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第一章 陰謀編
陰謀Ⅴ 合流
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アタラクシアの関所から山を降りて数日、ルーグとアルエットはようやくイェーゴの村に着いた。イェーゴといえば薬草で作る饅頭が絶品だ。四天王――女王蜂ロサージュとの決着がついたら食べることにしようとそんな暢気なことを考えていたが、どうも様子がおかしい。村人誘拐事件とやらの影響だろうか。
「あんた、旅人かい?なんでまたこんな時に」
村に入ろうとすると、村人に呼び止められた。
「こんな時?」
「ああ。噂でくらいは聞いてるんだろ?ここの人間が誘拐されてるんだよ。」
「ふむ……詳しく聞いてもよろしいか?」
「うーん、素性もしれない人間にペラペラ喋るわけにはいかんなぁ。最近もスパイ騒ぎが……」
「ああ、すまなかったね。私は王都から蜂の討伐に来た者だ。ルーグ」
「はい、こちらを」
ルーグは村人に女王の手紙と二人の通行証を見せた。村人は慌てて土下座する。
「こりゃ……アルエット王女殿下でしたか。ご無礼をお許しください。」
「いや、よい。村長殿にとりなしてくれないか?」
「あぁ、それがですね、昨日……。」
なんてことだ。思わぬ形で村人誘拐事件の裏取りが取れてしまった。まさかよりにもよって村長が攫われているとは……。
しかしやはり違和感が残る。ロサージュといえばただのいち魔族だったスパイン・ホーネットを魔族の大勢力に引き上げた傑物。戦上手として知られ真っ向勝負で数多の武功を上げた女傑が、拉致なんぞを主導するとは……700歳になると聞くし、耄碌したか?
「村長がいないとなると、どうしたものか……」
「アルエット様、まずは正教の援軍に話を聞いてみるのはいかがでしょうか。」
「そうだね。聖剣の乙女についても聞きたいし、それでいこう。君、正教の部隊長にお目通りすることはできるかな?」
「かしこまりました。こちらへ。」
村人に連れられて部隊長の元へ行きながら、詳しい事情を聞いた。一昨日の夜に修道士の一人が変死したこと、翌日騒ぎになりその混乱の最中村長が攫われたこと、そして……聖剣の乙女が容疑者になりスパイ行為で投獄、今は村人救出の作戦会議中であること。
「と、投獄!?」
ルーグは流石に動揺を隠しきれないようだった。まあ、私も同じような気持ちだが。
「はい。殺された晩に修道士と会っていたこと、死因だとされている差し入れをその修道士に渡したこと、事情聴取で村長に罪を擦り付けるような証言をしたことが決め手になったみたいで。」
確かにそれだと弁護のしようがない。だが
「うーん、聖剣がそんな人間を持ち主に選びますかね?」
私もルーグと同じ疑問を抱いた。
「ですが、彼女以外に犯行が可能だった人物はいません。」
確かに、その晩に会ったのが彼女しかいないなら彼女が犯人に間違いないのだろう。だが、やはりどうしても聖剣所持者というのが引っかかる。
この村には、釈然としないことが多すぎる……。そんなことを考えていたら、正教の修道士が駐屯するテントに到着した。
「あんた、旅人かい?なんでまたこんな時に」
村に入ろうとすると、村人に呼び止められた。
「こんな時?」
「ああ。噂でくらいは聞いてるんだろ?ここの人間が誘拐されてるんだよ。」
「ふむ……詳しく聞いてもよろしいか?」
「うーん、素性もしれない人間にペラペラ喋るわけにはいかんなぁ。最近もスパイ騒ぎが……」
「ああ、すまなかったね。私は王都から蜂の討伐に来た者だ。ルーグ」
「はい、こちらを」
ルーグは村人に女王の手紙と二人の通行証を見せた。村人は慌てて土下座する。
「こりゃ……アルエット王女殿下でしたか。ご無礼をお許しください。」
「いや、よい。村長殿にとりなしてくれないか?」
「あぁ、それがですね、昨日……。」
なんてことだ。思わぬ形で村人誘拐事件の裏取りが取れてしまった。まさかよりにもよって村長が攫われているとは……。
しかしやはり違和感が残る。ロサージュといえばただのいち魔族だったスパイン・ホーネットを魔族の大勢力に引き上げた傑物。戦上手として知られ真っ向勝負で数多の武功を上げた女傑が、拉致なんぞを主導するとは……700歳になると聞くし、耄碌したか?
「村長がいないとなると、どうしたものか……」
「アルエット様、まずは正教の援軍に話を聞いてみるのはいかがでしょうか。」
「そうだね。聖剣の乙女についても聞きたいし、それでいこう。君、正教の部隊長にお目通りすることはできるかな?」
「かしこまりました。こちらへ。」
村人に連れられて部隊長の元へ行きながら、詳しい事情を聞いた。一昨日の夜に修道士の一人が変死したこと、翌日騒ぎになりその混乱の最中村長が攫われたこと、そして……聖剣の乙女が容疑者になりスパイ行為で投獄、今は村人救出の作戦会議中であること。
「と、投獄!?」
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「はい。殺された晩に修道士と会っていたこと、死因だとされている差し入れをその修道士に渡したこと、事情聴取で村長に罪を擦り付けるような証言をしたことが決め手になったみたいで。」
確かにそれだと弁護のしようがない。だが
「うーん、聖剣がそんな人間を持ち主に選びますかね?」
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「ですが、彼女以外に犯行が可能だった人物はいません。」
確かに、その晩に会ったのが彼女しかいないなら彼女が犯人に間違いないのだろう。だが、やはりどうしても聖剣所持者というのが引っかかる。
この村には、釈然としないことが多すぎる……。そんなことを考えていたら、正教の修道士が駐屯するテントに到着した。
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