなら彼女が犯人に間違いないのだろう。だが、やはりどうしても聖剣所持者というのが引っかかる。
 この村には、釈然としないことが多すぎる……。そんなことを考えていたら、正教の修道士が駐屯するテントに到着した。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

最強剣士が転生した世界は魔法しかない異世界でした! ~基礎魔法しか使えませんが魔法剣で成り上がります~

渡琉兎
ファンタジー
政権争いに巻き込まれた騎士団長で天才剣士のアルベルト・マリノワーナ。 彼はどこにも属していなかったが、敵に回ると厄介だという理由だけで毒を盛られて殺されてしまった。 剣の道を極める──志半ばで死んでしまったアルベルトを不憫に思った女神は、アルベルトの望む能力をそのままに転生する権利を与えた。 アルベルトが望んだ能力はもちろん、剣術の能力。 転生した先で剣の道を極めることを心に誓ったアルベルトだったが──転生先は魔法が発展した、魔法師だらけの異世界だった! 剣術が廃れた世界で、剣術で最強を目指すアルベルト──改め、アル・ノワールの成り上がり物語。 ※アルファポリス、カクヨム、小説家になろうにて同時掲載しています。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜

音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった! スキルスキル〜何かな何かな〜 ネットスーパー……? これチートでしょ!? 当たりだよね!? なになに…… 注文できるのは、食材と調味料だけ? 完成品は? カップ麺は? え、私料理できないんだけど。 ──詰みじゃん。 と思ったら、追放された料理人に拾われました。 素材しか買えない転移JK 追放された料理人 完成品ゼロ 便利アイテムなし あるのは、調味料。 焼くだけなのに泣く。 塩で革命。 ソースで敗北。 そしてなぜかペンギンもいる。 今日も異世界で、 調味料無双しちゃいます!

処理中です...