18 / 165
第一章 陰謀編
陰謀Ⅹ 核心
しおりを挟む
「嘘……」
カトレアは無造作に槍を引き抜いた。セリシアが力なく崩れる。
「セリシア隊長!!」
「待つんだ!アムリスさん!!」
ルーグの制止も聞かず、アムリスはセリシアの骸に駆け寄り、聖魔法を使おうとする。しかし、あくまで聖魔法は攻撃を防いだり傷を癒すための魔法であり、死人を呼び戻す魔法は存在しない。アムリスは無力感と残酷な現実に打ちひしがれ、骸に縋り涙する。その姿を、カトレアはただじっと、ひたすら見下ろし続けていた。
ルーグとアルエットが追いつき、無防備なアムリスの背中を守るように、カトレアと対峙する。カトレアも息があがっており、蓄積されているダメージは少なくない。このまま押し切ってしまおうと、二人は剣を握る手に力を込める。
だが、カトレアは武器を捨て、
「お前が、王女アルエットだな?」
アルエットに尋ねた。
「そうだ、と言ったら?」
「私は『女王蜂』ロサージュ様の尖兵カトレア。魔王様から王女アルエットの抹殺命令を受けた者だ。」
再び、アルエットとルーグに緊張が走る。沈黙が場を支配するが、間を待たずカトレアが口を開く。
「取り引きをしないか?」
「何?」
「お前たちの目的は女王様の命だろう?今から女王様の御前まで私が案内してやる。」
本当なら、これほど魅力的な提案はない。本当ならば。
「アルエット様、敵の言うことを真に受けてはいけません。おおかた、自分たちのテリトリーに持ち込んで数で押し潰すつもりでしょう。」
「ああ、私も同意見だ。」
「……女王様のもとへ着くまでは、手出しをしないことを誓う。もとより、そのような方法など取るつもりはない。」
「だとしても、蜂にとってのメリットが感じられない。危険人物の侵入を許してまで得られるものが何なのか分からないわ。」
「メリットならある。残った兵士と満身創痍の私だけでお前たち三人を相手取るのは、はっきり言って無理だ。そして、無理がもう一つ。お前たちじゃ女王様を殺すことは無理だ。」
カトレアからの威圧感が増大する。女王を殺せないという彼女の確信に抗えない説得力を感じてしまう。
「無理じゃない、とでも言いたげだな。まあいい。それに私にもお前たちと女王に聞かねばならんことがある。」
三人は観念し、武器をしまう。
「……あんたの口車に乗ってやるわ。アムリス、念の為に聖魔法の防御壁を展開しておいて。」
スパイン・ホーネットのコロニー内部。殺風景な外観と裏腹に内部は想像以上に明るく、また大部分が湿った土でできていることもあり、気温はやや高く感じる。大量の働きバチが所狭しと動き回っているのも相まって、女王蜂の居場所までひたすら登っていくだけでもそれなりに体力を消耗する。
「それで、聞きたいことって?」
「……我々が村人を攫っている、ということについてだ。」
「おいおい、攫った側の言うセリフじゃないだろ。」
「すまない。私も10日ほど留守にしていて、本当に何が何だか分からないんだ。魔王城から帰って来てみれば人間から襲撃されていて……。だから、女王様も問い質せねばならんのだ。」
「すみません、それなら私がお答えします。」
しばらく黙っていたアムリスが口を開いた。
「ちょうど1週間ほど前、イェーゴ村の村人が二人、突如として行方不明となりました。村長さんがアタラクシアへ要請して私たちが派遣され、捜索隊を組んだりして探したんですが結局見つからず、最終的に魔族による誘拐だと結論付けられたんです。」
「はあ……?」
なんとも杜撰な話だ。魔族の誘拐だという根拠が何も無くないか?それに……
「すみません、それでなぜ我々が犯人扱いされているのか全く分からないんですが。」
その通り。確かにここら一帯で大がかりなことができる魔族の勢力は限られてはいるが、蜂の仕業である証拠が何もない。
「そういえば、村長さんがそう言ってたからみんな信じてましたたけど、確かに変ですね。」
「おい、それって……」
「村長が真っ黒みたいね。恐らく、修道士が殺された話も。」
一行に緊張が走る。
「だが、動機が謎だ。それに、最後に村長が殺されているのも不可解というか……、別に黒幕がいると考えた方がいいかもしれない。」
そうこう話しているうちに、一際大きな扉の前に到着した。
「着きました。この先に女王様がいます。」
「アムリス、準備はできてる?」
「はい。いつでも。」
「開けますね。」
カトレアが扉を開けた瞬間。悲鳴が響いた。
「どうして……あなたが!?」
玉座の前に佇んでいたのは、イェーゴ村の村長。彼の足元には、ロサージュの首が転がっていた。
カトレアは無造作に槍を引き抜いた。セリシアが力なく崩れる。
「セリシア隊長!!」
「待つんだ!アムリスさん!!」
ルーグの制止も聞かず、アムリスはセリシアの骸に駆け寄り、聖魔法を使おうとする。しかし、あくまで聖魔法は攻撃を防いだり傷を癒すための魔法であり、死人を呼び戻す魔法は存在しない。アムリスは無力感と残酷な現実に打ちひしがれ、骸に縋り涙する。その姿を、カトレアはただじっと、ひたすら見下ろし続けていた。
ルーグとアルエットが追いつき、無防備なアムリスの背中を守るように、カトレアと対峙する。カトレアも息があがっており、蓄積されているダメージは少なくない。このまま押し切ってしまおうと、二人は剣を握る手に力を込める。
だが、カトレアは武器を捨て、
「お前が、王女アルエットだな?」
アルエットに尋ねた。
「そうだ、と言ったら?」
「私は『女王蜂』ロサージュ様の尖兵カトレア。魔王様から王女アルエットの抹殺命令を受けた者だ。」
再び、アルエットとルーグに緊張が走る。沈黙が場を支配するが、間を待たずカトレアが口を開く。
「取り引きをしないか?」
「何?」
「お前たちの目的は女王様の命だろう?今から女王様の御前まで私が案内してやる。」
本当なら、これほど魅力的な提案はない。本当ならば。
「アルエット様、敵の言うことを真に受けてはいけません。おおかた、自分たちのテリトリーに持ち込んで数で押し潰すつもりでしょう。」
「ああ、私も同意見だ。」
「……女王様のもとへ着くまでは、手出しをしないことを誓う。もとより、そのような方法など取るつもりはない。」
「だとしても、蜂にとってのメリットが感じられない。危険人物の侵入を許してまで得られるものが何なのか分からないわ。」
「メリットならある。残った兵士と満身創痍の私だけでお前たち三人を相手取るのは、はっきり言って無理だ。そして、無理がもう一つ。お前たちじゃ女王様を殺すことは無理だ。」
カトレアからの威圧感が増大する。女王を殺せないという彼女の確信に抗えない説得力を感じてしまう。
「無理じゃない、とでも言いたげだな。まあいい。それに私にもお前たちと女王に聞かねばならんことがある。」
三人は観念し、武器をしまう。
「……あんたの口車に乗ってやるわ。アムリス、念の為に聖魔法の防御壁を展開しておいて。」
スパイン・ホーネットのコロニー内部。殺風景な外観と裏腹に内部は想像以上に明るく、また大部分が湿った土でできていることもあり、気温はやや高く感じる。大量の働きバチが所狭しと動き回っているのも相まって、女王蜂の居場所までひたすら登っていくだけでもそれなりに体力を消耗する。
「それで、聞きたいことって?」
「……我々が村人を攫っている、ということについてだ。」
「おいおい、攫った側の言うセリフじゃないだろ。」
「すまない。私も10日ほど留守にしていて、本当に何が何だか分からないんだ。魔王城から帰って来てみれば人間から襲撃されていて……。だから、女王様も問い質せねばならんのだ。」
「すみません、それなら私がお答えします。」
しばらく黙っていたアムリスが口を開いた。
「ちょうど1週間ほど前、イェーゴ村の村人が二人、突如として行方不明となりました。村長さんがアタラクシアへ要請して私たちが派遣され、捜索隊を組んだりして探したんですが結局見つからず、最終的に魔族による誘拐だと結論付けられたんです。」
「はあ……?」
なんとも杜撰な話だ。魔族の誘拐だという根拠が何も無くないか?それに……
「すみません、それでなぜ我々が犯人扱いされているのか全く分からないんですが。」
その通り。確かにここら一帯で大がかりなことができる魔族の勢力は限られてはいるが、蜂の仕業である証拠が何もない。
「そういえば、村長さんがそう言ってたからみんな信じてましたたけど、確かに変ですね。」
「おい、それって……」
「村長が真っ黒みたいね。恐らく、修道士が殺された話も。」
一行に緊張が走る。
「だが、動機が謎だ。それに、最後に村長が殺されているのも不可解というか……、別に黒幕がいると考えた方がいいかもしれない。」
そうこう話しているうちに、一際大きな扉の前に到着した。
「着きました。この先に女王様がいます。」
「アムリス、準備はできてる?」
「はい。いつでも。」
「開けますね。」
カトレアが扉を開けた瞬間。悲鳴が響いた。
「どうして……あなたが!?」
玉座の前に佇んでいたのは、イェーゴ村の村長。彼の足元には、ロサージュの首が転がっていた。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
最強剣士が転生した世界は魔法しかない異世界でした! ~基礎魔法しか使えませんが魔法剣で成り上がります~
渡琉兎
ファンタジー
政権争いに巻き込まれた騎士団長で天才剣士のアルベルト・マリノワーナ。
彼はどこにも属していなかったが、敵に回ると厄介だという理由だけで毒を盛られて殺されてしまった。
剣の道を極める──志半ばで死んでしまったアルベルトを不憫に思った女神は、アルベルトの望む能力をそのままに転生する権利を与えた。
アルベルトが望んだ能力はもちろん、剣術の能力。
転生した先で剣の道を極めることを心に誓ったアルベルトだったが──転生先は魔法が発展した、魔法師だらけの異世界だった!
剣術が廃れた世界で、剣術で最強を目指すアルベルト──改め、アル・ノワールの成り上がり物語。
※アルファポリス、カクヨム、小説家になろうにて同時掲載しています。
転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜
みおな
ファンタジー
私の名前は、瀬尾あかり。
37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。
そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。
今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。
それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。
そして、目覚めた時ー
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜
音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった!
スキルスキル〜何かな何かな〜
ネットスーパー……?
これチートでしょ!?
当たりだよね!?
なになに……
注文できるのは、食材と調味料だけ?
完成品は?
カップ麺は?
え、私料理できないんだけど。
──詰みじゃん。
と思ったら、追放された料理人に拾われました。
素材しか買えない転移JK
追放された料理人
完成品ゼロ
便利アイテムなし
あるのは、調味料。
焼くだけなのに泣く。
塩で革命。
ソースで敗北。
そしてなぜかペンギンもいる。
今日も異世界で、
調味料無双しちゃいます!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる