200年級ニートが魔王討伐という名目で厄介払いされる話

盈月

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第一章 陰謀編

陰謀Ⅳ 疑心

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 慌ただしい朝だった。櫓にはアレックスだったものの残骸が残されていた。朝の見張り当番だった修道士が第一発見者で、直ちに修道士全員が集められた。そのあまりに無惨な姿に耐えられず嘔吐する者、気を失うものが続出し、彼の死に祈りを捧げたのはセリシアただ一人であった。とりわけ大きなショックを受けたであろうアムリスは、すぐに自分のテントに籠ってしまった。

「アムリス、入るぞ。」

 セリシアがアムリスのテントに入る。アムリスは放心状態で、テントの事務机の前に座っていた。

「今、動けるか?」
「……」

 事件が発覚してから5時間ほどしか経っていないが、彼女の淡い青色の瞳は輝きを失い、表情もやつれきってしまっている。

「動けるなら、私のテントまで着いて来て欲しいんだが。」

 アムリスは返事もせず、よろよろと立ち上がってふらつきながらセリシアの元へ寄る。
 二人はアムリスのテントを出てセリシアのテントへ向かう。その途中ですれ違った村人のほとんどが、アムリスを見ながらなにかヒソヒソと話をしていた。
 セリシアのテントに入ると、生き残っている修道士が全員集まっていた。セリシアは自分の椅子に座り

「君は、昨日の夜にアレックスに会っていたよな?」

 とアムリスに問い質す。

「え……?」

 信頼していた隊長からかけられた予想外の言葉に殴られ、アムリスは正気を取り戻した。

「昨日君は我々の作戦会議に書記として参加し、夜遅くまで議事録をまとめていた。そしてそれを私の元へ持ってきている。これは私自身が証人として断言する。」

 アムリスは何がなんだか分からぬまま、セリシアは喋り続ける。

「そして、そのときに彼女は議事録の他に風呂敷と籠を持っていた。それらはどうするつもりだと君に尋ねたところ、君はアレックスへ差し入れすると答えた。違うか?」
「それは……そうですけど」
「つまり君は、昨晩彼に会ったのだな?」
「……はい、会いました。でも私は彼に差し入れを渡して少し世間話をして帰りました。断じて殺してなどいません!!」
「その『差し入れ』だ。彼の死因は毒死。争った形跡もないことから、信頼できる身内が毒を盛った筋が最有力だ。お前はその差し入れを食べたのか?」
「食べて……いません。でも!差し入れは私が作ったんじゃなくて、村長さんに預かった物なんです!昨日の夜そう言ったじゃないですか!」

 セリシアはやれやれとばかりに溜め息をつく。周りの修道士達がざわつき始めた。

(えっ、私なにかおかしいこと言った……?)
「確かに、昨晩そのように聞いた。だから君よりも先に村長に来てもらうことにしたのだよ。」
「それじゃ、村長さんが……」
「来なかったよ。それどころか、朝から姿を見たものがいない。」
「え……?」

 アムリスは膝から崩れ落ちる。セリシアは構うことなく続ける。

「アレックスと村長を手にかけ、その流れで村長に罪を擦り付けるとは、まさに鬼畜の所業だな。」
「違う……私じゃない……私じゃないの!信じてよ!!!」

 アムリスは彼女を冷ややかな目で見つめる修道士達に助けを求めるが、誰も動こうとはしなかった。そのとき、1人の村人がテントに飛び込んできた。

「大変だ!!村長が蜂の奴らに攫われた!!!」
「なんだと!?」

 全員慌ててテントを飛び出し、村の入り口に集まったが、手遅れだった。塔の前で蜂に抱えられ、手足を力なくぶらんぶらんと揺らす村長は、もはや生きているとは誰も思わなかった。

 怒りを押し殺すようにセリシアは呟く。

「やってくれたな。まさか蜂側のスパイだったとは。」

 はっとしたアムリスは咄嗟に防衛行動に出たが

「取り押さえろ!聖剣も没収だ。」

 セリシアの命令の方が早かった。男手の修道士達が揃ってアムリスを押さえ込み、聖剣に手を掛ける。が、

「熱っ!なんだこれ!?」

 刀身も柄も燃えるような熱さで、誰も持つことができずにいた。使い手を選ぶ意志を持つ聖剣の最後の抵抗だったが、

「ええい!私がやる!!」

 とセリシア自ら聖剣に手をかけ

「こんな……こんな物があるから、田舎娘が勘違いして調子に乗るんだよ!!!」

 と無理やりに引きちぎり投げ捨てた。持ち主の手を離れた聖剣はその輝きを失った。

「牢を作れ。こいつを放り込んでおけ。」

 セリシアは聖剣を拾い上げ、テントに戻って行った。

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